岡田の家まで歩いて十分。…自転車を思いきり扱げば、三、四分で着く。…岡田の家が見えて、目に飛び込んだのは玄関の前で周りを見回してるあいつ。
キキッと、きつくブレーキを利かせて岡田の家の駐車場前に停める。…短い距離なのに、無茶苦茶に扱いだから息も辛いし、心臓がバクバクいってる。そんな俺に岡田は、微かに眉を寄せて近寄ってきた。
「…どうした?」
低い声。なんだか、物凄く久しぶりに聞いたような気がする。
「…お前ん家で言う」
俺がそう言うと、岡田は一層、眉根を寄せ、俺から目線を外した。
「……」
「…何?今、家、無理なわけ?」
「…いや…。そうじゃない」
歯切れが悪い。それに外されたままの目線も酷く気に食わなかった。
「なら、なんだよっ!?」
「……」
いらつきながら問いだしても返事が無い。
「だからっ!何なんだってっ!」
すると、音の無い溜息をつくかのように岡田は言葉を吐き出した。
「……家には誰もいない」
「……はぁ?」
…その方が話し易い。周りを気にしながら話す内容なんだからそっちのが良いに決まってる。
「…なら、いいじゃないかよ?」
俺がそう言うと、今度は俺にも聞こえる深い…深い溜息を岡田はついた。
「お前…分からないのか?」
「何がだよ??」
岡田は呆れたように…そして少し怒っているかのように態度に示してきた。それでも俺が分からなくて眉を寄せていたら急に腕をきつく取られた。
「えっ?!ちょ…っ…」
握り締められた腕は思いのほか痛くて、非難の声を上げようとすると岡田はズンズンと家へと歩きだして俺の方なんて見向きもしない。
「―おいってばっ!痛いってっ!」
「……」
大きな玄関の戸を勢いよく開けて俺を乱暴に家に押し込むとピシャリと音を立てて閉めた。
「な、なんなんだよ…」
今だ不機嫌そうな表情を崩さない岡田になんだか不安がつのる。
「本当に分からないんだな?」
眇められた目が俺を捕らえる。低い声がいつもよりも低くて、体が跳ねた。
「…わ、分かんねぇって言ってるだろ…」
岡田の気迫に怖じ気てなんだか段々、俺が悪いことをしたかのような気分になる。
「……来い。教えてやる」
また、腕に力が加わって声を上げたけれど、完全な無視。…岡田は一直線に自分の部屋へと向かっている。
「教えるって一体何なんだよっ?!」
訳が分かんねぇ。こんな風に岡田が怒るのもこんな風に乱暴に扱われる理由も。
「―なぁってばっ!」
自分の部屋の扉なんて、まるで邪魔な物のように壊れそうな位の扱いで開かれる。そして…
「ちょっ…う、わぁぁっ…っ」
ドサッと投げ飛ばされるようにベッドの上に転がされる。そして、その上から岡田がすぐに被さってきた。俺がいきなりの衝撃と頭の混乱に理解をしようとすると両腕を頭上に上げられて岡田の左手に一纏めにされた。
「な、何するんだよっ!」
訳の分からない不安と恐怖。ただ、岡田の目が今まで一度も見たことがない位、怖かった。
「はっ、離せっ!」
「……言ったろ?教えてやるって…」
ふっ、と口元と目をほんの少し悲しげに歪ませた岡田は……キスをした…。乱暴なキスを。