「………咲兄ちゃん………本気で言ってんの?」
「もちろんだよ」
にっこり。格好良く笑う大好きな咲兄ちゃん。……その咲兄ちゃんと俺がこ、恋人になってから友達や幼馴染でもしないような事も実はちょこちょこと回を重ねてはきてた。でも、それを始めるのは決まって咲兄ちゃんからで、しかも、俺が何とか防御して最後まではしてないんだ。
……だってさ、今までの咲兄ちゃんとの付き合い方をコロッと変えれるほど俺はもちろん、器用じゃない。でも、嫌な訳じゃないんだ。…本音を言えばそう言う事にめちゃ興味のある年だし、咲兄ちゃんの事は大好きだし。……ただ…ただ、そう……恥ずかしいんだよっ!咲兄ちゃんとキスするだけでもドキドキするって言うのに……
……どうしたらいいんだ。
そう、悩んでいる矢先の事。
機嫌の良い咲兄ちゃんは、そりゃあもう、信じられない事を言ってきた。
何を言ってきたかって?さっき言った様に俺が信じたくない言葉。
…そう……。それこそ、鼻歌でも歌いそうなほどの微笑みを浮かべながら
「ねぇ、擢君。ホテルに行かない?」
……って。
「せっかくのクリスマスなんだし、デートしようよ?」
咲兄ちゃんは俺の顎の下を猫を擽るように撫でながらそう続けた。俺はわざと邪険にその手を払う。そして、顔を赤くしながら俺は早口に捲くし立て様として声を上げる。
「……っ…なんでホテルなんだよ!デートって言うんならご飯とかでもっ……」
すると俺の言葉を遮るように長い指が俺の唇に当たった。…不意の出来事で俺は口を閉じた。
「ホテルでもちゃんとご飯は食べれるよ?それに夜景も綺麗でのんびり出来る。イルミネーションを見に行くのも良いけど人込みも凄いし時間も掛かる。……ホテルの方が良くない?…ね?」
「……………咲兄ちゃん」
「ん?」
口に出してしまったものの、俺は言うかどうかを散々迷いながらやっと覚悟を決め、顔をさらに真っ赤にして
「…………ホテルって…………ラブホ…じゃないの?」
「………」
「………」
「……っ…」
「……?…」
「ふっ……っく…」
咲兄ちゃんは驚いたように目を開いた後、声を上げて笑い出した。
「――なっ!咲兄ちゃんッ!」
人が勇気を出して口に出したのに笑うなんて酷いじゃんか!
俺が怒って殴るように両手を上げると、咲兄ちゃんはまだ笑いながらも俺をいとも簡単にそれを封じ込めてしまう。
「ごめん!ごめんね、擢君。笑うつもりはなかったんだけど急だったからびっくりして…」
クスって最後に俺の耳元に微かな振動を聞かせると軽いキスを目元や頬、唇に散らして
「僕は擢君と一緒ならどこでも良いけど……例えラブホテルに言っても擢君に無理強いしたりはしないから安心していいよ」
「……」
目と目を合わせて優しく微笑まれる。髪も緩やかに撫でられて甘やかされているって事が分かる。
「……擢君?」
「………」
きっと耳まで赤くなってる顔を咲兄ちゃんの広くて厚い胸板に押し付ける。けど、咲兄ちゃんにはやっぱり、ばれているみたいでまた耳元で微かに笑う音がした。
「…どうしたの?」
「……………ゃじゃ…い…」
「……えっ?」
「………嫌なんかじゃないっ!…」
「……擢、君」
「――はっ、恥ずかしいんだよ!しょうがないじゃんっ!」
これでもか!って位、咲兄ちゃんといっそのこと一つになってしまえと思うくらいギュー!ギュー!と腕に力を込める。すると、咲兄ちゃんは深いため息をして
「……擢君、そんな事言ったら………顔上げて」
「……いやだっ!」
「……擢君……ね?ほら…」
「……っ…」
首筋から下唇を微妙なタッチで触れられて、体がブルっと震えた。…それに誘われるように俺が紅い顔を上げると性急なほど強引で荒々しいキスが何度も何度も繰り返される。上手くついていけない所かどうやって答えたら良いのか分からない舌を信じられないくらい器用に咲兄ちゃんは、絡めたり吸ったりする。
「…咲…ちゃ…」
頭がぼうっとして息も出来なくて、力の抜けた手で気づいてもらおうと肩を押す。けど、それも無駄なようであっと言う間に絨毯の上に押し倒された。…涙で霞む目で見上げたら熱っぽい目をした咲兄ちゃんがいた。
「擢君、今すぐに抱きたい……良い?」
………俺は、それに目をきつく閉じて頷いたんだ。