「よっ!!」

…それが、新藤先輩の第一声だった。私は、それに「はぁ…。」と曖昧な返事をした。
それから、新藤先輩は、椅子から立ちあがり、こっちへと歩いてきた。

「へぇ…。写真よりも実物の方が良いな。」

じろじろと私の顔を見て言った。私が、いきなりのことに面食らいながらも睨むと新藤先輩は、肩を竦めるようにして

「顔を写真意外でちゃんと見たこと無かったからさ…宮田が本気になる奴の顔を一度見てみたかったんだよ。」

「……写真って?…」

「写真部の生隠しどり、一枚500円。激隠しどりは、1000円から。」

ひらひらと三・四枚くらいの写真をポケットから出してひらつかせ、その中から、一枚選んで私に見せた。私は、すぐに新藤先輩から奪った。だって、それは、私が体育着を着替えている時のもので、上衣の裾に手をかけて脱ごうとしているものだった。その…お腹から胸にかけて肌が見えている写真で…私は絶句した。

「ちなみにそれは、出た当初で買ったから値段は、2500円。今じゃ…一万軽く出す奴もいるよ。」

先輩が意地が悪そうに口端を上げて言った。私は、すぐに破りポケットに入れた。
先輩の「ああ〜、もったいない」という声を無視して。

「どうして!!どうして、先輩がこんなものをもっているんです!!それも私に見せたりして!!」

そうだ…こんな写真を新藤先輩がどうして、持っているのか。そして、それをなぜ、私に隠そうともせずにいるのかがわからなかった。普通、こんなもの見せられたら怒るのも分かるはずだ。

「…言っとくけど、俺は、頼まれたんだぜ?」

「頼まれた?」

「ああ、俺がそれを欲しくて買ったんじゃないって事。…情報屋として、写真部が菱谷有希の物を売り出した場合、いち早くそれを買いとっておくことが仕事なの。そして、処分する事も。…誰に頼まれたか分かるよな?」

「…宮田先輩…」

「当たり。あいつ凄いぜ?あの根暗で陰険な写真部の部長に交渉させやがった。」

「交渉???」

「そっ…。内容は、菱谷の写真を取るのを止めろって事が第一だったんだけど、写真部の部費には、お前を欠かせないって引かないからさ、お前の写真を焼き増しは、絶対にしないこと。つまり、写真一枚だけしか売るなって事を承諾させた。その代わりに自分の写真は、好きにしろってさ。あいつ、前に写真部に乗り込んで売るな、撮るなって脅してストップかけてたのにさ。その所為で、今やこの学校の生徒80%は、あいつの写真持ってるぜ?」

「………」

「まっ、俺は、あいつに仕事頼まれた方が金になるから良いけど、あいつ、仕送りを受け取らないからお前の写真の金のためにまた、アルバイトを増やしたんだぜ。いくらなんでも、そこまでするかって感じだよなぁ〜。」

先輩は、ふざけた様に明るい声で笑いながら言った。けれど、すぐに真面目な顔をして

「…お前がさ、どういう気持ちかはわからないけど、さっきの写真みたいなんを撮らせ無いように気をつければ、少しは、宮田も楽になるんじゃねーの?」

「………」

私は、何も言えなかった。だって、写真の事もアルバイトの事も何も知らなかったのだから。それに…仕送りという事は、先輩は、一人暮しをしているのだろう。だけど、私は、それさえも知らなかったのだ。そして、先輩もそう言う事は、一切言わず、いつもと変わらずに笑っていたのだ。…新藤先輩は、ジッと私を見ていたが口を開いて、

「あと、知らないようだから言うけど、山本の奴、お前に最近近寄ってこないだろ?」

「…ええ…」

ああ、そう言えば、宮田先輩と一緒にいるようになってから、山本がこっちに気付いたとたん、おどおどしだしてそそくさと何処かに消えるようになっていた気がする…。

「山本は、この学校に長い事いたから、結構、お前のような被害にあった奴がいたんだよ。まぁ…もっと、進んだ事もされたりとか…宮田が、そう言う事を校長に言われたくなかったら、もう、生徒にするなって脅したもんだから、山本がびびったんだ。校長に言われたら警察事にもなるしな。宮田が、校長に最初っから、チクラないのは、されてきた奴らが表立って証言しないといけないからだ。中には、協力してくれる奴がいかもしれないけど、ほとんどの奴が嫌に決まってる。…お前、こんだけ宮田にされてても付き合う気は無いのか?俺は、この際、お前にその気が無いなら、キッパリと宮田に言ってやってほしいんだよ。もう、すべて片がついてるようなものなんだから、お前を近くで守る必要だって無いだろ?」

まっすぐに私の目を見ながら、新藤先輩は言った。その目は、宮田先輩を本当に心配して言っている事が伝わる目だった。……私が、口をやっと開こうとしたとき…バタバタと足音を響かせて宮田先輩がやって来て、この話しを止める事になった。新藤先輩は、ふぅ…と軽く溜め息した後に、すぐに明るいふざけた顔になって

「お前、遅いぜ!!俺達が、気を利かせて待ってやってたつうのにもう、休み時間、半分しかねぇじゃねーか!!」

「うるせぇな!!俺だって、好きで遅くなったんじゃねぇ!!…ったく、先に食べて良いって言ったろ?」

宮田先輩が、私を見て新藤先輩と話す声とは、ちがう優しい声で言った。私は、それに胸が締めつけられるような思いがした。この人は、私に言った事を守ってくれる。自分は、味方だといったあの言葉。あれは、嘘なんかじゃなかった。…私は、この人に気持ちに答えてもいないのに…。恩着せようともしないで守ろうとしてくれる。…そう思ったとき…私は、知らぬ間に頬を濡らしてしまっていた。先輩達は、ビックリした様子で、少しの間固まっていたが、どうして私が泣いたのか、理由が分からず戸惑いを隠せない様子ながらも私を慰めようとしてくれた。また、それに私が感動して泣いてしまった事は、言うまでも無い。…私が、涙が止まってやっと気持ちが落ち着いたときには、新藤先輩は、教室に居ず、宮田先輩が私を抱き締め

「大丈夫か?」

と優しく微笑みながら聞いてくれたのだった。そして、私が頷くと、すぐにホッとした顔をして、次には焦った顔をして抱きしめていた手を離してしまった。私が、?と言う顔で首を傾げると

「すまない。体に触ってしまった…。」

困ったような苦笑いを見せて言った。私は、止まった涙がまた流れそうになったが、ぐっと堪えて口を開いた。


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