間取りと家族

間取りと家族                            熊澤富治雄

少し前は家を建てようと思ったらまず住宅展示場に行くというのが相場だったのだが、最近では少し様相が変わってきたらしい。

らしいというのは、私の会社に来られる人の大半が、インターネットから私の会社のHPにアクセスしてきて訪問される人が多くなってきたからなのです。この傾向は3年位前から始まって、ますます増える傾向にあります。なんだかすごい時代になってきました。

先日、インターネットから若いご夫婦のアクセスがあり、弊社事務所で最初の打ち合わせがありました。その人の人となりを理解する前に、間取の打ち合わせをするのは初めてなのですが、お会いしてからすぐに間取りの打ち合わせになったのです。

「この間取りは他の建築業者さんと一ヶ月にわたりプランを練っており、気に入っているので、このプランで見積もりをして欲しい!」とのこと。しかし、見せていただいたのは1階のプランだけでしたのでお尋ねしたところ、「2世帯住宅なので2階は両親が別に考えている!」とのこと?!

私は唖然としながらも、気に入っているという1階の間取りをなぜ造ったかといいう質問をしたのですが、かえってくる言葉は「夢だから」とか、「広いのが好きなので」ということばかりで現実感がなく、まるで住宅展示場の間取のようなのです。

どこにご夫婦が寝られるのですか?とか、6帖もある玄関は何のため?とか収納は?とか色々な質問をすると少しずつ不機嫌になり、「何故設計士がちゃんとアドバイスしてくれなかったんだ!」と怒り出し、気分が悪くなったからもういいですと言い残し、帰ってしまいました。(この間取は生活する間取ではありませんでした。)

このようなとんでもない間取になってしまうことは、意外に思われるかもしれませんが、住宅メーカーの営業マンとの間取りの打ち合わせをすると、よくあることなのです。

営業マンはお客さんを逃がしてはいけないから、お客さんの言いなりに間取を作るし、お客さんが作った間取を褒めちぎる。

担当の設計士はその間取がだめだとわかっていても、営業マンの成績に響くことがあるので、これまた口を閉ざした貝になる。

間取つくりは本当に難しい。お客さんの希望する間取を作らなければ納得しないし、それがその人にとってだめだとわかっていても、勇気をもって意見することは難しい。

(たいていのお客さんは自分の作った間取をほめてもらいたいし、取り入れてもらいたいものなのだ)

結局、この方は、私が間取を批判したので、「あなたに間取を批判される覚えはない…。」という言葉を残して、途中で怒り出して帰ってしまったのです。

この方の奥様から、後日お礼のメールが届き、「よくぞ、意見を言ってくださいましたと…、あのまま行ったらとんでもない家ができただろう」と書かれていました。

こんな極端な例のお客さんも居た。

娘夫婦と同居の2世帯住宅である。

娘夫婦というのは2世帯住宅の中では比較的うまく行くケースで、親世帯と子世帯が双方で意見を言い易く、文句もいい易いのでうまくいく。それに引き換え、息子夫婦の場合は、お嫁さんが納得しなければ何も進まないし、意見を取り入れなければ、計画そのものが成り立たない。今回のケースは、娘夫婦なので安心していたのだが、打ち合わせのときに気になる言動が見られた。言動といえば大げさなのだが、娘さんとお父さんが、打ち合わせの時に、顔をそむけて話していたのである。

何故、顔をそむけて話すのですか?と聞くわけにも行かないから、そのまま間取の打ち合わせと、予算などをお聞きしていたのだが、結局、長い時間を掛けながらも、最後の打ち合わせは怒鳴り合いのようなことになってしまって、新築して同居ということにはならず、娘夫婦単独の家になった。

同居する家族とはいったいなんなんだろう?

昔はその言葉すらなかった2世帯住宅という言葉が出現してから、家族というものの関係が希薄になり、ただ単に関係のある人たちが同居しているだけの状態になってきている。

昔の家は「田の字」の間取が主だったから、家族のプライバシーなどまるでなく、お嫁さんなども苦労したと思うのだが、気配を感じたり、遠慮したり、協力したり、顔色などはつぶさにわかったと思うのである。色んなことがありながらもそこに生活する人たちは干渉しあったり、助け合ったりしていて、2世代、3世代が同居する家族であった。

玄関、浴室、キッチン、洗面、色々なものがふたつにある2世帯住宅は、どうしても間取が狭くなって、親世帯は隔離されたような状態になる。どうして玄関をひとつにしないのだろう、どうして浴室をふたつ造るのだろう?もう少し話し合えば、ひとつに出来ると思うし、同じ予算で広い間取も出来るのにと思うことがある。

しかし、親世帯も家族に関係なく気ままに暮らしたいと思う人も増えてきて来たり、子世帯に遠慮して孤立化する傾向にあって、家族とは名ばかりの連棟という状況になってきてしまっている。

もう少し時間を掛けて、家を造るということ、一緒に住むということ、将来的なこと、言いにくいこと、色々なことを話して欲しいと思う。

最近では、単世帯も子と親とが孤立化してしまう間取が多くなってしまって、家族間のコミニュケーションがなくなるような間取になってしまっている。田の字プランでないにしても、もっと家族が団欒をもてるような間取になって欲しいと願っているのだが、なかなかうまくいかない。

家づくりを進める時、たいていの人は住宅設備や内外装の仕上げ、価格や補修のことは気に掛けても、間取は以外に簡単に決めてしまう。もちろん前述の事柄は家づくりの一部なので大切なことではあるが、間取は一番大事なものなのだ。

間取は家族の関係を作ってしまうので、間取を考えるときには本当によく考えて欲しいと思う。使わないリビングよりも、家族団らんを育む堀コタツや大きな食卓テーブル、それこそみんなの顔の見える家を造っていきたいものだ。

現代の間取つくりが、昔の「田の字プラン」に戻ることはもうないのと思うのだが、家族の関係は昔のようになって欲しいというのが私の思いなのです。

有限会社 夢職人    ホームページは     www.yumesyokunin.co.jp

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