独り言 4

 この間、突然ある女性から電話がありました。もう70歳位の女性からです。研修2年目の時の最初の患者さんでした。大学で現在の私の居場所を聞いてわざわざ電話してきたのでした。子宮ガンの手術をした方でしたが、私が彼女の命を救ったと思ってくださっているのでした。もちろん治療方針を決めたのはその当時の病棟医長でしたし、手術の執刀は教授でした。私がしたのは手術の時教授が術野を見やすくするために一生懸命鈎を引いていたのと毎日ベッドサイドまで顔を見に行き、毎日点滴に行ったことだけでした。

 癌であることをはっきりと告知したかどうかは覚えていないのですが、ご自分で自覚されていました。大きな手術でしたし、その後の放射線治療もあり、長期の入院でした。おそらく、ご自分の余命に関しても、強い不安も有ったかと思います。精神的に随分不安定となったこともありました。それに関して、若かった当時の私が母親ほどの年齢の方にどれほどの支えになれたのか分かりません。20年もの間私を覚えていてくださり、わざわざ探し出して訪ねてきてくださったことは、私にとっても驚きでした。当時も今も自分の無力であることをたびたび思い知らされているこの私が少しでも人の役に立ち、何らかの印象を残していたことは、うれしいことですが、少々気恥ずかしいことでも有りました。ちょっと忙しく、疲れた日も、この日のことを思い出すともう少し頑張ろうと言う気持ちになります。

戻る