七つの砦 紹介と感想

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ジェラルディン=レイチェル=ハリス作のヤングアダルトファンタジー、 『七つの砦』(創元推理文庫)を復刊してもらおうと 復刊ドットコムでの リクエスト投票を応援するために作った、内容紹介と、 未訳の4巻の粗筋と感想です。

内容紹介
■データ的なこと。総タイトルは「七つの砦」、各巻タイトルは「ガルキスの王子」「風の子供達」「死の王国」です。 原題も日本語訳と同じ。未訳の4巻は“THE SEVENTH GATE”。 4巻が英国マクミラン社から発行されたのは1983年?なので、だいぶ昔の作品ですね。 日本での発行は1巻が1991年初版です。

■あらまし。
“静かなるゼルディン”と呼ばれる神と、人間の女イマルコとが結ばれ、 その子孫がガルキスの地を治める皇族(神孫)となった――というのが、 主人公達の信仰、というか基盤。 神孫の血を引く者は紫の瞳を持ち、特別な力を持つと信じられています。
 今、ガルキス帝国は長い繁栄の末の退廃期。 南にある五大王国は最近ついに同盟を結び、 ガルキスに本格的な侵攻をかけてきそうな気配。 なのに皇族は権力争いに汲々とし、 皇帝は最愛の妻を失って政務も人生も投げてしまって、 半分狂っていると噂されている始末。
 そんな中、主人公ケリシュ=ロ=ターン第三王子は大司教に諭され、 伝説の“救いの君”を見出す旅に出ます。 “救いの君”を幽閉する扉は七枚。それぞれの鍵は七人の魔人(sorcerer) が所持しており、それによって魔人は不老となっています。 ケリシュは彼らからすべての鍵を手に入れなければなりません。
 道連れは、異母兄にして護衛のフォロルキン一人。 ケリシュはガルキスから出たこともなく、武器は短剣さえまともに扱えないし、 甘やかされて我儘で短気でやたらプライドが高い17歳の少年だというのに、 果たして使命をまっとう出来るのか――。
 
■この作品の魅力。
なんと言っても、色彩豊かで実在感溢れる世界の描写でしょう。 紫と金を基調にした黄金の都ガルキスの神秘的かつ華麗な雰囲気、 エーゲ海の小島を思わせる色とりどりの花と果物と光に満ちたター・リノン、 両岸を緑に覆われ、濁った川から立ち上る湿気と羽虫の音まで聞こえてきそうなラン・ピン・フライア。 岩と雪のター・ザルマー、広々としたエランダーシュの平原に、 呪われた黒い海に囲まれる死の王国。 行く先々で風景が変わり、それぞれの場所に歴史があると感じられ、 独特の動植物や食べ物が登場するので、まったく飽きません。
それにもうひとつ、鍵を手に入れるための方法が、決して単純な戦闘ではないこと。 砦に入るまでが大抵一苦労だし、一人一人の魔人に対して考えたり説得したりと、 7回も同じ事をするウンザリ感がありません。
主人公が第三王子ということもあって、政治も多少かかわってきますが、 それよりは個人的なドラマの色が強いでしょうか。 そんなところも、ありきたりなロイヤルファンタジーにならなくて良いですね。

■地理と旅の道筋。
地中海を思い浮かべて下さい。大雑把に言って、シリア辺りから船出し、 イタリアの長靴の先っぽとシチリア島を通り、長靴の付け根から上陸してスイスの山中まで北上した後、 内陸を移動してフランス・スペインを横切ってモロッコに渡り、 そこから船で北アフリカ沿岸をかすめてエジプト辺りに上陸、陸路でサウジに到着、 というのがケリシュの全旅程です。もちろん地形や気候植生は色々違いますが(^^;
 以降、あらすじの文中にイタリア、スイス、などと書いているのは位置関係を示すための便宜的な呼び名で、 作中の地名や地形とは異なることをご了承下さい。

 では、3巻まで既読の方は原書版4巻の感想へどうぞ。
 未読の方は下に粗筋があります。


3巻までのあらすじ  ※ネタバレしてます。図書館等で借りて読めるなら是非そちらで!
■では3巻分、順を追って粗筋説明。まず1巻。
 序盤はしばらくガルキス内部の話が続きます。信仰の内容や皇族独特の儀式、 現在の状況と皇位周辺の人々についてのエピソード。 ケリシュは美を愛し音楽と絵画を得意とする繊細な坊ちゃんで、 フォロルキンを信頼し大切に思いながらも、子供扱いされることに反発しているお年頃。 ムカつく従兄にフォロルキンを侮辱されて決闘を挑んだはいいけど負けてしまうわ、 それを当のフォロルキンに気遣われて頭にきて、八つ当たりで怪我させてしまうわ (本末転倒)アイタタタ。
 皇族の関係も出てきます。ややこしいので詳細は省きますが、第二夫人で皇太子の母リモカと、 皇帝の娘(妾腹)でかつ甥の妻でもあるジリンデラとが、 次代皇帝の後ろ盾として権力を握ろうと、女の戦いを繰り広げてます。
 そんなすったもんだ宮廷を後にしてこっそり船出するケリシュとフォロルキン。 のっけから海賊に襲われたってのにケリシュは「ゼルディンがお守りくださる」 とか言って防戦の邪魔してフォロルキンに船倉に蹴り込まれたりしつつ、 なんとか最初の目的地、イタリア半島の先っぽター・リノンへ。
 第一の魔人エルマンディスは芸術を愛する平和主義の温厚な人。 シチリア島に住む第二の魔人はその弟でエランデロワ、善悪の道理もわかっていない駄々っ子。 エルマンディスには必死の説得を、 エランデロワに対しては危険な綱渡りで舌先三寸の騙しを使い、 ケリシュは2人から鍵を手に入れます。 ここでケリシュはエルマンディスから、 今後訪れる魔人たちの所へ一緒に連れて行って欲しい、 と頼まれてギジャボルゴという男を引き受けます。これがとんでもなく醜男で、 辛酸を舐めてきたせいで強烈な毒舌家。彼は彼で魔人に何やら頼み事があるのだそうな。 はじめケリシュは彼の醜さを笑い、ギジャボルゴはお返しに臓腑をえぐる言葉を投げつけて、関係は最悪。 でも約束は約束なので、仕方なく三人揃って旅をします。

■2巻。
 次の目的地はスイス。網目のように多数の川が走る湿地ランピンフライアに上陸し、 船でひたすら上流を目指します。可愛い猫を拾ったのはめっけもんにしても、 殺人蜂は襲うわ水蛇には出くわすわ船長には迫られるわ(……)散々な旅に。 この途中ケリシュは、水蛇狩りに参加したフォロルキンの心に触れ、 その意識と同調してちょっとした操作を出来ると発見し、彼の危機を救います。 本人はもちろん、もやしっ子のケリシュに救われたなんて気付いてないし、 ケリシュも慮って黙っています。また、ギジャボルゴが毒舌だけでなく、 楽器演奏と芸術を見る目に長けていることも判明。
 なんとか災難を逃れて北の果てに上陸した後は、 鬼軍曹フォロルキンの指揮でひたすら歩け歩け。何やら不気味な古代の遺跡 “禁じられた丘”に寒気を感じつつ通り過ぎ、食糧が尽きても更に北へ、 しまいに吹雪の中で行き倒れるも、目覚めたら魔人の城ター・ザルマーでした。
 三人目の魔人はセンダーカ。かつて第四の魔人サロックの妻だったけれど、 意地の張り合いから別れてしまい、二人の娘はサロックの元で死んだとか。 二人はお互い、相手が鍵を手放さない限り二度と会わないと決めているというので、 ケリシュは鍵を預けてくれと迫ります。鍵の事を明かさずに、 サロックが鍵を手放して彼女の元に戻るようにさせる、出来なければ鍵を返しに来る、 と約束して、ようやくケリシュは3本目の鍵を手に入れます。
 サロックの城へ行くため、山から下りて広大な平原を行く三人。 フランスことエランダーシュ、“風の子供たち”が住まう土地です。 平原インディアンのイメージ。ケリシュの母親がここの出身なので、 伯父のタイエブが統べる一族に、無理やり引き入れられてしまいます。 敵部族と戦うのに力を貸してくれ、と。 ここでケリシュは従妹のグエラスに出会います。 部族の一員として与えられた立場は、ケリシュがシャーマンでギジャボルゴは奴隷。 他方フォロルキンは戦士として歓迎され、一族の戦にも加わり、 グエラスはそんな彼にすっかり夢中でケリシュには見向きもしません。 嫉妬したケリシュはフォロルキンに対して、かつて水蛇と戦った時も先日の戦いでも、 僕が密かに力を貸して助けてやったんだ、と暴露してしまい、しかもその上、 一族の儀式を利用して彼に戦いを挑み、危うく殺しかけてしまいます。
 けれどもフォロルキンはケリシュを赦し(寛容というより鈍感さによる部分が大きい…(苦笑))、 このまま部族の中にいるわけにはいかないと脱走を企てます。 この時グエラスも、一族を捨てても彼らと共に行くことを決意。 なんとか追っ手を振り切って、スペイン――セルド女王国に辿り着きます。

■3巻。
 セルド女王国では女王ペラミーラの歓待を受けます。女王は皇太子妃ケリンダの姉。 ケリシュはケリンダとは仲が良かったので、ケリンダから姉への言葉を伝えます。 一方ペラミーラから知らされたのは、皇帝が死んだとの知らせ。 旅を急がねばならないとケリシュは焦ります。 フォロルキンはペラミーラの大人の魅力に参ってしまって、 すっかり視線が釘付け、なんて場面もあったり(笑)。
 セルド近くの“赤の荒野”に、第四の魔人サロックは広大な迷路を造っています。 悪夢のような生き物たちの攻撃や、幻影の罠を神孫の視力で切り抜け、 ケリシュはどうにかサロックの元に辿り着くと、説得して鍵を手放させ、 センダーカとの和解を促します。ケリシュは一旦セルドに戻りますが、そこでいまや皇太后となったリモカの放った刺客に襲われます。
 かろうじてセルドを発ち、ジブラルタル海峡に浮かぶ島国ガノスへ。ここで王子ヘムコスから、 第五の魔人シュビヤシュの“死の王国”ロアクへ行く方法を教わります。 青い流木から造られた特別な船が必要で、それがなければ近付くことも出来ません。 シュビヤシュがかつて“禁じられた丘”の遺跡から盗んだ力をふるったがために、 ロアクは死の国となったからです。シュビヤシュ自身は死んでいますが、 魂が死を認めず、己の王国にしがみついているので、ロアクの土地も死ぬことが出来ず、 よって再生もしないというわけ。 船の建造中にヘムコスは客人に洞窟壁画を見せます。傷みが激しいものの、 明らかにその絵は、ジンダーには元々、翼のある不思議な生き物が住んでいたのであり、 今の人々は西の大海を越えた彼方から船で辿り着いたのだと示していました。
 さていよいよロアクへ。普通の人間にはただの廃墟、でもケリシュの目には恐ろしい死者達の姿が見えています。 城に入り、シュビヤシュと対峙するケリシュ。旅立ちの時に大司教から貰った“ゼルディンの石”が光を放ち、 シュビヤシュを倒しますが、そのために石を握っていたケリシュの左手は曲がって動かなくなってしまいます。
 死を受容し、再生を始めたロアクを後にして、四人は次の目的地ター・メリドンへ向かいます。 ここにいるのは偏屈学者気質の魔人ヴェスナー。花ひとつ観察するのだって人の一生分の時間がかかるんだ、 鍵がなければ何も出来やしない、と言い張りますが、それはそれとして彼は四人をもてなします。 砦にはありとあらゆる書物があり、変わった生き物もいるし、 ヴェスナーの手伝いをする学者達も親切だしで、ケリシュ以外の三人は滞在を楽しみますが、 ケリシュはすっかりどん底気分。フォロルキンとグエラスはどんどん仲良くなるし、 使命は失敗しそうだし、そもそもこの使命は本当に正しいのか分からなくなる一方だし。 そんなところへギジャボルゴがヒントをくれたお陰で、 ケリシュはやっと、ヴェスナーの不老ゆえの弱点に気付き、 それを指摘することで鍵を手に入れます。
残るは一人、サウジことジェンゼの密林に住まうテブリーガ。 ヴェスナーは、密林に入る道を見つけたらそれをずっと辿れ、道から決して外れるな、 空き地に注意しろ、などなど忠告を山ほど与えてケリシュたちを送り出します。 四人はついでにヴェスナーの所にいた一人をター・リノンまで乗船させ、 さて後は海を横切ってガルキス領内に戻って南下するだけだ、 というところで……海賊に捕われましたとさ、以下次号。(えー!?)

>>いざ、原書版4巻へ……!!

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