―冬のはじまり春の温度―(ジャンプ連載。Mr.FURUSWINGの猿野と犬飼)

 

 

 

「寒っ……。」

制服の中に2枚も多く服を着ているのに、体感温度はちっとも上がらない。今朝、あわただしく朝食をとりながら、ふと見た天気予報がやっていた。

〜今日は、真冬の寒さになりそうです。天候は晴れですが、最高気温は12℃しかなく、最低気温は9℃にまで下がるもようです。風が強いので、体感温度は10℃〜8℃に感じられるでしょう〜

アナウンサーの女性が眉をよせながら淡々と話している。それがまた、寒々しかった。

 

 

 

家を出てからすぐに思ったことは天候。
晴れだとか言ってたくせに、空は雲で埋まってんじゃん。
光りのあたたかみを感じられないまま、俺は歩き出した。

 

 

しばらくすると、見なれた長身男が見えた。
マフラーと手ぶくろをしっかりとつけている。
犬飼じゃん。

 

「よぉ、犬っコロ。」

「…おそいぞ、猿」

…え?

「ひょっとして、待ってた…とか?」

「……別に。」

犬飼は、もられていた壁に手をつき、勢いをつけて背中をはなした。
それから急に歩き出す。

「あっ!まてよ」

言いながら、あわてて俺は犬飼のとなりまで走りよって、並んで歩いた。
つきあいはじめてから、もう1ヶ月ほどたつけど、登校時に待っててくれたのなんて初めてだ。

「なぁ、どういう風のふきまわしだよ。」

顔がニヤケるのを必死でおさえてきいてみた。

「…とりあえず、うるさい。」

プイッとそっぽをむいて言う犬飼。
照れてんのかな…?

「…寒くねーのか?」

そっぽをむきながら、急に言う犬飼。

「ん?そりゃ、寒いけど。」

「手…。」

手と言われても…。
自分の手の平を見る。
寒さで冷たくなって、血色がわるい。でも、それだけだ。

「手?別に……。」

「ほら、かしてやる。つけろ」

ぶっきらぼうに言われて、押しつけられたのは、犬飼の手ぶくろだった。

「え?でも、お前が寒く…。」

「俺はいい。もうあったかいから。」

ほら…と犬飼は手をつないできた。
その手はすごくあたたかくて、妙にはなしたくなくなった。

「…じゃあさ、俺、右手の方だけかりるな。」

「?」

「お前は左手につけて…。」

俺は言いながら犬飼に左手用の手ぶくろだけ返した。
俺の右手に犬飼がつけていた手ぶくろをはめる。
温かく感じるのは、布のおかげか、それとも…?

「…んで、こう。」

犬飼が左手に自分の手ぶくろをつけたのを確認してから、俺は素手の左手を差しだして、犬飼の右手とつないだ。
犬飼の手はものすごく温かくて、少し申しわけない気がしたけど…。

「冷てぇ…。」

一言そう言ってきた犬飼だが、つないだ手をはなそうとはしなかった。

「あっためてくれるだろ?」

冗談まじりに言ってみると、犬飼は自分の手を見て

「…バカ猿…。とりあえず歩け。俺は猿と共に遅刻する気はねぇ。」

と言った。

一応は、こいつの優しさなんだよな。
”手をつないでいてもいい”という承諾をもらえたから、俺は元気にまた歩き出した。

 

 

天候は曇り。気温は低い。
それでも体感温度は上昇中。


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