出来事その1

 四月のある日、当直あけで、昼過ぎに家に帰ろうと、車のところまでやってきた私は、妙なものに気づきました。車の周りに藁くずが沢山落ちていたのです。注意深く見ると、右後輪の上に藁が沢山くっついていました。当院の周りは田圃ですので、『昨日雨だったから、どこかで藁くずをくっつけてきたしまったのかな?』と思って、手で藁を取り除き、家路についたのでした。翌日はそんなことも忘れていたのですが、外来の始まる前に、看護婦が言いました。『先生、車に藁がくっついていませんでした?先生の車にねえ、鳥が巣を作っていませんでした?みんなで、鳥も子供を産むときには産婦人科の先生の車に巣を作るんですねえ、て話していたんですよ。』その後数日、藁をとっても翌日にはまた、なぜか私の車にだけ藁がついているということが続き、仕方がないので、田圃と反対の方に車をおいてみました。すると次の日には、藁くずはついていませんでした。ところが少し離れたところに、藁くずが落ちていました。あれ?と思って見ると、別の車のタイヤの上に巣が作ってありました。後で聞いてみると、その車は当院の助産師のものでした。やっぱり、鳥にもお産の時に誰に手伝ってもらったらよいか分かるのでしょうか。

 それで、思い出したのですが、以前、京都専売病院に赴任して2〜3週間後、官舎に引っ越してしばらくしたある日、窓の下で、子猫がミャー、ミャーとあまりにやかましく鳴いているので、窓を開けて外をのぞいてみると、そこでなんと、猫が子供を5匹産んでいたのでした。この時も、なんとまあ、他の部屋も並んでいるのに、産婦人科の医者の家で子供を産むものだ、と病院で話題になったのでした。

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