―星空からの贈り物―
「…きれぇ……」
ふにゃ〜っと寝室の窓辺に凭れ掛かり、空を見上げる。そこには幾千の星達が輝きながら長い長い川を形作っていた。
「なんだか手が届いちゃいそうだね〜!」
自分の後ろにいるブラッドを振り返り、空に両手を伸ばして見せる。キラキラと輝く星は本当に手の中に落ちてきそうで、ベルは心が弾んでドキドキが止まらなかった。
「…山の上だからな…」
それをフッと目元を微笑みに変えながら見下ろす。そして、ベルの腰を腕の中に包むように軽く引き寄せた。…それを目に留めたベルはなんだか嬉しくなってにっこりと笑ってしまった。
「…僕の家からだとね、周りの家とか灯りでこんな風には見えないんだよ」
ブラッドに体を預けながら再び空を見上げ、目を輝かせる。…興奮でほんのり頬をピンク色にさせながら。…そんな嬉しそうなベルを見ていてブラッドはふと、思った。
「…七夕は願い事を書くというが…用意をしてなかったな…」
…自分は別に良いが…ベルがそんなに七夕が好きなら、きっともっと、ちゃんと祝いをしたかったのではないか?と思い、ブラッドは口にした。するとベルは
「あのねっ、心の中で一生懸命、お願いしたから大丈夫なんだよ〜!」
えへへっ。と照れたように、でも嬉しくて堪らないようにベルは微笑んだ。
「…心の中で?」
…紙に書かなくても叶えてもらえるだなんていう話しは聞いたことはないが、ベルが幸せそうに微笑むのならそれで良いだろうとブラッドは勝手ながらも思った。…そんな事を考えていると、途端にベルが悲しげな顔をして
「彦星様と織姫様って一年に一度しか会えないなんて可哀想だよね…」
としょんぼりと耳を弱々しく垂れさえながら言う。…ブラッドは何も言わずに何度か髪を撫でてやる。するとベルは、ブラッドの胸に擦り寄り
「…僕…ブラッドと一度きりしか会えないなんて絶対、やだよぉ…」
本当に泣きそうな顔をするベルをブラッドは、今度はきつく抱きしめてやる。もちろん、自分も同じ気持ちである事が伝わるように。…そうして、ゆっくりと背中を撫でながら
「…何を願ったんだ?」
と柔らかく…お風呂から上がったばかりの良い香りのする耳を口に付けながら疑問に思ったことを聞いてみた。
「……ぇっ?!…えっと…」
ベルは長い耳を震わせ、興奮で高潮させていた頬を一層赤くして、言いにくそうに身を捩った。けれど、ブラッドが逃がすはずもなく
「教えてくれないのか…?」
と、簡単にベッドに横倒させられる。その顔は欲を隠さない男の顔をしていた。…その瞳を見たベルは体を一度、大きく震わせて
「…だって…恥ずかしいだもん…」
と甘い…濡れた声を部屋に零す。ブラッドは、口元を緩く微笑みの形にして、ベルの瞳に口付けを落とすと着ていた水玉のパジャマを脱がせに掛かる。…ベルは、なんとかそれを防ごうと、ボタンを外そうとするブラッドの手を掴まえようとした。…だって…部屋の中まで差し込む光が…なんだか自分達をちゃんと見ていると言われているようで恥ずかしかったから。
「…ゃっ…彦星様と織姫様に見られちゃうよぉ…」
抵抗も空しく、下着をいとも簡単に脱がされてしまったベルは、全身を真っ赤にしながら泣き声を上げた。すると、ブラッドは少しだけ可笑しそうに笑って
「……大丈夫だろう?恋人同士が幸せになるんだ。二人は喜んでくれるさ…」
と低い…男らしい声で囁いた。
「……だ、ってぇ…」
ゾクリと背中を掛ける、言葉に出来ない感覚。けれど、羞恥が治まることはなくて尚も言葉にしようとすると、ベルの唇に人差し指を軽く当てて…
「…自分達が辛い目にあっているのだから…誰よりも恋人達の幸せを願ってくれるはずだろう?」
と真面目な視線でベルに言った。そして、柔らかい微笑を浮かべると
「…ベル…」
大好きな声で紡がれる自分の名前。そして…ブラッドから紡がれたもっとも嬉しい言葉が次の瞬間、耳に触れてきたのだ。
「……愛してる…。ずっと、一緒にいよう…」