読書記録(内容紹介)

  CONTENTS
・七つの砦(FT/ジェラルディン・R・ハリス)
・氷の城の乙女(FT/フィリス・アイゼンシュタイン)
・戦士志願(SF/ロイス・M・ビジョルド)
・惑星オネイロスの伝説(SF/川又千秋)
・亜愛一郎三部作(ミステリ/泡坂妻夫)
・まことに残念ですが…〜不朽の名作への『不採用通知』160選〜(その他/アンドレ・バーナード)
・魔法事典(資料/山北篤)

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七つの砦 (「ガルキスの王子」「風の子供達」「死の王国」)
◆ジェラルディン=R=ハリス 創元推理文庫◆

 4部作なのに最終部が訳出されていない悲しい話。
 異世界ファンタジーで、主人公ケリシュ王子が世界(と言うか国?)を救うため、 七つの扉の向こうに閉じこめられているという「救いの君」を解放する使命を負って、 魔人たちから扉の鍵を渡して貰おうと旅立ちます。 が、鍵は魔人たちに不老不死を与える力の源であるし、魔人の方はそれぞれの思惑や 理想があって鍵を所持しているため、おいそれと手放してはくれません。 どうにかこうにか説得したり、時には危険な対決さえして、手に入れて行くのですが……。
 実は最終部が訳されていないので、結末が分からない!
 知人にコピーしてもらった原文をなんとか読み終えましたが、幾分不明瞭なところがあって(^^;  ちゃんとした訳が出てくれないかなぁと、復刊ドットコムでの リクエスト投票に一縷の希望をかけております。 ちなみに4巻の粗筋と感想はこちらに。
 この話は人物もなかなか興味深い(ケリシュは甘やかされた王子様そのものだし、 護衛兼お守り? の義兄はお人好しだけど鈍感、旅の道連れになった訳ありげな醜男は 超毒舌家、等々)のですが、主人公らの行く先々の舞台世界がなんとも実在感を伴って いるのです。
 慣習や自然条件、人々の考え方等々、いかにも実際にありそうな国々。 美しい花や生き物、また危険なものや醜悪なものも、この世界にはひしめいています。 読むだけでこの世界の空気を呼吸するような気がする、そんな作品。

 
氷の城の乙女(上下)
◆フィリス・アイゼンシュタイン  ハヤカワFT文庫(1997)◆

 前作「妖魔の騎士」では主人公の魔法使い少年が、父親でもあり師でもある悪徳魔法使いを倒し、 その下でこき使われていた精霊たちを解放するまでが書かれていました。
 この世界では、「金属の魔法使い」が精霊を呼び出し、自作の指輪にその名を刻むことで彼らを支配し、 使役できることになっています。精霊は指輪の主が自由意志によって解放してくれない限り、 魔法使いが死んでもまた別の魔法使いに呼び出されると支配されてしまう、というわけ。
 前作は、「織物の魔女」にプロポーズして断られた師匠が、魔女は自分を敵視していると思いこみ、 彼女の魔法から身を守る金属の肌着を作ろうとするところから始まります。完成までの間 彼女の魔力を殺いでおくため、使い魔である火の精霊ギルドラムに自分の精子を授け、 ギルは若い騎士に化けて魔女に近づいて役目を果たします。こうして生まれたのが主人公。
 そこまでは師匠の思惑通りだったものの、当のギルが魔女にすっかり惚れ込んでしまって、 主を憎むようになってしまったわけです。
 で、結局、師匠が死に、彼が使っていた精霊を主人公が解放し、ギルは魔女と仲良く暮らし ましたとさ……という事になりました(乱暴なまとめ方だ)。
 さて、こっからが本作なんですが(苦笑)、青年になった主人公は日々せっせと精霊を捕まえ ては解放する、という仕事にもたいがい疲れてきており、何か満たされない気持ちを抱いています。 そんな時に、望みを映す鏡に一人の女性が映り、それが気になって彼はなんとか相手を 捜し出すのですが、彼女はなんと魔法使いの娘で、実は父親に魂を抜き取られているらしいと 分かり……あとはお楽しみ(笑)。
 雰囲気としては柔らかく暖かな感じで、物語も人間を描く方に重点が置かれていますので、 私の作品が好きな方ならそこそこ気に入るんじゃないかなぁと思うんですが……。

 
戦士志願
◆ロイス=M=ビジョルド  創元SF文庫(初版は推理文庫)◆

  ヴォルコシガン・シリーズと言われる一連の作品の最初に訳出された本です。以下、 「親愛なるクローン」「無限の境界」「ヴォル・ゲーム」「名誉のかけら」 「バラヤー内乱」「天空の遺産」「ミラーダンス」……と続々刊行。
 歴史の要素をそれとわからないほどに上手く盛り込んだ、上質のSFです。 田中芳樹作品から作者の毒を抜いて(笑)、R=アスプリン(「銀河お騒がせ中隊」等)の スパイスを振ったようなもの……というところでしょうか。
 割と人間模様に焦点を当てた感じですが、といって背景の社会事情がいい加減というのでもなく、 読み応えはしっかりあります。とりあえず第一作のこの作品では、 バラヤー帝国軍士官学校の入試に実技で落ちた少年マイルズ(母親が妊娠中に毒ガスを吸わされた為、 生まれつき骨が脆弱なのが敗因)が、新たな進路を決めかねてちょっと試しにやってみようとした事から、 成り行きとアクシデントの連続で嘘をつきまくっている間に、その嘘が本当になって傭兵艦隊の 提督になる、といった事が描かれています。すごく大雑把に言うと、ですが。
 勿論その成り行きというのも決してコメディ調のものではないし、 合間にマイルズの初恋(ご多分に漏れず実らない)、祖国での政治的陰謀、などが盛り込まれています。 起死回生の機転と機知がてんこもり。気がつけば 『ネイスミス大好きっ子』になっていること請け合いです。
ちなみに私はマイルズの父上に惚れ込んでいる……(笑) その父上と母上 (これまたグレートなお人である)の出会い……つまり時間的には一番最初の 話が「名誉のかけら」です。

 
惑星オネイロスの伝説
◆川又千秋 新潮文庫◆

 バスの待合所で暇つぶしになんとなく買った薄くてボロくなった本(笑)。
 結構幻想的なタイプの話です。夢の中で日の大半を過ごす文化(?)の惑星オネイロスに 降り立った、地球人の宇宙船メビウス号の乗組員が出会う様々な出来事。
 川又氏は割とハードなSFを書かれるようで、他の作品は読んでいないんですが、 これはハードSFが苦手な人も、ハードな方が好きという人にも、 そしてまた幻想文学が好きな人にも楽しめる、そんな作品だと思います。 ただ古いから手にはいるかどうか……1987年の刊行です。

 
亜愛一郎三部作 (「亜愛一郎の狼狽」「亜愛一郎の転倒」「亜愛一郎の逃亡」)
◆泡坂妻夫 創元推理文庫◆

 ごくごく短い話がつまった、おいしいミステリ短編集。 名作「ブラウン神父」シリーズが大好きというだけあって、似た雰囲気です。
 亜が姓、愛一郎が名の青年は、見てくれは非常に紳士然としていて格好いいのに、 実は間の抜けた性格で、動作が格好悪い(でも実は喧嘩は強い)し、妙な生き物を観察してばかり。 なぜか行く先々で事件に出くわし、ひらめきだけで解決してしまう(笑)というパターンです。
 私はミステリマニアと言うほどではないので、この話がミステリとしてどれほどのランクか、 とかいったことは分かりませんが、気軽に読めるし、ユーモアがあって面白いです。 このシリーズに感化されて「ブラウン神父」の方も図書館で探した私。 (創元推理文庫で新装版が出てます)
 同じ作者の「11枚のとらんぷ」は、奇術をネタにしたミステリです。こちらもなかなか面白いですよ。

 
まことに残念ですが… 〜不朽の名作への『不採用通知』160選〜
◆アンドレ・バーナード 徳間書店 (ハードカバー1600円)◆

 副題にもある通り、様々な「出版断り状」の名文(?)紹介です。 いまや文学史に名を残す数々の名作も、出版されるまでには結構ひどい言葉を浴びせられて いたことが分かります。
 返却用封筒と共に提出したら、本人が家に帰るより早く届けられていた、なんてのはまだいい。 詩の原稿を出したが、返ってきた封筒を開けると一握りの灰がぱらぱらと……、なんてのもあります。 ある作家は断り状でゴミ箱やランプシェードを作り、 ある作家はダイエット効果を兼ねて冷蔵庫のドアに貼っておく。 編集者の方も「私もそろそろこんな因果な商売を辞めて引退したいものだ」などとこぼしたり……。
 編集者たちのすばらしい皮肉のセンスに笑える一方で、 作家が日々面している厳しい状況も見えてこようというものです。 物書き志願者は一度読んでみるのもいいかも。

 
魔法事典
◆山北篤監修 新紀元社(2500円)◆

 様々なファンタジー関係の資料本を出している新紀元社。Truth in Fantasy シリーズは、 私の場合は買っても本棚に納めてしまう事が多いのですが、これはちょっと違いました。 「どうせ小説書くときはオリジナルの魔法体系にするし」と思って、ただ眺めていたのですが、 思い切って買ってみたら予想外に面白いんです。
 特定のジャンルにこだわらず、多彩な内容が詰め込まれていて。
 たとえば「オカルトの事典」などのように、天使といったらAngelについての魔術的な解説ばかりが 述べられている、……のではなく、天使を扱った文学や最近の小説まで紹介している、この嬉しさ。
 ゲームなどで意味は知らないがやたらよく出てくる言葉も、これを読むと色々史実も見えてきて面白いし、 文学などになると内容の要約なども紹介されているので、興味をそそられます。 まさか「ロジャー・ベーコン」の項目に史実のベーコンだけでなく「霜の中の顔」まで紹介されているとは(笑)。
 ひとつの事柄について突っ込んだ知識を得たい人は、ジャンル分けされている他の資料を 当たらなければなりませんが、この本は読み物としても面白いのでおすすめ。 他の専門(?)資料に比べて値段もそう高くないし。


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