第三話―特別な夜―
今日は、龍哉の好きなものばかりを作って、帰ってくるのを待っていた。そう、今日は、龍哉の誕生日なんだ。…でも、俺は、働いてないから、ろくな物もプレゼントも出来ないし。でも、折角、彰さんに教えてもらったし、自分としても何かしてあげたかった.だから、今日は、俺が出来る最大限の事をして祝おうって心に決めている.喜んでくれるかわかんないけど….
そうこうしているうちに龍哉が帰ってきた.「おかえり」そういって、龍哉のカバンとかを龍哉から預かる.龍哉は、俺が手を出して『持つ』と言う意思を見せなくては、渡したりしない.ある意味当たり前なんだけど、いつも出迎えして、荷物を持つのにしてこないのは、龍哉の性格にもあるだろうけど、疲れてるのに押し付けたりしない所が龍哉のやさしさに思えた。そう、龍哉は、俺の事…細かいとこまで考えてくれて、優しくしてくれる.俺の行動、意見を自分で決めさせてくれる.また、選択肢を広げてもくれる.今まで、人に制限をされてきて、自分もそれに慣れていたから、それは、慣れてなくて戸惑うし、不安になるけど、とっても嬉しい事だった.
「へぇ….俺の好きなものばっかりだな?」
龍哉が、着替えるために寝室に向かう途中、テーブルの上にあるご飯を見て俺のほうを見る.
「うん、…今日、龍哉の誕生日だからお祝い.」
「へ?(…教えたっけ?)」
「ごめんね、たいした事出来なくて.」
「いや!そんな事ないよ.―すごく、嬉しい.ありがとう.」
龍哉は、にっこり笑って見せてくれた.俺は、ホッとして、無意識に体の力が抜けた気がした.
だって、龍哉は、大人だし、凄くもててるだろうし(彰さん情報でも)だから、こんなのだと、あんまり≪お祝い≫にもならないかな?って不安だったんだ.…そういえば、さっき渡されたカバンがやけに重かったような….もしかして…(募る不安)
「澪? どうしたんだ?」
動かなくなった俺を不思議に思った龍哉が、肩に触れて聞いてきた.
「ううん、なんでもない。それより食べよ?」
「ああ….」
龍哉は、ケーキとか甘い物はあんまり好きじゃないみたいだから、和食と日本酒を今日は用意していた。
「龍哉、おめでとう」
すると、微笑んで
「ありがとう」
と俺に優しく言ってくれた.最近は、仕事で遅くなる事があって、久し振りに、ゆっくりと二人でご飯を食べることができた.
俺は、お風呂が出来るその前に片付けを龍哉と二人でして、リビングで龍哉に言おうとしている事をいつ言おうか、時をみはらかっていた.龍哉は、いつもはあまりしない眼鏡をして新聞を読んでいた.
「あの…あのね、龍哉!」
「 ? なに?」
龍哉は、いきなり呼びかけられた事に少し、戸惑いながら、新聞を閉じて微笑しながら聞いてきた.龍哉の薄くて形の整った唇の両端が少し上がり、塞ぎがちになった優しい目が、妙にかっこ良くて、今から言おうとしている事が、さらに言いにくくなってしまった.
「ん?」
龍哉は、隣に座っていた俺に近寄って、ソファに手を掛け、顔を近づけてきた.
「!!−龍哉!」
くすくす笑いながら、俺の顎に手を掛け唇が触れた瞬間、舌を奥深くに絡ませてきた.俺が、身を捩って逃げようとしても、ソファの端に追い詰めたうえ、龍哉が逃がさないように覆い被さり、ソファにおいていた手で抱きしめてきた.
「んぅ、…ふっ…」
俺は、躊躇して逃げるのに龍哉は、追いかけるように舌を探り、からませてくる.はぁ…と、思わず息を吐く頃にやっと、龍哉は唇を離してくれた.でも、龍哉は、俺の目をジッと見つめたまま、離さずにいて….俺は、恥ずかしくなって、顔を背けながら、
「もう!龍哉ってば、どうしてこういうことするんだよ!」
って、本当は、とても嬉しいし、キスだけで、この感じやすい体は火照ってきてるけど、恥ずかしくて怒った振りをした.したら、龍哉は、
「―澪、可愛いすぎるし.」
そう言って一度、区切ると、耳に唇を近づけて、
「我慢できそうにない….」
ッて、いつもより低い…あの時の声で言うんだもん.体がぞくぞくして、熱くなるのが自分でもはっきりわかった.
「あ、ん…」
耳を舌でなぞりながら、手は、俺の服の下を探ってくる.
「あ!―っだめ!」
俺は、焦って、龍哉の体を押した.
「…澪?…」
いつもは、戸惑いながらも、止める事のない俺に不思議そうに聞いてくる.
「―あのね、その….」
そのまま勢いで言ってしまえたら良いのに、頭に浮かぶ言葉に顔が赤くなって、声が途切れて、徐々に小さくなってしまった.でも、これを言わないと、意味がないし….と、龍哉の顔を見上げた時、中断させた事を起こってないかな?って不安になった.
「どうした?」
―ん?と、俺の不安をよそに、優しげに、でも、真剣に聞いてくれようとしていた.俺は、安心して、声は、小さかったけど、言える事が出来た.
「龍哉が、良かったら、一緒に…お風呂に入ろう?…」
…前に一度、体が辛かった時に「一緒に入ろうか?」ッて、言ってくれたときがあったんだけど、恥ずかしくて、思いっきり断ってしまった.その時、龍哉は、その気なんかなくて、心配して言ってくれてるのがわかってたのに….ずっと、それが引っかかってて、いつか、一緒にちゃんと、入ろうって決めてたんだ.それゃ、今は、そんな体がつらいとかじゃないけど、龍哉に喜んでもらえそうな、何かっていったら、これくらいしか考えられなかった.
「……」
いきなりの提案にビックリして、俺の顔を見たままボーゼンとしている.慌てて、
「嫌ならいいんだ!!−その、ちょっと、思いついただけだし!」
首まで赤くなってる自分が、どうにかごまかそうとして、頭がパニックになってる。
「―ああ、違うんだ。澪が、明るいとこで裸見られるの嫌な方だろうって思ってたから、そう言ってくれたのが、少し、以外で…. …うれしいよ。黙ってたけど、一度、澪と入ってみたかったしな.」
ニコって優しく微笑んで、ぎゅっと、一度、強く抱きしめてくれた.