―2000Hit勝手にお礼企画―

 

「嫌!!絶対に嫌っ!!」

「―お前はどうしてそんなに我侭なんだ!!この家に居たかったら入れ!!」

「別に入らなくったって良いだろ!!俺は、絶対に入らない!!」

…しばし、沈黙。しかし、お互いの間には、火花が飛び散っている。なぜ、こんな事になったのか…それは、雫と名乗る黄色の毛並みの猫が、自分の家の庭に迷い込んできた所為だった。外は、雨が降っていて、ずぶ濡れの雫に風呂に入れと言った途端、雫は、「嫌だ!!」と言ってきた。いくらなんでも、ずぶ濡れでいたれたら、風邪を引かれる。言い合って、既に40分。早く暖まらないと…

「はぁ…。一体、どうしてそんなに嫌がるんだ?理由を言ってみろ…」

「………」

「言わないと、力ずくで風呂場に連れてくぞ!!」

すると、ビクッと雫は、肩を竦めおびえた顔で見上げてくる。全く…どうして俺がそんな顔で見られなきゃいけないんだ?―ハァ…とまた、溜め息を吐いた。

…一方、雫は、なんだよ!!どうして、そんなに怒るんだよ?!さっき会ったばかりなんだからほっといてくれれば良いじゃないか!!俺は、玄関で雨宿りさえさせてくれればいいんだよ!!と心の中で叫んでいた。

ずっと、黙っている雫に焦れた黒い毛並みのライオン、シルバは、ぐいっと、雫の腕を掴み風呂場へと連れて行こうとする。ライオンと猫…その力の差は、歴然としている。ズルズルと引きずられつつも嫌がる雫。

「わかった!!言うから!!お願い、やめて!!」

「………」

「…小さかった時に一人でお風呂に入って……溺れそうになったんだ。だから…」

…そのときの事を思い出してか、青ざめる雫にシルバは、笑ってしまう。風呂で溺れた?一体、どうやって??しかし、笑われた雫は、ムカっとして、

「笑うなよ!!俺は、おじいちゃんに、ちゃんと30分は温もるんだぞって、言われたから言う事を聞いただけだ!それで…のぼせちゃって…」

シルバは、まだ、クックックと意地の悪い笑いを零していた。30分…。こいつの祖父は、長風呂が好きだったのだろうが…30分もずっと浸かっていたら、子供だった雫は、すぐにのぼせる事だろう。

「理由がわかっているなら、恐くないだろ。さっさと上がれば良いんだから。」

「…ぅ…けど、お風呂が恐いんだから仕方ないだろ!!」

「お前…今まで一体、どうやって風呂に入っていたんだ??」

雫は、それに、明るいきょとんとした口調で

「え??…シャワーだけど。」

と答えた。だが…

「…残念だが、家は、古いからシャワーなんてない。諦めろ。」

「ええ〜〜!!」

…そして、また、引きずられる雫。脱衣所について服をひっぺがえしても一向に風呂に入ろうとしない。すると、

「ふっ―くっしゅん!!」

ぶるぶると身を震わせながら、クシャミをした。まったく、これだから、言ったんだ…。俺は、仕方がない…と

「え??なっ何?!」

戸惑う雫を横目に俺は、服を脱ぎ出した。

「そんなに嫌なら、俺が一緒に入ってやる。…ほら…」

入れ。と雫の背中を押しながら風呂の引き戸を開ける。雫は、お風呂を見てビックリした。脱衣所も広かったけど、お風呂場は、脱衣所の軽く二倍はある。それに、さっき、古いと言っていたけど、今時、木のお風呂??初めて見た…。雫が不思議そうにしていると

「…家の家系は、全員風呂好きだったから風呂に金をかけたんだよ。湯船も檜だしな。」

「へぇ…。そうなんだ。」

初めてヒノキっていう木を知った雫にとってあまり、その価値がわからない。ついでに言えば、風呂嫌いなのだからその良さも分からない。

「さて…。」

ぐいぐいと手を引いて、雫を腰掛けに座らせ、湯をかける。たったそれだけで、ビクビクと恐がり、目をぎゅっと瞑っている。…さっきまでのこいつは、一体なんだったんだ?あの威勢は??…思わず、フッと笑みが零れる。そして、ずっと、そのままでいる雫を勝手に抱き上げて、湯船の中に入る。急に抱き上げられた浮遊感に驚いて目を開けた雫は、今まさに風呂につかる瞬間を体で感じるだけでも恐いのに目で確認までしてしまい、ぎゅうとシルバの首にしがみ付いた。


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