〔saide猿野〕

 

どうしても気になった。
話したいとか。
知りたいとか
仕草の一つ一つが気になるとか。
なんでだろう?と何度か考えた。
けれど、その答えは出ず…。
奴の言う通り、「バカ」なんか?俺は。

 

 

俺が守備練習に入ってからエラーが連発した。
どうも、俺はボールに逃げられているらしい。
10回目のエラーで、俺はグラウンドとお友達になりにいったのだった。
つまり、『埋めペナルティー』
なんとも嫌なバツだった。
俺は、肩のあたりまで土の中に埋められ、ボーッとしていた。
その時…

「地球は気持ちいいか?」

プ…と笑いながら、コゲ犬がやってきたんだ。
むかつく…。

「んなわけねーだろ!!」

プイッとそっぽをむいてやった。でも、視線だけ奴の方にむけると、犬飼はまっすぐ俺を見ていた。
なんだかすごくはずかしくなった…。
…?   なんで?

「…なんだよ。んな事言いにわざわざ来たのかよ。ワンコ」

「…とりあえず、おもしろいから来てみた。」

「激ぶっころ…。」

おもしろい、なんて。
言われたくはなかった。
別に、”だからどうなる”ってわけじゃねーけど。
ただ
ただ…

 

☆☆☆

 

 

そのあと、子津に頼んでグラウンドから出してもらった俺は、一つ大きくのびをした。
空はすんごく青くて、雲なんかポツリ ポツリとしかない。
でも、気持ちは重かった。
犬飼…なんで?

「子津、ありがとな。」

「いえ、いいっすよ。」

「…あのよ、犬飼は?」

あたりを見回しても、犬飼の姿は見あたらない。

「え?あれ、さっきまでここに…あ、マウンドっす。」

きょろきょろと見回した子津が、ピッチャーマウンドを指さした。

「猿野君、そろそろ行かないと。練習再開するみたいっすから。」

「ああ。そうだな。」

子津と2人でベンチに戻って、俺はグローブをつけた。
さっきまでは子津がピッチャーだったから、交たいで次は犬飼がマウンドに立っている。
見たくないな…なんか、俺 変。
いつだって見たくないって思ってた…はず。
本当に?
本心で?
いや…それは…
どうなんだろう。

 

ピッチャーマウンドを見たりはしなかった。
見たら、きたナンか言っちゃうから。
…言われるから。
犬飼の声を聞きたくないとこんなに思ったのは、初めてだった。

 

 

俺は今日の練習で、合計23回エラーした。

 

 

 

★☆★

 

 

 

みんなに迷惑かけたくない。
いつもそう思ってるけど…なかなか上手くはいかなくて。
エラーばっかりして、足をひっぱっている。
…申しわけない気持ちが一杯で…。
俺はまだベンチにすわっていて、みんなは帰り支度をするために部室へと入っていった。
最初に出てきたのは子津と辰羅川。
2人はベンチにまだ座っている俺を見つけて走り寄ってきた。

「猿野君、まだ着替えないんっすか?」

「ん〜。俺の美肌をみんなに見られたら大変だしぃ。みんな俺の肌を見たら目ン玉でちゃう〜ってカンジー。」

ぶりっこポーズでいうと辰羅川がメガネを上げながら俺を見て言ってきた。

「それは腐り落ちてるのでは…?とにかく猿野君、早く着替えないとすぐに暗くなりますよ?」

「…ん。わかってる。もうちっとしたら行くから。」

「…猿野君…?何かあったんすか?」

子津は心配そうに俺を見た。
俺は、めいっぱい笑顔で言った。

「別に?何もねーよ。」

「……そう…すか?」

なおも心配そうにする子津の肩を辰羅川がポンとたたく。

「子津君。そろそろ帰りましょう。」

「えっ。で、でも…。」

「…一つ、言わせてもらいます。猿野君。」

「何?」

辰羅川は俺の目をじっと見つめて言った。

「犬飼君の手元がくるうような事はなさらないように。」

「…は?」

辰羅川の言っている意味がわからなくて、俺はマヌケな声を出してしまった。

「では。さ、行きますよ子津君」

「ちょっ…どーいう意味なんだよ…なぁっ!?」

俺の問いには答えずに、心配そうな顔のままの子津を半ば強引につれて辰羅川は帰った。
なんなんだ…?一体…。
でも、わかったのは、辰羅川も心配してくれてるということ。
犬飼も
俺の事も…。
でも、俺は…辰羅川が何の心配をしているのかがわからない。
ただ、辰羅川の顔は、とても優しく、心配しているようだった。

 

 

 

 

「もう、いいだろ。」

子津と辰羅川が帰ってからだいぶたってから、俺はゆっくりと腰をあげた。
先輩達も帰ったの見たし、もう誰もいないハズ。
そういや…犬飼見なかったな。
でも、そんな時は多々あるし…。
たまたま、今日の帰りに会わなかっただけ。
そうだよな。
ゆっくりと、部室まで歩いて、俺は普段より重く感じるドアを開けた。
中は、まだ電気がついていた。
…あ。

「…遅かったな。何してたんだ?」

そこには、避けていた人物がいた。

「…犬…飼。」

 

 

なぜ?とか、どうして?とか、考えるのって苦手。
必然、偶然で考える事の方が多いんだ。
でも、今は…
なんで?って思ってる。
なんでお前がココにいるの?
なんで、俺をそんなにまっすぐ見るの?
こーゆーの
ホントに、苦手なんだよ。


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