「…私は…先輩が好きです…」
私は、先輩の顔を見ずに俯いて、震える掠れた声で、先輩へと気持ちを打ち明けた。先輩は、何も言わず、また、何もせずにいた。
「……」
私は、言った後に顔が紅潮し、けれど、どうしたら良いのか分からずにいると、
「……本当…か??」
と信じられない…と顔を見なくても分かるような声で先輩が私の頭上で呟いたのが聞こえた。私は、ますます紅潮するのをとめることも出来ずにただ、何度も頷いた。そうしていると、いきなり、先輩が私に抱き付いてきた。それは、とても強い力で私は、ビックリして慌てた。
「―!!せっ、先輩!!」
私が先輩の胸を焦って押し返そうとしても先輩は、更に強い力で私を抱きしめ、私の首筋に顔をうずくめ深い溜息をついた。先輩は、
「すっげぇー、嬉しい…」
ぼそっと、かろうじで聞こえるような溜息をこぼし、
「もう少しだけ…このままでいさせてくれ…」
とまるで、親にすがる子供のように私に言った。…でも、その声は、変に甘えた声ではなくて…どちらかと言うと、子供が迷子になって、やっと、親を見つけたときのような…そんな安堵を含んだ声だった。そこで、私は、少し、意外な気分を味わった。だって、先輩は、明るい声で大袈裟とも言えるほど、嬉しい事には、はしゃぐように喜ぶような人なのにこんなに…何も言わないだなんて。私にとって先輩が見せる姿の不思議な事がまた、一つ増えた。
―昼休みがいつのまにか終っていてなんと授業はすべて終了してしまっていた。私は、あの後、先輩と別れて教室へと帰っていた。もちろん、この後先輩と一緒に家に帰るのだが…顔が自分でもわかるほど熱くなっていて、今でもさっきの自分の告白が信じられない。…私が先輩を好きになるだなんて会った当初は、思いもしなかったのに…けれど、いつしか私は、先輩の事を考える事が多くなり、今日の新藤先輩の言葉ではっきりと自分の気持ちを自覚する事が出来た。―私が先輩を好きなのだと……私は、火照る顔を手で押さえ熱を放つように気を引き締めようと意識をした。……丁度、その時だった。…鵜川が向こう側からやって来た。そして、擦れ違いざまに…
「僕は、諦めたりなんてしないから」
と私を射竦めるような眼差しで言い放ち、静に去って行った。