「ディーク……」

「はい?何ですか?」

にっこりと。ディークは満足げな頷きとともに聞き返した。だけど…だけど!僕は絶対にこの状態が正しいなんで思えないっ!

「…何って、これっ!」

「はい?」

「少しは変とか思わないっ?!」

「……全く。」

ついでに「良く似合いますよ」なんて見た人が赤面しちゃうような囁きと微笑み付き。

「……ディークぅ……」

恨めし気にディークを見る事くらい、許して欲しい。だって、久しぶりのお出かけで(しかも、人間界!!)着ていくようにと渡された物は、真っ赤な布に色とりどりの花が描いてある人間界でいう浴衣らしく、最初に見た時は綺麗だし、変わった形の服なんだな〜っと思ったんだ。で、ディークが自分用に用意したのは渋い黒と灰色の縞の浴衣。…でも、なんだか変だって思ったのは服を脱いでディークに着方を教えてもらっているその時。

「下着は着けないようにして下さい」

と言われたから。ディークは平然と言ったけど聞き逃すわけにはいかなかった。けど…猛抗議も何のその。ディークはやっぱりいつものように僕を楽に押さえつけて途中そんな事はしなくて良いって思うような事までしてくれて浴衣を着させてくれた。

「……ディークってやっぱり意地悪だ……」

僕は、スカスカというかなんとなく心もとない気持ちで自分の足元を見ながら言うと

「………もう一度、着付けして欲しいですか?」

と意味深な流し目と低音で言われて、首をぶんぶんと精一杯振った。振るのを止めてクラクラした気分でいたら、仕方なさそうに軽く溜め息をついたディークに抱きしめられ、一度軽く額にキスをされると一緒に人間界へと飛んだのだった。

 

 

「……ディーク……ここ、どこ?」

ぽつんと。僕たち二人がいる場所は……真っ暗な森……だと僕は思う。ディークは

「山の中ですよ」

と言って

「ちょっと散歩なんてどうです?」

と楽しそうに言った。……自然は好きだし、散歩も別に良いんだけど…

「なんで夜なの?」

不思議に思って聞いたけどディークはにっこり笑って答えてくれなかった。ディークは僕の手を取って繋ぐとゆっくりと歩き出した。

虫の鳴き声が聞こえる中、慣れない靴でちょっと躓きそうにもなったけどその度にディークが支えてくれて転ぶ事はなかった。それから五分か十分、歩いた頃。

「ルイ、目を瞑って下さい」

と言ってきた。僕はなんでなのか分からなかったけれど言う通りにしてみた。

「少しだけ歩きます。私が良いというまで開けないで下さいね」

僕が頷くと、ディークはそれから僕の手を引いて本当に短い間歩いた。そして、足を止めると

「良いですよ」

と言った。僕は、ゆっくりと目を開けた。

 

「うわぁ……っ…」

「気に入りましたか?」

目の前にあったのは広い湖。大きな木々に囲まれ、キラキラと光る水面は月はもちろん、星の光も映しとっていた。

「……綺麗……天界みたいに綺麗な所が人間界にもあるんだね……」

「ええ。私も驚きました」

「…え?」

「ここに湖がある事はサーチしましたから、もちろん知っていましたが、実際に見に来たのは初めてです」

「そうなんだ?」

これはディークにしては結構珍しい。だって二人で行く場所とかは徹底的にサーチして時間がある時に必ずと言っていいほど実際に下見しに行くのだ。ディークの力を使えばほんの数秒だし、負担なんかじゃないんだろうけどディークによれば「あなたとのデートなんですから当然です」と言ってそんな必要はないと思うって言う僕の言葉に頷いてくれないのだ。

……ディークの本心は、ルイを連れて行くからには、やはり綺麗な喜んでもらえる所を選ぶのは当然だが、それ以上に気を遣うのはルイに目を付け、ちょっかいを掛けてくる者がいないかどうかである。自分には相手をねじ伏せられる力もちょっかいを掛けさせない自信もあるがそういう事ではない。ルイを他の者の目に触れさせていると考えるだけで腹立たしい。それもルイが自覚なしに魅力的な笑顔や仕種なんかを他の者達に見せてしまう危険性があるから尚更だった。

「この湖には昔から色々な伝説などが伝えられているらしいんですが……今人間達の中ではこの湖を運命の人と訪れた者は、その人と永遠に幸福になれる、というのが最も信じられているようですね」

「…………」

「……だから、あなたと二人で来たかったんです」

こっちを見下ろすディークに瞳はこれ以上ないっていうほど優しくて、蕩けそうな甘い雰囲気を纏っていた。

だから、僕は、毎度の事ながらディークに見惚れてしまって目が離せなかった。

「……ルイ…」

フッと影を落としながらディークが顔を近づけて啄ばむようなキスをした。反射的に目を閉じてしまった僕は、ディークの腕に引き寄せられもっと深い口付けを受ける事になった。柔らかく触れた唇と熱い舌に僕が思わず逃げようとして身を捩ればお仕置きのように舌をきつく吸われてしまって声が漏れ、さらにたっぷりと長い時間何度も角度を変えて口付けられた。……離れた時には足がガクガクしてディークに縋り付いてしまって…そんな僕を見てディークは腰に手を廻して支えながらクスリと意地悪気に微笑んだかと思うと

「……反応していますね?……困った人です…」

と自分の膝で僕の前をグッと押してきて……僕は声を上げてさらにディークの胸に凭れ掛かった。

「下着も着けずにこんな所をこんな風にしたら、誰が見ても分かってしまいますよ?」

「……っ……ぅ…」

誰が下着を着けさせてくれなかったんだよっ!と怒りたかったけれど、そんな余裕はなかった。だって、ディークが浴衣の前を割ってそこに直接、触れてきたから。

「―――やぁぁ……っ!」

ぐっと唇を噛み締めて、声を出さないように堪えようとした。シン…とした山の中、声を響かせるのは嫌だったから。けど、ディークはそんな僕の気に構わず首筋に唇を触れさせて強弱を付けながら愛撫を仕掛けてくる。ガクガクとキスをされた時点で自分で立つ事が無理になっていた僕は堪らなくなって

「……っ……デ…ク…」

どうにかして欲しいと目線で頼む。声は喉に絡んで上手く出なかったから。でも、ディークはやっぱり意地悪な微笑みを零して

「立っていられないのなら……あの木に掴まって下さい」

と言って、途中で中断される辛さに涙を零した僕を軽々と抱き上げて大きな木の前に降ろす。ディークは戸惑う僕の向きを木に向かせて自分はまた、首筋にキスを落とし、肌蹴てきた胸の辺りを片方の手の平で探ってくる。……もう片方の手は当然のように下肢を這う。後ろから抱きしめられるような格好で、薄い生地だけが阻む二人の体温は熱くて。……木に縋り付いてディークに前を触られている僕は腰が知らずに後ろに下がり、そして、当然、後ろに居るディークに当る。僕は上手く働かない思考の中で自分の格好がひどく恥ずかしい気がして下肢にあるディークの手を上から押さえようとした。

「どうせ押さえるのなら……ここ、押さえていて下さい」

「……な…に?」

ディークは僕の着ている浴衣の裾を一気に持ち上げて、僕の後ろが見えるようにして僕にそれを維持するようにと持たせた。もちろん僕は嫌がったけれど、聞いてくれずに「しなかったらもっと恥ずかしい事をさせますよ?」と言われてしまって。恥ずかしくて仕方なかった僕は生理的な涙以外に、止められない涙を零した。

「……後ろ、触りますよ…」

ディークの長い綺麗な指が僕ので濡れてヌルッと僕のそこへと触れてきた。最初は周りを探って…中へと入る。ゆっくりと撫でるようだったのが、奥へと攻めるみたいに変わるまでそう、時間は掛からなかった。

「あなたの中……凄いですね…」

熱い吐息交じりに耳元で囁かれて、僕の中が知らずに反応してしまい、ディークの指を締め付けてしまった。

「…こら…っ…。全く…誰が意地悪なんだか……」

ディークは、最後のほうを小さく呟くと指を引き抜いて自身を僕の中へと埋め込んだんだ。僕は、激しい波に攫われるようにディークに腰を持たれて揺さぶられ……最後には、気を失ってしまった。

 

 

 

どれくらい時間が経った後か、僕が目を覚ましたのはディークの腕の中。いくらか体が綺麗に整えられ、お姫様抱っこでディークに抱えられている。僕はちょっとだるくなった体を少し動かしてディークの顔がよく見れるようにした。

「……どこ行くの?」

「あの湖に入って体を洗うのも良かったんですがそれよりも良いものがありますから」

僕を抱きながらも軽々と歩くディークは、僕が目を覚ますのを待っていたようで魔法を唱え、移動した。

 

 

そして、着いた場所は……

僕たちは、満天の星中、暖かな湯気をふんだんに上げている大きなお風呂を目前にしていた。大きな石でぐるりと囲まれたお湯は、新しいお湯が流れ込むと岩の外へと流れ出ていた。

「天然の温泉です。魔界にも似たような物はありますが時にはこんなデートも良いでしょう?」

優しい目をして耳に唇をくっ付けるようにして言われて僕は真っ赤になって下をついつい向いてしまう。

ディークはそんな僕にクスっと笑うと

「本当は旅館という物に泊まっても良かったんですが、あなたは食事が出来ませんからお風呂を堪能出来る場所を選んだ方が良いかと思いまして」

……つまりは、結構な秘所というか山奥の山奥のそれも、ひっそりと営業している場所に連れてきたと。そういう事だ。

「それに人間界は、大衆浴場でも裸で湯に浸かる場所が多いようですし。いくら人間とはいえ、私以外の者にあなたの体を見せるわけにはいきませんからね」

とか言いつつ、例え水着着用可の場所でもルイを連れて行く気はないディークである。……答えは明白。ルイの色っぽい胸や白い太股を見せてたまるか!である。

「一緒に入りましょうね?」

ふふっと笑い、いつもの事ながら、ディークは楽しそうにルイを見下ろした。

それはそれは、綺麗な微笑みで……。

 

 

 

可哀相にルイは、温泉を堪能する暇もなく、ディークに再度堪能されてしまったのであった。


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