―ancient times―

 

 

 

宮田先輩といろいろあって…また、付き合えるようになった日から二週間ちょっと経った。

その間、私は人が大勢集まる学食所であんなことをした事で…やっぱり心配な事がいっぱいあった。

……だって、宮田先輩は人気者なわけだし……答えてもらえるとは思っていなかったけど、でも、結果的にはいつかそうなることを望んでいたのは事実なのだけれど。……私は鵜川からあんな大勢の人の前で宮田先輩を盗ったのだから。

だから、鵜川はもちろん……クラスメイトや学校内で嫌がらせをされるのでは?と不安で…。

でも、実際の所……何もなかったように時間は過ぎていって…。

そう……まるで、宮田先輩と初めて付き合い出した時の続きのように。

でも、付き合いを始めた時には思わなかったことが、私の心に浮かんでくるようにもなったのだった……。

 

 

「……宮田先輩?」

「ん?」

暖かい日差しの中、いつものように二人で昼食を食べて一息ついた後、そのまま椅子に座ったまま日差しを受けながら向かい合う。…午後の予鈴が鳴るまで二人でポツリポツリと話すのが日課のようなものになっていた。……そこで私は、だんだんと気になっていた事を宮田先輩に聞いた。

「……宮田先輩…いつもお昼ご飯、市販の物ですよね?…朝夕ってどうしているんですか?」

「ん〜…夕飯はバイト先で賄いをもらって……朝はコーヒーとか?」

宮田先輩は、まるで何でもないような顔で言う。……新藤先輩から一人暮らしをしていてバイトをしていることやご両親からの仕送りを受け取っていないのは聞いていたけれど……。

「……そんなんじゃ体を壊してしまいますよ?……その…生活費とかいろいろ大変だとは思うんですけど…」

勝手なことを言っている気がして、語尾が小さくなってしまう。

……だって、お金に関わることをとやかく言う権利は私にはないし……その大変さを知らない私が言って機嫌を損ねてしまわないかと不安になったから…。

でも、宮田先輩は私の不安を一掃するような笑顔で

「大丈夫だって」

と一度区切り

ふわりと私の髪を撫でた後、頬をサラリと撫でてて

「ありがとな」

と少し小さな声で微笑みながら言ってくれた。私は優しい瞳を見返す事ができなくて、膝の上の自分の手を見て口を閉ざすことしか出来なかった。

 

……あれから、宮田先輩の負担になるのが嫌で、新藤先輩に教えてもらった写真部への対策として、宮田先輩と新藤先輩に手伝ってもらってどうにかこうにか写真を撮らないようにすることが出来たし…。宮田先輩自身の写真についても宮田先輩は手を打ったから大丈夫と言って笑っていたけれど…。

 

自分は今までいろいろな事を宮田先輩にしてもらっていたのに……私は何も彼にしてあげれることがないんだろうか?

 

………それが今の私が思うこと。それも切実に。

 

自分に大きな事が出来るとは思っていない。悔しいけれど、宮田先輩の方が年上で頭も良くて…器用に何でもやってのけてしまうから。

……もちろん、彼が゛完璧"じゃないことも分かっているけれど。

いや、教えてもらったと言ったほうが良いのかもしれない。…彼は私の前でもきっと、゛完璧"をやり遂げることが出来たのだろうから。

 

 

「……今日も一緒に帰れるか?」

…私が下を見ながら眉を寄せていると首を傾け、少しだけ困ったように笑う宮田先輩が見えた。……私はそれに頬を少しだけ赤くしながら「はい」と小さく答えた。

宮田先輩と付き合うようになって本当に時々、手を繋いだり……軽く唇を重ねたり…。

私にとってさっきのように髪を優しく撫でられるだけでも、恥ずかしくて目を合わせる事が出来ないのだけれど……宮田先輩はきっと、あの時、教室でしたように……きつく……きつく…

思い出しただけでも顔が火照ってダメになる。……あの時は別にそれが普通で…厭らしさなんてなかったのに。ぎゅっと…強い力。同じ男なのに逞しいと思うあの腕と大きな手の平できつく抱きしめられたと思い出すと……どうしても…。

 

 

「……菱谷?午後の授業、始まるぞ?」

私がまた、ハッと気がつけば、ふわりと瞳を暖かくして微笑んで、いつのまにか、宮田先輩は横に立って私の顔を覗き込んでいた。

……最近、こんな事の繰り返しで……なんというか恥ずかしいというか…情けないような…。

でも、このままじゃ、駄目だって考えて…。

 

……そう……何か。何か…少しでも彼に役立つことをして恩を返さなければ!

私は、心の中で固く決心したのだった。


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