March 30, 2004

バイラル・ライセンス

Daniel Brookshierの

Peer-to-Peer, JXTA, and Making a Lot of Money with Virul Marketing

にネットワーク・アプリケーションのViral Licenseというアイデアが披露されていた。
再配布可能なライセンスを3コピーとか5コピーまとめて売るパッケージだけにして、シングル・ライセンスでは売らないというものだ。ひとりの客をみつけたら、あとは知り合いの4人にそのソフトウェアを配ってくれる。プレゼントされた側としても、無償ならインストールして使ってみようというバリアも低くなる。使ってみて便利なら、追加のライセンスを購入して自分がコミュニケートしたい相手に配る。あとはsmall world仮説のとおり。うまくいけば瞬く間にマーケットを制することができる。

まさしく、バイラル・マーケティングのお手本みたいなやり方だ。

HotMail、ICQ、i-mode。1年で1000万ユーザを獲得するのはもはや奇跡ではない(そしてP2Pファイル交換やソーシャル・ネットワークでも遠くないうちに勝者が明らかになるだろう)。
いや、そういった事例が増加してきているような気がする。もちろん、市場を制するゴリラが出現すれば、はるかに多くのプレイヤーがその踏み台になっている。ゴリラにやられないためには、こちらもゴリラになって対抗するか、ゴリラの来ないニッチで生き延びるしかない(モンキー戦略)。ちなみに、ゴリラが出現しやすいのは、アプリケーション分野よりもスイッチング・コストの高いプラットフォーム分野である。

バイラル・ライセンスには無償ライセンスのソフトウェアとどう競争するかという問題が残る。金を出して買ったひとには頑張って知人に配るという動機はあるが、それ以外は無償のライセンスでも変わらない。なによりGPLこそ究極のバイラル・ライセンスではないだろうか。ビル・ゲイツはGPLのことをウィルスやパックマンになぞらえたが、それがGPLの普及方式のことをいっているのならばその認識は正しい(いわゆる悪意あるコンピュータ・ウィルスを印象づけるように故意にミスリードしているのだろうが)。

じつはGPLは進化的に安定な戦略(ESS)ではないかと思っている。この戦略=ライセンスが普及すれば、他の戦略はマーケットに侵入するのは難しくなるというものだ。ソースコードが流通せず、各所で改良が行なわれることのないプロプラエタリ・ライセンスのソフトウェアは進化のスピードで劣る。より制限のすくないBSDライセンスなどはフリーライダーの侵入を許す。GPLを考え出したRMSは天才かもしれない。

RMSとライナスにノーベル平和賞を!

そして、この文はもちろんメタミーム(ミームについてのミーム)である。

As part of your social network, you now know who I am and how I think. Ideas are infectious. Pass this one on and tell your friends that Daniel says, hi.

Daniel Brookshierの論点の後半を大いにはしょって紹介してしまい、その後勝手なことをいろいろ書いたが、そもそもミームとはそんなもんである。別に今西論者ではないが、「拡がるものは拡がる」のである。このブログでは(主として)そういったメカニズムや事例について考えていきたい。

Posted by meta-o at 12:31 AM | Comments (0) | TrackBack