1月1日。元旦。

朝早くに大荷物でシルバの家へとやって来た雫は、新年の挨拶も早々に居間へと上がり、どうだっ!!とばかりに蓋を開けた。

…黒の艶光りする箱の中には色とりどりのお節料理が誇らしげに入っていてなかなか豪勢な物だった。

雫は母親に

「お節の作り方を教えるなんて……なんだかまるで花嫁修業みたいねぇ〜」

なんて洒落にもならない事をにっこり微笑まれながらも頑張って作ったのだ。これで一つも誉められなかったら捻くれてしまいそうだ。……とりあえず、今でも充分捻くれているっていうのは置いておいてさ……。

まぁ、母さんは、きっと兄貴達の未来の嫁の事でも思い浮かべながら言ったんだろうけどさ…。まだ、妹や弟達は小っさいし、姉ちゃん達は…今はそれどころじゃないって何年も正月にも帰ってこないのばっかだし…。

………いやでも……クリスマスにマフラーの編み方とか聞いちゃったし…あの笑みは…………もしや、意味深な物だったんだろうか…?

 

俺が一人で青くなっている間にシルバは三段ある重箱を丁寧に机の上に並べていく。

ゆっくりと一つ一つ見た後

「自分で作ったのか?」

とちょっとばかり驚いたように眼を見開いたんだ。俺は、ここぞとばかりに胸を張って

「そう!お雑煮とおしるこも作ってきたんだからなっ!」

と言った。……伊達巻が焦げたりして何回かやり直した事はこの際、秘密だ。

俺が次の言葉をじっと待っていると、シルバはふと目元を優しくして

「……大変だったろう?」

って、いつも俺を甘やかす時の顔をした。俺は、それにドキドキと急に心臓の音を大きくしながら

「……クリスマスプレゼントのお礼なんだから……良いんだよっ…」

下伏きになってしまいながらだったけれどそう答えたんだ。………そうなんだ。このお節とかは全部、あの大量なプレゼントのお返しなんだ。……俺は、あんまりお金持ってないし、シルバに良い物とか沢山の物を買ってあげる事は出来ない。……だからせめて、こうしてシルバに少しでも返したかったんだ。

俺がそのままでいると、シルバは暖かい声で

「ありがとう」

って一回、言ってくれた。俺は嬉しくて、堪らずに顔を紅潮させながらぱっと顔を上げたんだ。するとシルバは、

「……実家にはずっと帰ってないし……。今まで市販の物を時々食べたりはしたが…手作りの物を食べるのは久しぶりで嬉しいよ」

と優しい眼でこっちを見てくる。俺は嬉しくて嬉しくて…またまた恥かしさについつい下を向いてしまう。

「……俺もこっちに出てきて一人暮らしするようになってから……二年くらいかな?……お節、食べてなかったんだ。………だから………」

……だから、シルバとどうしてもお祝いしたかった。……暖かいお雑煮とかお節を一緒に突ついて、笑いたかった。

「……ん?」

俺の話しの続きを微笑んだままで即すようにしたけど、俺にはとても口に出来そうになかったから

「た、食べよう!せっかく作ったんだからさ!」

って誤魔化した。……ほんのり紅い頬は誤魔化せなかっただろうけど……

 

それから俺達は二人でお雑煮を温め直してお餅を焼いて……

 

暖かなコタツに向かい合って座り、「新年、明けましておめでとう」っていって清酒で乾杯した。

 

………のは、良かったんだけど……

「ほら、雫?」

綺麗に剥かれた海老が口元へ。

……お、俺にこれを食べろってッ!?

真っ赤な顔でカチンッ!とそれは見事に固まってしまった俺にシルバは厭くまで優しい笑みだ。…俺は、ほんの少し体を後ろにして、首を振った。するとシルバは

「いらないのか?……なら……そうだな。……俺に食べさせてくれないか?」

それ…。と指差したのは数の子。一口台に切ったそれをシルバは食べたいと言う。………本当かよ?

そう思った俺は、まだ赤い顔で睨んだ。シルバはそんな俺を見るとちょっと意地悪なというか、からかうような目線を俺に寄越し

「それが出来たら食べ終わった後、お参りに行って出店なんかを見て廻っても良い。……どうする?」

にやりと笑う。

……シルバの提案は実は結構、心惹かれるものがあった。……だってシルバはあんまり自分から一緒に出かける事を言わないから…。…別に嫌いな訳じゃないらしいんだけどさ…

「…………………出来ない場合は?」

俺は乗せられるのがなんだか癪で聞いてみた。………返って来た返事は……

「……そうだな。とりあえず、布団に直行。その後、雫が作った御汁粉を食べて休憩。その後、朝まで挑戦なんてのはどうだ?」

すらっと楽しそうに言われた。

「………な、なんッ!…………っ!」

ふざけるな〜〜〜ッ!!と大声で叫ばなかった俺を誉めて欲しい。だって、俺が騒いだってシルバは手際よく事に運んでしまうのは、もう何度となく経験した過去で分かっている。でも…恥ずかしいもんは恥ずかしいんだよっ!

「雫、どっちが良い?」

「……………………………………………………食う」

一気に食べてやる!シルバに食べさせてたらそれこそ、もっと食べさせろとか言われて長い間、続けなきゃいけないかもしれない。俺が食べればそれで済むんだ!

と俺は自分に言い聞かせて、口を大きく開いた。

その様子を見たシルバは、クスリと笑うと先ほど剥いた海老……ではなく、俺に欲しいと言った数の子を綺麗な箸遣いでとった後、自分の唇で軽く挟んだ。そして、人差し指でちょいちょいと口元を示す。

………ほ、本気か?

と泣きそうになりながらどうした物かと思ったけれど、これ以上待たせて、シルバのプランを実行されては敵わない。

……俺は身を乗り出してそっと、緊張と例え様もない恥ずかしさに震える唇で、それを啄ばんだ。

 

………キスをするよりも遥かに恥ずかしいぞ、これは。

俺はもう、訳が分からなくなって味わう暇もなくそれを噛み砕いて飲み込んだ。

すると、シルバの腕がするりと上がって俺の顔を自分へと寄せて、深いキスをしてきた。俺は、離れようとしたけれど出来ず…舌を吸い取られ、息が上がるまでそれは許されなかったんだ。……俺が

「………………も、なんだよっ……」

と、絶え絶えに文句を言うと

「……大晦日に寂しい一人寝をしたんだ、これくらい良いだろう?」

と……。

 

 

 

………加えてこれもしっかり言われた。

「お前が頑張ってくれたからな……お前の好きなように過ごすのを優先する。が、夜の時間にも、もちろん付き合ってもらうぞ」

と。

 

 

……………俺がその日どういう風に過ごしたかは…どうか言わせないでくれ。

でも…そう、これだけは言える!!

 

 

 

 

「シルバのバカ野郎〜〜〜〜〜ッ!!」


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シルバと雫は今年も変わらずの一年を迎えました(笑)これからもどうぞ、二人や他のキャラ達をよろしくお願い致します。(そして、サイト&管理人共々、よろしくお願い致しますm(_ _)m)

2006.1.1.戌年。皆様が健康で充実した一年を御過ごしになられますように☆