第一話 ―月夜の恋人―

 

イマは、暑い夏が過ぎ涼しくなり始めた季節だった。

俺は、二七歳でサラリーマンをしている.部長という、歳にはまだ不似合いなところに就いていた.まぁ、部長には、二十六の前半でなったんだが.

今日は、帰りが仕事の相手先の都合で、深夜の2時になった上、雨が強く降っている。いつもなら、どんなに残業となろうと10時には終わらせて家には着いているというのに…。俺は、深い溜め息をつきながら、家路を急いでいた。周りが暗く電灯の光がやけに明るい。

雨の音以外なにもないまるで異空間にいるようにただ一人道を歩いていた。

「―ッ……。」

ふと、いつもなら、気にもそうにない、何か物音がしたように思え、公園の方を向いた。すると、俺は、一瞬、瞬きや呼吸を忘れてしまっていたように思えた。…なぜなら、公園のベンチに傘もささずに一人の男の子が、うずくまっていたからだ。少年は、俺の人影に気が付いたのか顔を上げてこっちを見た.すると、俺は、引き寄せられるようにフラフラと近くまで行った.少年は、近くで見ると色白で髪が光りのせいか、茶色く見えた.

「…どうしてこんな所に?」

「…」

「今日、行くところがないのか?」

―-コクンと1回、少しだけ首が上下したのが分かった。

「俺は、如月龍哉。良かったら、家に来ないか?…家は、マンションだから広くないけど、ココよりは、ましだろうしさ?」

俺は、少しためらいながら手を差し伸べた.

 

―――少年は、何も話さずただ、ずっと、俺の横に着いてきた.そうしているまに家に着き、玄関のドアを開け中にいれた.―――

 

「風呂をいれるから、先にはいれ。」

道を歩いている中、狭い傘の中にいた時に雨のせいで冷えきっていたのだろう、触れた肌で分かっていた.

―少年は、言われるままに俺の渡した服を持って、風呂場へと行った.

しかし、俺は、今までこんな事は、一度もした事がなかった.知らない誰かを家につれて来たり、ましてや、あんな若い、なにか、そう…問題を抱えてそうなやつには、絶対に関わったりなどした事がなかった.暗がりや傘のおかげで、まだ、ちゃんと顔を見ていないが、最初会った時に向けられた目が、普通と違って見えたんだ。どうとは言えないが、今まで部下を幾とどなく育ててきた俺は、なんとく、性格などに、事情のあるやつが分かるようになっていた。まぁ、長くしていても、そういう問題は、難しく、そいつの事を本当に知らないといけないから、まるで、教師にでもなったようだった.

俺は、そんな事を考えながら体を拭き、ビールを飲んでいると、

―ガチャ…。

風呂場から出てきた少年を見て俺は、ビックリした.前のこいつは、あまり風呂に入っていなかったのだろう、薄汚れていたが、綺麗になって、こいつが、どれだけ美少年であるかがわかったのだ.肌の色は、本当に白く、髪と目が、茶色みがかかっていて細く艶びかりし、目は睫毛が長く、パッチリと大きかったのだった.そして、とても男とは思えないほどに細く華奢な体をしていた.

俺がじっと見ていたのが気になったのか俺の方を見返してきた.

俺は、焦って目線をはずして、

「俺は、風呂に入ってくるから好きにしてるといい.寝るなら奥の部屋のベッドを使うといい.」

と言って部屋を後にした。風呂を上がってくると少年は、何もせずにリビングの隅っこの地べたにうずくまって寝ていた.

「なんでこんなとこで…?まるで猫だな….」

俺は、少年を抱えるとベットで寝かして、俺は、リビングにあるソファで寝る事にし、朝になると置き手紙をして、会社へと行った.

「―ン…?」

ボォッと周りを見渡す.ベットを降りて、部屋のドアを開けると誰も居ず、テーブルの上に紙と鍵があった.

―会社に行ってきます.冷蔵庫にあるものは、なんでも食べていいし、でかけるなら、鍵をかけて….―

「……」

―ソファをみると、毛布が一枚かかっていた.その毛布を持って、部屋の隅で寝ることにした.

 

―家に帰ってくると、7時になっていた.家にいるのだろうかと中に入ると、毛布にくるまって寝息をたてていた.

「おい…。起きろ.」

ゆすると、眠たそうに目を開けた.

「どうしてこんな床で寝てるんだ?ベットで寝たらいいだろう?」

「…….」

「ご飯は、ちゃんと食ったのか?」

何も喋らないので、仕方なく俺は、着替えて夕飯のしたくを始めた.一人暮しが長いので家事は必然的に上手くなっていた.すると、少年はずっとただ、こっちを見ていた.

「出来たぞ。」

テーブルに料理を並べならがら言うと、こっちを驚いた風に見た。

「…俺の…?」

初めて少年の声を聞き、振りかえって

「えっ?? そうだけど?」

そう言うと、また、驚いて見せた.

「どうした?嫌いなものがあるのか?」

少年は、首を振り席に着くと、初めは食べずにいたが、俺が食べ出すと少しずつ食べ始めた.

「…冷蔵庫見たけど、なんも減ってなかったぞ.外で食べたのか?」

「…食べてない。」

ぼそっと、小さな声で答えた。

「何も食べてのか!おいおい….そんなんだから、そんなに痩せてるんだぞ.」

「…今までだって夜くらいしか食べてない.それにもう、減らなくなった。」

「それは….―今、何歳だ?それと、聞いてなかったけど名前なんて言うんだ?」

「十八.…森江澪。」

「…澪.十八って….親は?」

「…いない.」

「―亡くなったのか?」

「違う….夜逃げした。」

「夜逃げ?…じゃ…親戚とかは?」

「いるけど….帰りたくない….」

淡々と答える澪がなんというか、出会った時もだが何も感じていないような表情なのが気になったが出会ったばかりだし、話してくれる時を待った方がいいと思った.もちろん、警察に届けた方がいいとも思ったが、出会ったときに惹かれた何かに俺は、止められたのだった.

それから、ずっと澪は出かけずに家にいたが、毎日、3回の食事、風呂、そして、ベットで寝るようにさせた.でも、なぜかいつも言わないと、部屋の地べたで寝ようとしたり、何も食べたりしないのだった.俺は、気になって聞いてみたことがあったが戸惑っていたので、聞かないようにしていた.

そうしているうちに一週間が過ぎようとし、最近は、少しだが表情がでてきたり、自分から話してくるようになった.

「別に、ずっと家に居なくったって出掛けてもいいんだぞ?家に居たって暇だろ?」

そう、家には、テレビとパソコンこそあるが、他には、あまり澪が遊べるようなものはなかった.

「…行くところないし.お金もない.」

「お金なら、少しぐらいやるし….ああ、そうだ、俺の服なんかじゃアレだから,服を買ってきたらどうだ?」

すると、ばっと顔を上げて、

「いい! …いらない.」

「だけど、澪の服は、一着しかないだろ?不便じゃないか?」

そう、言わずにいたが、小柄で華奢な体の澪は、俺の服を着るとまるで、父親の服を中学生くらいの女の子が着ているようだった.

「―そんな事…初めて言われた….いつもお前には、これで十分だって….前に親がいたときに欲しい物があるって言ったらそう言って怒って、殴られた。」

「―えらく、厳しい親だったんだなァ.でも、殴るなんて厳しすぎだろう?」

「違う、親戚の奴らも、今まで、そう言うか、何も言わないかだったんだ。…そんな事言うのアンタが初めてなんだ.」

 澪の話しを聞いていると、わかってきた事がある.それは、親が出ていったのは、もう2年ほど前で母方の親戚に引き取られたそうだ.高校は、親戚の人は、行ってもいいとの事だったが、すぐに辞めて、親戚の家を出て(家出をし)、アルバイトをしてその金で公園や駅などで暮らしていたようだ.また、俺のように家に誘ったやつの家にも泊まっていたようだ。…そして、澪が言うには、そう奴らの大半は体目的で、べたべた触られるのが気持ち悪くて、そういう奴に合うと殴って必死に逃げてきていたそうだ.

…最初、澪は俺もそうだと思っていたようだ.俺は、同性愛というのを別に反対や差別をするつもりはない.実際、俺はそういうのに何度か関わった事があった.(といっても、相手に告白やらのアプローチをされたくらいだが。)まぁ、とにかく、俺は澪と会った時そういう気は、なかった。自分でも、みかえりの無い事は今までしたことが無いに等しい俺にしては、珍しい事だと思った.

 

―龍哉は、俺に優しい….会って、そんなにたってないけど、よくわかる.今までの奴らとは、全然違って、殴ったりなんて、絶対しないし、話しも聞いてくれる.…最近、いつのまにか想ってる.

 

…ずっとココに居たい….龍哉と一緒に.もっと、沢山、近くに居て何でも知りたいって….

 

―次の日、俺には信じられない事が起こったのだ―


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