「……で?何が欲しいんだ?」

「う、う〜ん…」

 

いつもの事ながら、シルバの家にやってきてお茶を飲み、テレビを見ている時だった。クリスマスまであと、二週間ちょっと。町はすでにクリスマスモード一色で、テレビの番組だってそれに外れる事なく、クリスマスケーキやシャンパン、メインディッシュなど特集ばかり。

そして、その特集でクリスマスプレゼントも取り上げてあったのだ。

それを見た雫は、シルバとの話しの流れで今にいたる。

 

「何でそんなに悩むんだ?」

「だ、だって、欲しい物がいっぱいあるからこれっ!ってのがまだ決まらない…」

「………」

「…な、なんだよっ!仕方ないだろ!決まらないもんは決まらないんだから!」

じーっとシルバに見られた雫は、ちょっと恥ずかしそうに声を大きくした。…それにシルバは、軽く溜め息を吐くと

「今悩んでいる物は何があるんだ?」

「え?えーと……カバンと帽子…手袋…暖かいジャケット…枕……あっ、鍋も!」

「…………なぜ鍋?」

「うっ……。………だって…使ってた小鍋が壊れた…」

「…………」

またもや、じーっと……。

「もぉ、なんだよぉっ!悪いかっ!」

「……別に悪くはないが、お前の欲しい物にはあんまり色気が感じられんな」

「イッ!……い、色気ってそんなもんあるか!」

真っ赤になった雫にシルバは溜め息一つ。

「指輪だとか家の鍵だとか……そういう物は思いつかないのか?」

「……………」

「……何で黙るんだ?」

「…………だって…」

「…ん?」

「………欲しい…けど……………………シルバが嫌がったら嫌じゃん

「……はっ?」

あんまりにも小さく、早口で言われたためにシルバには聞こえなかった。雫は、恥ずかしさのために勢い良く立ち上がると

「〜〜〜ッもう!いいっ!クリスマスまでに決めるからそれまで考える!そういうシルバは何が欲しいんだよ!」

「……俺か?俺は…そうだな、手作りの物だな」

「………手作り…?」

想いも寄らなかった注文に雫は驚いた。

「………ちなみに……手作りの何?」

「ん?手作りなら別に何でも良いぞ?」

「………」

雫は、焦っていた。手作り……そりゃ、料理やお菓子だとか簡単な物なら作れるが、食って消えてしまう物というのは味気ない気がする。しかも、どちらかといえばシルバの方が上手い。テーブルや椅子、雑貨なんかも頭の中を過ぎったがシルバの家には立派な物があるし、雑貨で作れるもので男性向きの物、シルバが喜びそうな物なんて思いつかなかった。

…………こ、ここはやっぱり”あれ”?……”あれ”だろう。やっぱり。

そう結論着くと、雫は

「か、帰るっ!」

と早々に帰って行きました。…残されたシルバは驚きながらもクスリと笑いました。

 

 

 

さてさて、待ちに待ったクリスマス。雫は夜になってやってきました。しかし、その顔はなんとも言えない顔で……。

シルバは、それに気づいていたけれど敢えて気づかない振りをして家の中に招き入れました。

「……寒かったろう?鍋の用意をしたから暖まると良い」

「う、うん…ありがとう…」

雫は暖かいコタツに入り、シルバは台所からお茶とお酒、お鍋を持ってきて席に席に付きました。そして、シルバは近くに置いてあった大きな袋と箱を雫に渡しました。

「…えっ!?えっ??」

次々に渡されて雫は驚きの余り、何度もシルバの顔とプレゼントとを見比べてしまいました。

最後には、小さな箱。

「………シ、シルバ??」

「なんだ??」

「………まさか、これ……全部…とか言う?」

「……ん?あとはこれだな」

すっ…と置かれたのは鍵。

それを見て雫は……嬉しい…すごく嬉しい…それは間違いないんだけど…なんか違う。

と、ガックリと頭を垂らしてコタツの縁にコツンとぶつけたのだった。

「どうした?」

不思議そうに聞いてくるシルバに雫は少し拗ねたように

「……こんないっぱいプレゼントくれるなんて聞いてない…」

「………一応、お前からの連絡を待ってはみたんだけどな」

「……へ?…………あっ!」

まさにシマッタ〜ッ!である。プレゼントを何にするかが決まったら教えると言ったのをすっかり忘れていたのである。

「ご、ごめん」

ペコンと頭を下げるとシルバは頭をくしゃくしゃと優しく撫でてくれた。雫は、その表情にホッとするのと同時に家にくる前からチクチクしていた気持ちが強くなってしまった。

「………シルバ…こ、これ…」

おずおずと差し出したのは雫自身がラッピングしたもの。

「……教えてもらってギリギリまで作ったけど上手く出来なかったんだ。ボロボロで下手くそで……」

「………雫、気にするな……」

優しい声音でシルバがそう言い、雫が泣き出しそうに落ち込んでいるのを拭い去るようにシルバは嬉しそうに笑って受け取った。ぺリぺリとラッピングも丁寧に外した後、中から現れたのはマフラー。濃いグリーン色をした暖かい毛糸で、網目の大きさなど所々おかしな所もあったが本当に一生懸命編んだのは良く分かった。

シルバは、すぐに首に巻いてみせた。それを見た雫は後少しで泣いてしまいそうになるのをぐっと耐えた。

「使ってくれなくて良いんだ。……ただ、シルバに渡したくて……ほんとにごめん」

またぺコっと頭を下げた雫にシルバは、ゆっくりと近づいて抱きしめて耳元で

「本当に嬉しいよ」

と心を込めて囁いた。……雫は、ついにポロリと泣き出し、シルバに抱き着いた。

「……雫…」

「………んっ…」

チュっと軽く合わさった唇。離れては触れて、だんだん深くなる。

それを繰り返した後、息が上がった雫はとろんとした瞳でシルバを見上げた。…それを見たシルバは、クスリと笑った後、悪戯めいた口調で言った。

「………腹は減ってないのか?」

ちらりと向けば目の前には、雫の大好きなフグのお鍋が今か今かと待っている。けれど……

 

カチッとコンロの火を止めて雫は、シルバの首に腕を廻してカプリと噛み付いたのだった。

 

 

 

 

それから二人でお風呂に入り、ご飯を食べた後、雫はプレゼントを開けた。

いろいろなプレゼントの中、全部嬉しかったけれど、鍵と指輪は本当に嬉しくて仕方なかった。シンプルな指輪には内側に名前と日付。実は雫にとって初めて薬指に着けた指輪だった。

雫はシルバに笑顔でお礼を言った。

もちろん、シルバに体力をこれでもかというほど奪われてしまった後だけにシルバに背中を預けた格好で…。


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