ゆっくり、ゆっくりとのばして…そっと、腕を掴んだ。

「…?犬…か…い?」

「…。」

手をぐいっと引っ張った。
もちろん、つられて猿野が引っぱられる。
遠かった距離が一気につまる。

「…??」

「…なぁ。猿。」

「…何だよ。」

猿野は嫌がったりしなかった。
それよりも、犬飼の言葉を必死に聞いた。

「土や砂が動くには、どうしたらいい?」

「はぁ?…そりゃスコップか大型トラックに積んで…。」

「手を加えられないんだ。」

「?」

何の事を言っているのだ…?と猿野が不信な目を犬飼に向ける。
しかし、犬飼は、真っすぐ猿野を見てくるだけだった。

「…う”――。あ、風!!」

「風?」

「そ、風なら、土や砂を少しずつ吹き飛ばせるじゃねーか。飛ぶのもだめなのか?」

「……。   いや、いい。」

  自由に動く事ができずとも。
  風があれば
  あるいは…。
  貴方が風になってくれたとしたら、
  もしかしたら…。

「犬飼?」

掴まれたままの手が、さらに引っ張られる。

「…っ?」

ギュッと、強く、犬飼は猿野を抱き締めた。

 

 

もしかしたら…「それ」の答えは

「この」先にあるのだと。

 

そう、思った。

 

 

 

「…実に不本意だが…。」

「…。」

「どうやら、好きらしい。

「…はへ?何が?」

「……目前にいる猿以外、ここに何がある?」

「…!!?」

猿野は嫌だとは言わなかった。ただ、返事をしなかっただけ。
顔を赤く染めながら…。

「…猿が…赤くなった。オモシロイ。」

「赤くなんてなってません!!」

「なら、返事は?」

「…っ」

顔を隠すように、猿野は犬飼の胸に自ら顔を擦り付けた。

「猿?」

かけた言葉に、返ってきたのは―――.

「・・・―――ょ。」

 

 

 

くすりと笑って犬飼は、猿野の頭をわしゃわしゃとなでくりまわした。
ボサボサになる髪に耐えられず、猿野が不満そうに顔をあげる。

「もっ…やめろよ―――あ――ボサボサ…。」

文句を言う猿野に犬飼は、「そりゃすまない」と言ってごまかすようにチュッとキスをした。

「なっ―――っ 何すんだ!!この犬っコロ!」

「別に減るもんじゃなし…あ、また赤くなった。オモシロイ」

「減る。お前がすると減ってゆく。ってか、赤くなんてなってません!ゆえにオモシロクありません!」

「暑いのか?なら、窓を…。」

ほとんど猿野の言葉を無視して、犬飼は一番近くにあった窓をガラリと開けた。

 

 

とたんに…
風が吹く。

 

 

「…聞けよ!人の話し。スルーしてんじゃねぇ!!(ムカ)」

「…気持ちいいだろ?」

また、ヒュウと風が吹く。  風は
猿野に…
犬飼に…
撫でるように当たってから、また、去っていった。

「うん…。」

こくりと頷いた猿野に向い、犬飼はまた、微笑をこぼした。

                                         END


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