「愛しの黒鹿毛」

私は実際のレースに使われたある馬のゼッケンを持っている。

この馬は一度レース直前に暴れて出走取り消し。
次のレースでは騎手を振り落とした。

偉大な父親の名前がついているのはそれだけ期待が高かったのだろうが
彼にとっては人の期待など我関せず。
馬の耳に念仏。


騎手を大怪我させたその後の消息は不明だが、いつまでも私の部屋の壁で無頼を誇示している。
ゼッケンの裏側には形見の黒鹿毛がたくさんついている。

乾杯! じゃじゃ馬。

   「逃した魚は大きい」

 好きな馬が出走してきた。人気は単勝20倍。絶好のねらい目。

 ところがだ、無い。前のレースで負けてしまい資金が無い。

 結果は予想通りの1着2着で、馬連で一万五千円。

 一万円の資金が残っていれば百五十万円になっていた。

 まあ、次回まで競馬会に貸しておくさ。

   「逃した魚は大きい2」

 日ごろ宝くじを買わない俺がなにを思ったか、ドリームジャンボ宝くじを買った。

 ところがだ、無い。何処を探しても無い。

 きっと当たっているはずなのに無くしてし
まった。


  まあ、3億円ぐらいどうってことないや

   「逃した魚は大きい3」

 徹夜で最高傑作が書きあがった。早速投稿しようとした。

   ところがだ、近くに雷が落ち、瞬停になり我がパソコンはダウンした。

 最高傑作は消えてしまった。気がそがれたのでもう書き直す気になれない。

   という訳でベストセラーは陽の目をみなくなった。

 逃した魚は自慢するに限る