「―ただいま。」

そういって、家に入ると、すぐに澪がやって来て

「お帰り…」

と少し、首を傾けながら、はにかむように笑ってくれるようになった.(今までは、返事もあまりした事などなかったのに.)だが、澪の変貌は、これだけじゃなかった.

ご飯も、澪が作ってくれていて、風呂も用意されていた.

そして、寝る前にテレビを見ていると澪が近くに来て、すぐ近くに座り、俺にほんの少しだが、もたれ掛かってきた。(近くに居ても、触れ合うほど近くには、絶対に来なかったのに)でも、俺は、気を許してくれたのだろうと何も言わずにいた。一二時を回ったので、俺が、

「―さてっと、もうそろそろ、寝たほうがいい.」と言うと、

「―ぁ….」

「? 何?」

すると、俺のシャツの裾を握って、

「…一緒に、ベットで寝よう…」と、小さな声で、恥ずかしそうに、少し顔を赤らめて言った.俺は、さすがにビックリして、澪の方を向いた時、

「…ダメ?…」と、不安げに俺の顔を見上げた.俺は、何も言えなくなり、一緒に寝ることになってしまった.

ベットに入ると、俺は、ベッドの端に出来るだけよって、澪とは、反対方向を向く事にした.そうしないと、俺は、体がデカイからと買ったWベッドも、いくら小柄な澪でも、体が触れ合ってしまうからだ.俺は、ゲイではないのだが、さっきの澪の顔がちらついて、ヤバイ状態になっていた.澪は、かなりと言ってもいいほどの美少年で、笑っている顔や、不安そうな顔なんかされると、理性がもたなくなる.澪には、悪いが、今までで、澪を抱きたいと思った奴らの気持ちが、少なからずわかった気がした.などと考えていると、澪が、なんと、俺に体を引っ付けてきた。俺は焦って、「澪!」と振り向いて読んでみると、澪は、安心しきったように、俺の背中にピッタリと引っ付きシャツを握り締めて寝ていた.まともに、澪の顔を見てしまい、本気でヤバクなった俺は、ベットを出ようとしたが、しっかり握り締められたシャツがそれを許してくれず、あまり動くと澪が起きてしまいそうなので、必死で、朝が来るのを待つことにした.

朝も、「行ってらっしゃい。」と、澪は玄関で見を来ってくれたが、まるで、お預けのような状態でずっと起きていた俺は、愛想笑いのような笑みを見せて、会社に行く事になった. 

―「どうかしたか?」会社に着いた俺に、大学からの付き合いの宮田が話しかけてきた.こいつは、俺にとって言わせれば、なにかと目ざとく、厄介な奴だが、世話好きで、気の合う奴だ.…早速、やつれた顔を見つけて、話しかけてきた.

「…いや、たいした事じゃない」

「お前が、そう言うときは、いつも、たいしたことだろうが!それに、その顔で言われたって、全然、真実味が無いぞ.」

「…ハァ.全く目ざとい奴だな.他の奴なんて、何にも言わないってのに.」

「長いこと付き合ってんだ.それに他の奴が言ってこないのは、お前と話すこと自体恐れをなしてんだ」

「…?なんでだよ?」

「これだから、お前は….男も女の中でも、絶対の規則があってな、お前には、絶対に馴れ馴れしくしないんだとよ.」

「ハァ?」

「お前は、周りから見れば、神様なんだよ」

…そう言えば、誰に話しかけてもいつも、極度に緊張されていたような.部長というポストの所為だと思っていたが….

「もし、飛びぬけて、親しくなろうものなら、会社にいるファン全員から、バッシングされ、はてには、会社を辞めることになる」と、冷やかすかのように、ニヤニヤと笑っている.

「―なんだよ?」

「わかんないか?いたろ?そういう、不幸な奴が….お前もさァ、罪なコトするよなァ.」

「…」

「杉田だよ. 杉田智一。」

「―それ、本当か?」

「マジも、マジ.」

「杉田….でも、俺、特に親しくした覚えは….」

「一回、食事しただろ?」

「…あれは、遅くなって腹減ってたから….―それだけで…?」

「それだけって、神サンに食事に誘われてみろ?もう、みんな、涙流して、辞めてくぜ?」

「…そういうモンなのか?」

「もぉ、常識だな.この会社では.まっ、そういう事だから、むやみに親しくすんなよ!そんな事で、折角入った新人が消えたりしたら、もったいないからな. それと、今日、帰りに飲もうぜ.話し聞くからな! じゃな!」

さっさと、自分の言いたい事を言って、去って行った.

…杉田には、知らなかった事とはいえ悪いことをしたと思う.多分、新人の杉田は、その規則とやらも知らずに俺からの誘いを断れなかったのだろう.

…宮田と飲むのも久しぶりだし、それに、今は、澪といると、我慢が出来そうにないしな.…こんなにも、自分が、意思の弱い奴だと知らなかった.けれど、はっきり言って、男にこんな事になったのは、初めてだ.今までだって、美形といわれる男に2、3度は迫られた事もあったが、本当に何も感じたりしなかったのだ.

 

…プルルルル プルル….

―「んぅ?」…なに? 俺は、掃除とかを全部かたずけ暇だったので、ソファで昼寝をしていて、鳴り響く電話の音に起こされた.…出ていいのか迷っていると、留守電になって、

「龍哉だけど.…澪いるか?」

俺は、慌てて、受話器を取った.

「うん.なに?」

「あー、今日、悪いんだけど、帰るの遅くなる.ご飯も食べてくからなんか作って食べといてくれないか?あと、ちゃんと、風呂入って、ベットで寝るんだぞ!じゃ….」

プチッと、携帯がきられた.内容は、別に何とも無いけど、近くで「おい!龍哉!さっさと行くぞ!」って、男の声が、仲良しそうに聞こえた.ただ、それだけだけど、なんだか、もやもやとした、変な気持ちになった.

 

「でっ?話しはナンなのかな?」

居酒屋の席に座るなり、宮田がニヤニヤ笑いながら切り出してきた.

「…。そんなに楽しそうな顔されて誰が話すか!」

「だってよ、笑いたくもなるぜ?いつも二枚目のお前が、何があったかは知らないけど、やつれ顔で、しかも、やつれだと気がつかない奴らが、哀愁があるだの渋いだの言ってんだぜ!コリャもぉ、笑うしかないだろう?」

―杉田の事といい、何処で、そんな情報を手にいれているのか気になったが、聞くとまた、イヤな交換条件を出されるに決まっているので、聞かないことにした.だけど、俺は、宮田は嫌がるような噂や秘密は絶対に流さない信用の出来る奴と知ってるので、話すことにした.

「…今月の初めに男の子を拾ったんだよ.」

「男の子!なんでまた?」

「公園で合ったんだよ.行くとこがないっていうから、家につれてきたんだ.」

「はぁー、珍しい事もあるんだな.あのお前が?」

「アノってなんだよ.…まぁ、俺自身驚いてはいるんだ。今まで、こんな事なかったし.正直、その子が可愛くてさ.前は、何も問題なかったんだけど、最近、なれてきたのか表情も出てきて、笑われたりすると本気でやばいんだよ.昨日なんて、そんなときに一緒に寝ようって言われてさ.嬉しかったけど、一睡も出来なかった.」

「へぇ。お前がそんなになるのか.…珍しいなんかじゃ済まないな.」

「その子、十八なんだけど、全然そんなふうに見えなくてさ.下手すれば、高校生の女の子。もしかしたら、中学生かもな.…それでさ、俺みたいに家に誘う奴の中には体目的の奴もいて、最後まではされてないけど、嫌な目にあってる.…そんな子になにも出来ないだろう?」

「…まぁな。それよか、俺に言わせれば、お前が、体抜きにして、本気なら…、まぁ、俺に言わせれば、プライベートでは人に嫌なくらい冷たいお前がそんだけ考えてんなら本気だろうけど、その気持ちを伝えるべきだと思うね。」

「…普通、反対じゃないのか?」

「まっ、普通はな.でも、俺、ゲイだからな.」

ズルっと、グラスが滑った.でも、俺の動揺を気にせず宮田は、飄々と話を続ける.

「お前はさ、今まで、そんな顔だから、つきまとってくる女と適当に付き合ってたけど、結局、本気の奴なんて一人もいなかったろ?そんなお前がさ、相手の事をちゃんと考えて気持ち抑えてるなんて、初めてだし.正直、その子逃がしたら、もぉ、そんな事2度とないと思うぜ.」

―店を出て、宮田と別れた時には、もぉ、十二時半になっていた.宮田の恋愛話しを聞いた事が無かったが、ゲイだったとは….

澪に対して本気だと自分でも思うが、澪は、ゲイではないのだから、まだ、言うべき時じゃないと思う.そして、言って、嫌われるのが恐いのだろう.今までは、どちらかといえば、ふる側だった俺は、突き放される気持ちを知らないのだ….

 

―家に入ると、リビングの電気がついていた.澪は、ちょうど、風呂に入っているようだ。少し経って俺が着替えていると澪が寝室にやってきた.澪は、俺のだぼだぼのTシャツと黒のズボンを着ていて、少しでも下に着崩れると胸開きから乳首が見えてしまいそうだ。

「もう、寝てるのかと思ってたけど、普通、こんなもんかな?」

俺は、澪の方を出来るだけ見ないように背を向けて言った.いくら、気持ちの整理が出来ても、体は、そうはいかないのだ.

「….お酒飲んでた人って、恋人?」

ゴトっとハンガーにかけた服を思わず落としてまった.

「…そうなの?」

「―ちがう!あいつは、友達!…えっと、なんでそう思ったかは知らないけど、確かに、あいつは、ゲイらしいけど、俺とは、そんなのじゃなくて…」

澪の肩をつかんで、一気に捲くし立てていると、澪が、泣きそうな顔でいる事に気付いた.

「…澪?」

「…っ.俺、その人が龍哉って呼んでるの聞いて、なんだかわかんないけど、急に悲しくなって、いろいろ考えちゃて.こんなの変だってわかってるけど、だけど。…」

澪は、眉を寄せて、必死に泣かないようにしていたが、溢れ出してくる涙が、頬を伝う.

俺は、なんて言っていいのかわからずに、澪の体を抱きしめた.

「龍哉…?」

困惑して名前を呼んでくる.

「たつ―…んっ」

俺は、無意識のうちに、澪の唇に深くキスをしていた.

「…んぅ…ふっ…」

澪は、呼吸が上手く出来ず息が荒くなった.そして、俺のシャツを握って引き離そうとしているようだが、キスのせいでか、力が抜けていて、ほとんど、無抵抗のようだ.

―俺が、キスを止めて離してやると、

「…なんで?…」と、困惑している顔で見上げた.

「…澪が好きなんだ.…ごめんな。こんなんじゃ他の奴らと変わら無いし、信じれないよな?」

「……」

「…ちょっと、俺と一緒にいるの嫌だろうから、友達ん家でも行ってくる.澪の行く所ができるまで行ってるから、安心していいし、なんなら、ずっといても….」

「龍哉….」

「ああ、別に気にしなくていい。俺は、泊めてくれそうな奴たくさんいるし、別に、ずっといても、気にしないのばっかだしな」

すると、ぎゅっと、俺の腕を握って

「違う!! 違う…そうじゃな…」

「―今、一緒にいると、嫌がられても、止められそうにないんだ.」

言い終わる前に澪にむかって、影のある笑いを見せた.

「…俺、龍哉なら …なにされても・・いい・・よ」

ぎゅっと、俺の背中に手を回し、

「だから、出て行かないで… 俺を一人にしないで….」

と、不安げな瞳で今にも鳴きそうな声で言った.

「澪….」

俺は、澪を抱きしめ…また、様子を覗うように軽くキスをした.

すると、澪は、今度は、自分から舌を絡ませてきた.

「ん…ハァ….」

腰に手を回し、服の下から澪の肌を直に触る.

澪は、びくんと体を震わせ、俺は、無理をしているのだろうと体を離そうとした.

「いい。…続けて….」

顔を赤くさせて潤んだ目を向ける.

「澪。好きだよ。」

そう言うと、澪を近くにあったベットにゆっくりと寝かした.

上の服を脱がしながら、澪の腹部にキスを繰り返す.

「っあぁ…ふっ…やぁ…」

俺が、澪の胸の突起を愛撫すると敏感に反応してくる.

だが、澪は、声をこらえているように思え、更に乳首をいじる.

「ああ!…たつ・・やぁ…。」

俺は、澪のズボンを下着と一緒に一気に脱がした.

澪のそれは、もぉ、いきたくなっているようだ.

澪は、俺に見られているのが恥ずかしいのか、シ−ツを握り締め、顔をそむける.

俺は、澪をいかせるために澪のものを口に含んだ.

「あ…やぁー!!」

と、シーツを引き寄せる音と共に悲痛なくらいの声を出す.

「ン….出ちゃ….もぉ、放してぇ!」

澪は、俺の髪を引っ張って引き剥がそうとしたが俺が、澪の裏側を舐めてやると同時にいき、俺は、それを飲み下した。澪は、息を荒くしてだるくなった体を投げ出している.

「澪…。足、もう少し開いて….」

さっきよりも足を開かせ、普通見ることのない所をさらけ出させる.

「っ….」

俺は、澪の奥の蕾に舌を這わせる。

「ああ!やめ…!」

「…痛くしない.大丈夫だから・・・」

「…うん…」

すると、澪は、俺の言葉に安心したのか抵抗する事は無かった.

俺は、それから、舌と指を使って、よくほぐしてやるとこにした.

初めは、慣れない異物感が気持ち悪くて腰を思わず引いてしまっていた澪もそこを指がすんなり出入りするようになった頃には、また、絶頂を迎えたくなってきたようだった.

「…龍哉 …もぉ…いきたい…」

初めての快楽が澪の理性を熱く浮き上らせ澪自身、こんなふうに言っている事などわかっていないだろう。

「!!…熱い!―あぁ!!」

俺はぐっと、澪の中に入った.

「アッ…ん…」

よくほぐしたおかげで、澪は、痛みも無かったようだ.

「―あぁ!!動いたら…!」

俺は、最後まで言うのも聞かずに腰を使い始めた.

正確に言うと、それまで、待てなかったのだ.

「…あっ!もぉ…!そんなにしないでぇ…!!」

「―ああ…!!」

次の瞬間、二人一緒にいった.

 

―「澪?大丈夫か?」

俺は、少し、時間が経って、落ち着いた時に声をかけた.

「うん….」

澪は、俺の腕の上に頭を置き、体を引っ付かせている.

俺も澪の背中に手を回して、自分の方へと抱き寄せている.

「…あのね….俺、前に聞かれた事….」

「?」

「どうして、食事やベットで寝ないのかって事….」

「ああ….…話してくれるか?」

澪は、優しく微笑みながら頷き、

「俺ね、そいうのするのが、恐かったんだ。」

「恐い?」

「普通の生活みたいにご飯やお風呂とかして、また、一人になった時、一緒にいた人の事思い出すのが恐いんだ.…前に、良くしてくれた人も、俺が居れなくなっちゃって、その人のこと、龍哉みたいにじゃないけど、好きだったから。帰れないのをわかってるのにどうしても思い出すんだ.だから、こんなに寂しくなるんなら、人に誘われても最初から、一人の時と同じ生活を送ればいいと思って.」

「…だからかな?最初に合ったときなんて、無表情で….全く、人に対して関心がないって顔してるように思えたのは…」

「ごめんね。いつ、一人になるのか不安で、出来る限り、龍哉に関わらないようにしてた.」

「…もう、心配要らないから….俺に好きな様に関わっていいし、ずっと、ココに居ていい.

 …もう、放して欲しいって、言っても、放さない.」

ぎゅっと、澪強く抱きしめ、耳元で、囁く.

「…うん。」

澪は、俺に幸せな笑みを見せてくれた。

 

―「澪…。本当に親戚の人に連絡しないのか?」

「別にしなくていいよ。」

「でも、心配だろうし…。」

「あの人達が、心配なんてしないよ。だって、あの人達は俺なんか邪魔なだけだし。警察にも届けてないよ。きっと。」

「……」

「別に、気にしてないよ。俺は、龍哉といれれば。それだけで。」

「澪…。」

俺は、澪を抱きしめて、キスをした。澪は、唇を離すと、幸せそうに俺に向かって微笑み、俺の首筋に顔を摺り寄せてくる。そんな小さな事を、幸せだと思った.                 


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