第41回建築士会全国大会 奈良大会 第1分科会「生きつづける歴史のまち」 会場:奈良県公会堂

奈良町まちづくり物語

上嶋晴久  (社)奈良まちづくりセンター理事

 奈良町は約1300年前、平城京の外京として建設された場所で、街区割りは当時の条坊制のなごりを残し、
伝統的町家による町並みを形成しており、世界文化遺産に登録される元興寺のバッファゾーンとしても位置づけ
られる我が国最古の生き続ける歴史都市である。  奈良町でのまちづくりの発端を作ったのは、1979年
に設立された奈良地域社会研究会、後の(社)奈良まちづくりセンターである。このころ奈良町を南北に分断
する都市計画道路事業が進行しつつあり、地域の変貌を危惧した奈良まちづくりセンターは、トヨタ財団の助成
を受け「歴史的街区における都市計画道路のあり方と住民による町並協定推進に関する研究」を発表する。
 1989年に奈良市より委託を受け提案した「奈良町博物館都市構想」は奈良町のまちづくりの基本的な方向
を決定づけた構想であり、後に行政施策として「ならまち賑わい構想」として実施され、格子の家、音声館、
写真美術館等の公共施設の整備がなされることになる。 民間では、奈良オリエント館、1995年に完成した
奈良まちづくりセンターの活動拠点である奈良町物語館、あしびの郷等をはじめ、奈良市の補助制度を含む景観
行政の効果もあり、町家を改修し、個性的で魅力ある施設や店舗として活用する動きが活発化している。
 このように官民一体となったまちづくりを推進されており、円滑なまちづくりのためには行政と住民の橋渡し役
としてのNPOの役割がますます重要になるだろう。 

建築士 1999.2 P27