技術士の独立について 雑感
2005年の9月末日をもって18年半勤めた建設コンサルタントを退社した。
そして、2006年1月にフォレスト エンジニアリングとの名称で、コンサルタント事務所を開設した。
まだ、独立後、時間はたっていないが、現時点での技術士の独立について、思うところを綴りたい。
土木技術者がコンサルタントとして個人で独立するケースとして、技術士事務所を立ち上げる場合がある。
そのほとんどは、会社員時代に技術士を取得し、その後、退職して、オフィスを構えることになると思う。
学生がいきなり社会に出るときに、技術士事務所を設立するのは現状では不可能である。
ある書籍では、若い頃から独立した技術士は現在、全国で約200名と書かれている。
200名は、建設部門以外もすべて含めての数字であるから、建設部門の独立した技術士は約100名ほどだろうか。
案外、少ないなと思う。この書籍には、「若い頃から」と明記されているが、
これは、定年退職後に独立した技術士を含まない、と勝手に解釈している。
独立した技術士の事務所には、従事者は1名から、多くても5名程度ではないだろうか。
その後、安定的に事務所を運営し、さらに多くの従事者で構成される場合もあるだろう。
建設業界に限定した場合、このような人員構成で、受注できる業務について考えてみる。
クライアントは、コンサルタント、建設業、メーカー、官公庁、団体(財団法人やNPO等)、
大学・研究機関、その他(業界以外も含む)いろいろあると思う。
少人数なので、マンパワーの必要な設計業務は、業務が輻輳すると、対応が結構大変ではないかと危惧する。
計画系の業務は、それなりに対応できそうな感じもする。独立した技術士事務所の業務形態は、
設計業務ではなくコンサルティング業務が良いように思う。
また、官公庁からの直接受注は、指名競争入札を経たスタイルが主流であることから、
独立後に少なくとも数年を経ないと困難だろう。
建設コンサルタント登録や、役所への指名願い等の手続きが必要なためである。
実績重視の時代が今なお続いている。
現状では、上記のような業務形態になるものと予想されるが、今後は、次のような将来展望は持てるのではないか。
すなわち、時代が変わり、社会が変わり、経済が変わっていく中で、
建設業界のしくみも変わっていかざるを得ないのでは、と期待をこめて予測している。
建設コンサルタントに期待される技術は、今後ますます高まることは明らかであり、
その技術の保持者は、企業ではなく、個人である。企業は、業務の受注システムにおいて、
大きな役割を果たしているが、コンサルティングの中身に関しては、個人技術に負うところが大きい。
誤解されるのを承知で極論すれば、大手の建設コンサルタントに発注すれば、
最良のサービスが提供される訳ではなく、社内の誰が担当するかで、
サービスの良し悪しが定まってしまう状況に既に突入している。
このような状況の中で、独立した技術士が孤軍奮闘する時代も、これから十数年の間には終焉を迎えると思う。
実力ある技術者の協働やチームワークの発揮により、建設業界(もっと大きな意味での社会資本整備)の中で、
技術者個人が表に出て行ける時代が来ることを願う。
建設コンサルタンツ協会の「改革宣言」では、2020年頃までに建設コンサルタントの構造改革が必ず達成されると予測している。
企業の形態や役割が、大変化すると自ら宣言している。
残念ながら、独立した技術士の展望については、触れられていないが。
私自身、まだ、確固たる道筋を描くことが出来ない状態であるが、
今は毎日、自身の技術力を高める努力を続けていこうと考えている。
そして、ひとたび、チャンスの到来を迎えれば、すぐにアクション開始できるように準備したいと思う。