「澪って、ヤッパリ、まだ、細いな.」
龍哉の背中を流して(龍哉は、俺の体を恥ずかしくなるほどゆっくり時間をかけて洗った)湯船に二人で浸かった.お風呂は、そんな広いわけじゃないから、龍哉が先に入って、俺が、その上に座り、背中をもたれ掛けるという形になった.
「えっ?」
「まぁ、会ったときに比べて、マシになったけど、もう少しはなァ.」
俺の体を見て、龍哉が、溜息交じりで言う.
「してる時は、細いってわかってても、そんなにじっくり見られないからわからなかった.」
龍哉の指が、腰をすっと触り、かぁぁっと顔が赤くなる.
「んぁ!…はっ…」
お湯をバシャン!!と弾くと、身を捩らせた.だっていきなり、俺のそこに指を絡ませてきたんだもん.それに、腰に当たる熱い物は、振り向かなくても、龍哉のものだとわかっていた.
「あっ、ん…っ!…」
器用な手が、弄ぶようにそこをいじってきて、波のように押し寄せる快感が、思考をストップさせ、溺れさせる.
「ん…っ…だ・・め…」
何も考えられないのに、口からは、そんな言葉が零れ落ちる.
「好きだ…愛してる…」
首筋をなぞる様にしていたキスを降らせながら、掠れた声で言った.ビクンっと体が震えて、
一機に快感が高まる。
「あぁ!!もう…はなし…!!」
涙目になりながら、必死にお願いしたのに、龍哉の指は、いっそう、強く激しく、それを上下に動かした.
「―ああ!!」
頭の中がスパークしたように真っ白になった.それと同時に白濁した液が、透明の湯に混じり、溶け込むように消えていく.俺は、はぁ…はぁ…と、肩で呼吸を整えながら、ぼぉっとした頭で、いかされた恥ずかしさに龍哉の顔を見るのを戸惑っていた.最中はもちろん、いかされた後は、どうしても、龍哉の顔を見たくなるのだ.でも、初めてのお風呂で、一人、龍哉に何もしないままいってしまった後では、それも、なんだか、しにくかった.
「…澪、上がって、続きをしよう…」
聞くだけで、人を魅了する声で誘う.いってしまった後の、いつもより、感じやすくなった体には、もう一度、火をつけるには、十分なものだった.俺は、ただ、こくんと首を縦に動かした.
龍哉は、俺の体を抱き上げ、外に出ると、バスタオルを俺の体にかけて、そのままベットへと向かった. キシっと、ベットが軋む.ゆっくりと,降ろされた俺は、龍哉の顔を真正面から見上げるような体制だった。龍哉は,俺に顔を近づけ、逃がさないとでも言うかのように舌を絡ませる.
「ん…ふ・・んぅ…」
くちゅっと触れ合う唇から音が漏れる。それと一緒に,隙間から,つうっと、どちらのものとも言えない透明の液が流れ落ちた.そっと、龍哉が唇を離すと,長い指で,それを拭う.俺は,自然にその指を口に含んだ.ぴちゃっと音が鳴るが、高まっている快楽は,それさえも興奮の材料へとかえてしまう.指が,付け根まで濡れた時,ゆっくりと,俺の口内から出ていった.
「あ…」
開かせられた足の中心に,さっきまで口にしていた物の感触を感じた.そう思った瞬間,自然に腰が逃げてしまったが,龍哉のもう一つの手が,俺の腰にへとを回し,ひき止める.
「ん…ぅあ…」
指が、ズッと中に入る.一本だし、行為になれたたそこは、痛みなど感じない.待ちわびた物ではなくても、そこに入ってきた物をきゅっと、知らずに締めてしまう.それを龍哉は、ゆっくりとほぐしにかかるのだ.柔らかく、締め付けはしても、どんなに激しくしても快楽にかえるように.
「ああ!…ハッ…」
指の数が次第に多くなり、そこから聞こえてくる音も、淫らな音となる.掻き混ぜ、中を探る指が抜かれようとした時、貪欲に呑みこむようにそこを絞めてしまった.だって、俺の前は、もう、先走り以上の液を流し、もっと、確実な快楽を求めていたから.無意識とはいえ、俺は恥ずかしくて、元から溜まっていた涙を頬に流した.
「澪….」
愛しそうに眉を閉じ、キスで、その涙を流す瞳に触れる.
「龍哉….―あっ!!」
ズズっと、さっきとは比較にならない大きさ、そして、熱い物が、一気に中へと入ってきた.全部入れ終わると、一度、動きを止めたが、徐々に動き出し、ついには激しくなる.
「―あぁ!!」
最後に深く激しく衝かれ、俺はいってしまった.それと同時にきつく締めた俺に、
「−っ…」
と、整った眉を寄せて、龍哉も俺の中でいった.しばらく、二人とも、そのまま動かず、肌を触れ合わせていた.
―「澪?…大丈夫か?」
龍哉は、上に黒の薄い毛糸で編まれたセーターを一枚だけ着て、下には、黒のジーパンを着ていた.シンプル過ぎるけれど、龍哉は、それをそつ無く着こなしていた.…だけれど、最近自分でも気付き始めたけれど、もっと前から知っていた、宮田さんに聞いたことによると、龍哉は、どうやら、自分がそうである事に気付いていないらしい.長身に火の打ち所の無い体つき、顔も然り.そんな龍哉は、何を着ても似合うのだけれど、龍哉は、もとからそういう事に無頓着なとこが手助けして、人に似合いますと言われても、ただのお世辞であると思っている.その人は、モデル並、いや、モデルそのものの龍哉に心から言ったんだろうけど….そういうわけで、ものすごくもてる.でも、気付いていない龍哉には、なぜ自分がもてるのかわからないと言うわけだ.宮田さんは、
「大学や会社でも、自分がどれだけ出来た男か分かっていなかった。あいつも一応、男だから、その中で気に入ったやつと付き合ってたけど、そのたび、いつも聞いてくるんだ、なんで、人気のあるやつが、俺にそんな事言ってくるのか分からない.顔も知らない奴からも手紙を良くもらうし.…お前なら分かる気もするが….ってね」
「初めは、おちょくってんのかと思ったけど、だんだん、そうじゃないってわかってさ。自分にこんなにも無頓着な奴は、初めて知った。だから、今だって、会社で、あんな風にもてはやかされる事になる.…性格は、お世辞にも良いとは言いたくないが、仕事関係ではそれなりに人当たりも悪いわけじゃないから、惚れられて当たり前だってのに。」
宮田さんは、まだ、大学生時に誰?って言われた事に根を持っているようだ.まぁ、それでも親友と呼べるほどに龍哉に付き合ったんだろうけど.…凄い苦労をしたに違いない.…そう思うと、初めっから、優しくしてくれた龍哉が、本当にそんな性格なのか良くわからないけど、俺を<特別>にしてくていることがよくわかって、とても嬉しかった.―ジーっと、龍哉の顔を見ていた俺を体が辛いのか?と心配そうにしてくれるように.
―「ううん、なんでも無い.」
龍哉に向かって、明るく笑った.
「本当に誕生日おめでとう。」
「ああ….」
にこっと笑って、ふと、龍哉が、鞄の方へと行って、それを持ってベットに戻って来た.そう言えば、今日の龍哉のカバンがやたらと重かったな…っと出迎えたときの事を思い出した.
「今日、会社に行ったら、部下にプレゼント渡されて、他にも、デスクに置かれてたのがあってさ.持って帰るのが一度じゃ無理だったから、一週間は、紙袋持参だな.」
と、複雑な面持ちで、俺に苦笑いを見せた.…ヤッパリ、他の人達からのプレゼントだったんだ.そりゃ、龍哉は、モテルから、渡されるのも分かるけどね.でも、できれば、こんなのただの我侭って分かるけど、あまりもらって欲しくないって言う気持ちもある.だってさ、ヤッパリ、不安にもなる.自分なんかじゃ、そのうち、龍哉を誰かに取られてしまうんじゃないかって.もし、そんな事になったら、本気で死んでしまう.ただでさえ、前のときに自分のことなんかどうでも良くなってしまった俺は、龍哉にふられてさえも生きようと思わない.なんて、表情が暗くなって俺に、優しく
「俺にとっては、誰からもらうプレゼントよりも澪が作ってくれるご飯のほうが嬉しいよ」
と、微笑みながら言ってくれた。龍哉は、それで…っと続けて、あるものをカバンから取り出すと、真剣な顔になって、
「受けとってくれるか?」
そう言いながら、俺の手をひき、そっとそれを手にのせた.それは、薄い葵色のケースで、回りを濃い青のリボンで飾られたものだった.俺は、小さくて、軽いそれの中身が分からず、一度龍哉の顔をチラッと見てから、リボンを解き蓋を空けた.
「―!!龍哉!これ…」
驚いて、龍哉の顔を見上げた.すると、真剣な顔ながらも、やさしい顔を俺に向けて、
「これでも、プロポーズのつもりなんだ」
と、少し、自嘲するような顔をして俺の顔を見た.それは、今まで見た事の無い、本の少しだけれど、不安な顔に見えた。
「本当は、もっと、時間がたってからで、ちゃんとした所で言うものなんだろうけど、どうしても、早く、澪をこういう風に捕まえておきたかったんだ.」
「龍哉…」
俺の目には、嬉しすぎて涙が溢れ、それをぽろぽろとこぼしてしまった.
「俺は、澪を法的にも世間でも認めてもらう事は無理だけど、一番愛している.他の誰が、なんと言おうと、永遠に愛している.…俺と…俺を生涯の伴侶にしてくれないか?」
まっすぐな目で、俺を見る.俺は、嬉しいのと、いきなりのプロポ―ズになにも言えず、でも、どうにかして、気持ちを伝えようと、龍哉の首に腕を回して、ぎゅっと抱きしめて
「ぅん…うん!!」
俺は、ただそれだけの言葉しか言えなかったけど、龍哉は、力強く俺を抱きしめてくれた.俺は、そんな龍哉の胸の中で、初めて流す嬉し涙をずっと流していた.
―それから、俺の左の指にシルバーの指輪が光り、龍哉の胸には、シルバーのチェーンに通されたペアーの指輪が光るようになった.