優：失礼な！

伍：・・・イヤな、最近の女子大生ってな、一人暮ししとぉワリには、洗いモン下手っぴぃやなぁと思ぉてな。

優：一部を見て、全部を見たって云い方せんといてぇよ。

伍：せやかてなぁ・・・ま、家庭用の洗いモンの仕方と業務用とはちゃうさかいになぁ・・・しゃぁないんかなぁ？

優：違うって・・・どう違うのん？

伍：ん？
まず違うんはズバリその『量』やな。短時間で、より的確に汚れの場所をチェックして、キッチリ落とさなあかへんさかいに。
しかも汚れの種類の違うモンが混ざって下げられてくるさかい、余計に大変なんや。

優：そりゃそうね。

伍：それだけやないで？
例えば、ビールとかのグラスとてんぷらの皿とかが一緒に帰ってきたら、ちゃんと洗う順番考えへんと、大変なコトになるんや。

優：例えば？

伍：油モン洗った後に、そのスポンジやらタワシやらで、グラス洗ってみぃ？
グラス油まみれで臭ぁて飲めへんようになるやろが。

優：あ、そっか。

伍：洗うスポンジとか、別にすりゃ問題ないけどな、常識的に云ぅて、グラスとか湯のみとか、直接口つける系のモンは、真っ先に洗うモンや。
特に量が多い洗いモンやと、割れやすいグラス系から先に洗ってったらえぇな。
ゴチャゴチャ溜まりだすと、割れやすいさかいに。

優：フムフム。

伍：で、そのグラスすすぐ時、シンクに次の洗いモン溜めといて、ついでに『一番すすぎ』しとくんや。

優：『一番すすぎ』？

伍：器やらの汚れを、洗う前にあらかじめ落としておくんや、ある程度な。
そうせんと、スポンジ汚れるやろ？
汚れたスポンジで洗っても、器キレイにならへんがな。
ちなみに、油モン一緒に浸けたらアカンで。他のモンまで油ベタベタになるさかい。

優：はぁ・・・細かいんやね。

伍：アホ、常識や。

優：う・・・

伍：で、グラス乾かす間にシンクのモン、洗うやろ？
その洗ったモンすすぐころに、グラス拭かずに片付けるねん。

優：拭かへんの？

伍：拭いたら布巾の跡残るさかいにな。
よぉバーテンとかがグラスキュッキュキュッキュ拭いとるやろ？
あれは洗った後拭いた跡を、よぉ乾いたきれいな布巾で乾拭きしとんねん。
ま、これは業務用での話や。家庭では気にせんでえぇやろ。

優：ナルホド。で？

伍：グラスのけたら場所空くわな？
そしたら次の洗いモンすすいで置いてくんや。
その繰り返し。

優：・・・・・・。

伍：ちなみにな、洗いモンには、年中通して湯を使ぉた方がえぇねん。
何でか解るか？

優：その方が汚れ落ちやすいからっしょ？

伍：せやろ？
そんなコトですら、最近の女子大生解っとらへんねん。
かなわんわぁ・・・小学校の家庭科で習うやろぅに・・・ガッコの勉強役に立てへんで、どないすんねん！？
受験勉強だけが勉強ちゃうっちゅうねん。
それに受験の為の勉強かて、十分社会に出て役に立つ機会はあるっちゅうねん！

優：でも数学とか物理なんか、社会で役に立つなん、思われへんやんか。

伍：アホか。
えぇか？　今まで云うてたこの『洗いモン』かて、思いっきり物理学の応用やねんぞ？

優：ウソぉ？

伍：ウソちゃうっちゅうねん。
さっき云うてた『お湯』な、アレ使うんは、その方が洗ったモンの乾燥が速いからや。
何でか解るか？

優：？

伍：日向の水溜りと日陰の水溜り、どっちが早いコト乾く？　暖かい日向やろが？
それと一緒や・・・物理で習うやろ？　『気化熱』ちゅうねん、思い出せ。

優：『物質は蒸発するとき、周囲の熱を奪う』ってヤツ・・・だっけ？
汗かくと、身体が冷えるってヤツよね？

伍：せや。それの逆を考えんねん。奪う熱がなかったら、物質は蒸発でけへんっちゅうこっちゃろ？
せやったら、その『熱』与えたったら物質・・・この場合は洗いモンの水気や、蒸発してくれるがな。

優：あ、そうか。お湯使ったら、器があったかくなるから・・・

伍：水気自体も熱を帯びるさかいに効果倍増や。

優：せやけど、台所で物理学なんて、普通思い出さへんって（ＴｗＴ）

伍：別に教科書思い出せとか云うてへんねん。ただ『お湯の方が早く乾燥する』って覚えといたらえぇねんて。
それを『なんでですか？』とか間抜けな質問されるから、学生に理解しやすいように、物理学持ち出して説明しとるけど・・・
器が早く乾いたら、それ拭く布巾も湿らんですむし、長持ちすんねん。
マイナス点云うたら、ガス代と手肌が荒れるちゅうコトだけや。

優：・・・・・・。

伍：それをやな！
『洗いモン、お湯使ってな』
『水でも平気ですよ♪』
・・・誰もお前の手ぇ心配しとらへんわ！

優：グチぃ〜〜〜

伍：・・・スマン。
でもな、台所での物理学の使い所は、まだまだあってな。
すすいだ後の器を乾かす時、伏せて置くのと傾けて置くのとでは乾きが全然違う。
これも物理学。

優：？？？

伍：重力とかベクトルとか表面張力とか、まぁ色々あるねんけど・・・傾けた置き方の方が、断然早く乾くな。
逆に、完全に伏せた状態やと、一晩置いても乾かへん。

優：なんで？

伍：お湯を使ったら早く乾く云うても、やっぱ水気は残る。
その残った水気は、重力の法則に従って下に落ちる。
で、下に落ちた状態から乾燥・・・蒸発していくワケやけど、その気化した水分は、空気中に分散しようと試みる・・・

優：あ・・・

伍：解ったか？
器を完全に伏せるっちゅうのは、その気化した水分の逃げ場を塞いでんのと一緒なんや。
結局、せっかく乾いた器に、気化した水分がまた貼りつくワケよ。
せやから全然乾かへん。
それが、ちょこっと隙間開ける程度に傾けてやると、それだけで全然違ってくる。

優：う〜む。

伍：せやけど実際には、そこまで小難しく考えんでもえぇねん。
理路整然と理解するために、わざわざ『物理』とかって言葉使っとるけどな。
実際には、いつでもどこでも何気なく、学校で習った『受験の為の』勉強とかも、役に立ってんねん。

優：耳に痛いぃ〜〜〜。

伍：他に例を挙げてみよか？
エビを茹でたり、青菜を茹でる時、湯に塩入れるわな？　何でか解るか？

優：・・・味付け。

伍：の意味もあるけど、素材の持ってる旨味が、湯に流れ出さないようにする意味合いの方が強いねん。
それを『浸透圧』ちゅうんやが・・・湯そのままの濃度っちゅうのは薄いさかい、素材の濃度に負けるねん。
せやったら、湯の方の濃度を上げてやったら、素材の旨味も流出しにくなる。

優：どうゆうこと？

伍：ジュースと水混ぜたらどないなる？　均一化しようとするやろ？
それは水の方が濃度が低くて、ジュースの方が濃いさかいにおこる現象や。
『質量保存の法則』・・・はちょっと意味合いが違うかも知れへんけどな。

優：ふむ・・・何となく解ったような、解らへんような・・・

伍：それに、調味料で味付けする際の『さしすせそ』かて、実はこの『浸透圧』に基づいて説明がつく。
昔のヒトはエライわなぁ・・・ムズイこと解っとらへんでも、ちゃんと物事理解しとんねんから。

優：・・・・・・。

伍：知識系の学問とかでも、実際『知らないよりも知ってれば得』なコトは多いねん。
今の日本、保健体育で習った救命方法役立てる人間、どれだけおることやら・・・セックスだけが保健の授業とちゃうねんゾ、と。

優：そう云うたら、地震の時とか、初期微動とか揺れ方の種類とか、無意識に思い出して状況把握しようとしてるわ。

伍：せや。
『こないな勉強、社会で何の役に立つねん』とか思ってたらアカンねん。
種は蒔かへんだら芽は出ぇへんねん。知識は身につけな役に立たへんねん。

優：肝に命じておきまする〜〜〜。

伍：『下手の横好き』でもえぇねん。その面でエキスパートにならんでもな。
好きでいるんと得意なんは、必ずしもイコールやあらへんねんさかい。

優：とりあえず、勉強ね。

伍：・・・ま、数学だけは、俺も何の役に立つのか解らへんけどな！

優：ギャフン！