「…お…お姉ちゃんのばかぁ…」
よよよ…と隅っこの壁にもたれ掛かっているのは、なんとも可愛らしい…女の子…?
というのも、うっすらピンクの布地にフリルが沢山飾られたワンピースをそれは見事に着こなしているのは、紫お耳のベルちゃんなのである。お姉ちゃんが用意したその洋服には可愛い花のコサージュやアクセサリー…ついでに金髪ウェーブのカツラまで。もちろん、それにもピンクの髪留め付きvvそして、靴は先の丸い赤のペッタンコ靴。…なんともファンシーな姿である…。
…だけど、そんなベルがそれはもう、ひたすらに泣き、心の中で叫んでも時間は無情にも進んでいくものである。そして、ある元気なお兄さんの声がベルのところまで響いてくると…
「夏祭り美女コンテストも佳境に入ってきました!では、エントリー6番っ!!今日は体調が悪くて出れなくなった友達のためにわざわざ来てくれた異国の美女!!ベルアさんですっ!それではどうぞ〜〜!!」
ベルは、いやだ〜〜っ!!と心の中で叫びながらも掛かりの人に背中を押されてあっという間にステージへ。もうパニックなんてもんじゃないベルは転びそうになるスカートを軽く持ちよたよた歩くのがやっとである。…観客はそんなベルの事なんで露知らず、なんとも可愛らしい女の子の登場にどよめき、叫ぶのみ。というのも
「可愛い〜〜!!すごい、美人っ!!」
「彼女にしたい〜っ!」
「人形みたいっ!!」
などなど。紹介するお兄さんまでしばし見惚れてしまったくらいで、やっと仕事を思い出したお兄さんは
「ベルアさんは最近こちらに来たそうで言葉がまだ話させないそうです!なので、自己紹介も何もありませんがこの美しさっ!!代理ながらも優勝も夢ではありません!!皆さん、清き1票をよろしくお願いしますっ!」
そこまで言った所で、ベルもやっと下がる事が出来るんだとホッとし、にこっと笑ってペコリとお辞儀をした。…その姿に若い少年数名が鼻を押さえた事はもちろん…ベルが知るはずはなかった。
家からその格好できたベルは、コンテストが終ってもなお、その姿でいるしかなかった。…もちろん、コンテストは堂々の一位。豹の女の人が隣で怖かったけれどトロフィまでもらえたという、喜んで良いんだろうけれどなんだか男の子のベルは複雑な気持ちになっていた。
「…わた飴…食べたいよぉ〜」
ついつい涙目でお店を見てしまうベル。お姉ちゃんの変わりをするからってお金をくれたけれどいくらなんでもこの格好で回る勇気はべルにはない。…そうそう、そのお姉ちゃんは、ケンカをしていた山羊の彼氏が怒りのあまりお姉ちゃんがコンテストに出て新しい彼氏を見つけようとしていた事を知って、昨日の夜に謝って来たのだ。だから、今日はこのお祭りのどこかでデートをしているはずなのだ。
「お姉ちゃん、怒っちゃうとこっちが謝るまで、絶対許してくれないもんねぇ…」
ケンカなんてお姉ちゃんとはした事ないけれど、怒った所は見た事あるから溜め息ものである。…と物思いに耽りながら家へと帰っている途中のことである。
「べ〜ル〜アさ〜〜んっ!!」
と3、4人の男の声で呼びとめられてしまったのである。