「こいつはナンなんだ?」
自分が起きあがった瞬間に倒れこんだうさぎを見つめながら言った。起きた瞬間どさっと音がしてその方向を見ればこいつがいた。まったく…どうすればいいんだ??こいつをこのまま放っていっても良いが、この山付近には、誰も住んでいないし、この山自体、人里離れていて人が通る事など無い。
「しょうがない…か…」
ひょいっと、うさぎちゃんをお姫様抱っこしたのは、耳も尻尾も綺麗な桜色の狼さん。
男前なお顔に可愛いお色のそれは、なんとも言えないアンバランスさ…
…ざかざかざか…
うさぎちゃんを抱えた狼さんは、自分のお家へ帰って行きます。この山には、この狼さんしかいないのですが、狼さんは、なんと、大の人嫌いだったのです。ですから、たった一人で山奥に家を建てて一人で暮らしていたのです。そして、今日は、天気が良くて、収穫日よりだったので、山にある食べ物を取りに行っていたのです。うさぎちゃんとあったのは、狼さんが疲れてお昼寝をした所為でした。
「収穫と言ってもこんなのを取るつもりは無かったのに…」
ぶつぶつと狼さんは、独り言を言っています。―家について、うさぎちゃんをベットに寝かせました。ウサギちゃんは、ずっと、日差しを浴びていて軽い日射病になっていたようで、顔が火照っていたので冷たいタオルをおでこにかけてやりました。クークーと可愛い寝息を立てて眠っているうさぎちゃんの頭の近くのあいているベットサイドに腰をかけて様子を見ていましたが、少し、狼さんも眠たくなってうとうとしていました。すると、急にきゅっと尻尾を掴まれた感触にビックリしてうさぎちゃんを見ると…スリスリ…と気持ちよさそうに尻尾に顔を摺り寄せている姿がありました。その姿は、本当に可愛くて一瞬…見とれてしまったほどでした。狼さんは、今まで人がダイッ嫌いな人でしたから、こんなふうに人に対して感動する気持ちは初めてでした。狼さんは、焦ってしまいました。どうして、自分は、こんなうさぎに胸を高鳴らせているのだろう?今まで、誰に対しても嫌悪という言葉しかなかった自分が!!口元を手で抑えて考え込んでいると
「う…ん……?」
とウサギちゃんがボヤーとした顔で起きました。そして…顔を上げると…狼さん!!うさぎちゃんは、また、気を失ってしまいそうでしたがなんとか、堪えました。だって、失ってしまえば、簡単に食べられてしまうんじゃ…と思ったからでした。
「大丈夫か??どこか、痛いところがあるんじゃないのか??」
え??とうさぎちゃんは思いました。だって、狼さんが、自分の心配をしている??どうしてだろう?まさか…!!生きの良いものがよくて確かめているんじゃ…とビクビクと体を振るわせてしまいます。…うさぎちゃんておばかさんですが、獲物は、生きのよいものが良いことは、知っていました。狼さんの顔を見上げて半泣き状態で
「だ、大丈夫…」
と答えました。だって、いつまでも答えないでいると狼さんがいつか怒ってしまうんじゃ?と思ったからです。そう、思った瞬間、お腹から、キュルル…と小さな音が聞こえました。だって、うさぎちゃんは、朝ご飯しか食べていないんですもん。…耳の良い狼さんは、わずかな音でも聞こえてしまいます。うさぎちゃんの可愛らしいお腹の音に我慢できなくなって、笑ってしまいました。
「待っていろ、何か食べ物をもってこよう…」
まだ、クスクスと笑いながら寝室から出て行きました。うさぎちゃんは、とても不思議な気持ちでいました。だって、笑っている狼さんは、とっても優しそうで温かい顔をしているからです。話し方は、なんだか、ぶっきらぼうでしたが、声が優しい声色だったので恐くありませんでした。少したって、コツコツコツ…と足音を鳴らしながら、良い匂いをさせたご飯を持って、狼さんが帰ってきました。
「熱いから、気をつけて食べるんだぞ?」
ほら…とご飯を渡してくれました。それは、うさぎちゃんの大好きなにんじんやブロッコリーがたくさん入ったスープとパン、そして、赤いジャム。
「…?…このジャム…」
「ああ、木苺のジャムだ。安心しろ、お前の木苺じゃない。」
ガサッとベットの近くにあった袋をうさぎちゃんに見せました。それは、うさぎちゃんが取った木苺の袋。ホッとしました。だって、倒れてしまった場所に置いてきてしまったと思ったからです。別に、狼さんに食べられても怒りはしませんが、取ったまま置いてきてしまうのは、もったいなくて嫌だったのです。
また、キュルルとお腹が鳴って恥ずかしく思い、「いただきます。」と言って、狼さんが作ってくれたご飯を食べました。ご飯は、とっても美味しい物でした。はぐはぐと食べる姿を狼さんはジッと見ていました。そして、不意にこう言いました。
「木苺が好きなら、分けてやろうか?」
今日は、たくさんの食べものを取りました。その中に木苺もありました。
「え??いいの??」
パッと顔を上げて嬉しそうにうさぎちゃんは言いました。もう、うさぎちゃんは、完全に狼さんに対して警戒心を解いてしまっていました。だから、最高とも言えるうさぎちゃんの可愛らしい笑顔を見せてしまいました。そのため、狼さんは、ドキンと胸を鳴らしました。こんな気持ちは、初めてでしたが、うさぎちゃんを愛しく思う気持ちは、よく分かりました。そして、狼さんの心の中に独占欲が起こったのでした。