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Manga-Life!

警察署長
原案:たかもちげん
脚本:高原泉
漫画:やぶうちゆうき

連載:イブニング(講談社)

単行本:1〜10(3/05/07現在)

 職業倫理モノ漫画は数多く、警察組織を題材にした作品も少なくありません。
 その中でも特定の警官にヒーロー色を持たせることを抑え、警察の『職務』に主観を置いて物語を描くこの作品はオススメです。

 警察大学校主席卒業のエリートであるにも関わらず、親友の死に関する秘密を記された手紙を受け取ってしまい、その秘密を頑なに守り続けるがためにタブーとされる出身地勤務を10年以上も強いられている、主人公である椎名啓介。
 しかし彼はそんな事情をおくびにも出さず、昼行灯署長として市民の生活を守るべく、ひそやかに、しかし確実に署員たちをサポートし続ける。

 主人公椎名の静かなる活躍もこの作品の魅力ではありますが、冒頭でも述べたように、警察官の『職務』を誠実に描いているのが最大のポイント。
 刑事、鑑識、交通課、地域課、留置係、生活安全課、潜入捜査官、機動捜査隊、地域駐在員、警察職員、外国語講習員、マル暴……警察モノ作品だとどうしても活躍しやすい刑事、交通課(白バイ、ミニパト婦人警官)、署長を題材にする作品が多い中、組織としての警察を細やかに描き出し、加えて犯罪・事故に対し後手、後手となる警察業務を、地域住民との交流を軸にして、攻める警察……『防犯』思想を根付かせるために活躍する警察官たちの姿を通して時にシリアスに、時にコミカルに描いています。
 防犯ボールを根付かせるための地域住民との三角ベース大会や、捕らえた窃盗犯の取調べからわかる窃盗の手口、警備地区から漏れた地区をカバーするためのマラソン大会、万引きを防ぐためには…痴漢を防ぐためにはどういった貼り紙が有効なのか、事故を発生させないためには警察として何が出来るのか……検挙率を上げるのではなく、犯罪・事故の発生率を抑えるための努力を惜しまない、理想の警察の姿がここにあります。

 水戸黄門枠でTVドラマ化もされていますが、正直TVドラマ版は見る価値ないです。
 キャスティングや設定が変更になるのはまだしも、原作の持つ『警察』ドラマとしての魅力を上辺だけなぞっている駄作と云っても過言ではないと思います。
 ただ、署長の椎名役である高嶋政伸のキャスティングはこれ以上の当たりはないです。
 それだけに、その他の部分がおろそかにされてしまい、ただの警察劇に成り下がっているのが残念でなりません。
 警察のポスターにも採用されていますけど、それよりもこの単行本を一揃いロビーにおいて置けばいいのになぁ(笑)

<03/05/07>

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