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Manga-Life!

ああ探偵事務所
作者:関崎俊三

連載:ヤングアニマル(白泉社)

単行本:1〜6(04/07/30現在)

 えー、いわゆる『探偵モノ』漫画は数あれど、その多くは毎回毎回殺人事件だの完全犯罪だのに巻き込まれたりして、そのトリックの解決に至るプロセスを見せる作品ばかりでちょっと食傷気味なのじゃよーと云う貴方にオススメの、正統派(?)探偵漫画。
 主人公はホームズに憧れ探偵を生業とするにまで至った妻木と、失踪した兄の捜索を依頼したのがきっかけで、妻木のワトソン役として半ばボランティアで助手を務めるOLの涼子。

 最初にも書いたけど、この作品に『犯人はお前だ!』だの『謎は全て解けた!』だのといったカタルシスを求めて読むと、肩透かしを食らいます。
 基本的に、素っ頓狂な性格の主人公の活躍と、それに振り回される周囲の人間の様を楽しむコメディ系作品なのですが、それでも結構切れ者の主人公は、探偵としての熱い情熱を武器に様々な事件を解決していきます。
 が、何故か地味な印象を受けるのは、その活躍ぶりがきっちり『地道な捜査』に成り立っているからかも知れません。
 他の探偵モノのように状況証拠だけを頼りに推理を働かせて犯人を突き止めるのではなく、地道に調査、聞き込み、地どり、裏付けのある知識に沿った推理と、まさに『探偵』。
 変装と称してのコスプレ好きな面もあるけど、基本的に努力のヒトなのです。

 あと、回を重ねるにつれて作者の画力もグングン上がってます。
 画力が上がるにつれて、ゲストや脇の登場人物顔がドンドン変になっていくのも笑いのポイント(笑)
 話の組み立て方も悪くないので、毎週のように起こる殺人事件に疲れた探偵モノ好きな方はぜひ一度お試しあれ。

〜単行本紹介〜


妻木と涼子の出会いを描いたCASE.0から、推理の冴える『公園の落描き事件』(CASE.2)。
涼子のライバル(?)森野泉の登場する『のぞき刑事事件』(CASE.3)。
己の髪を引き抜いてまで犯人を欺いた『ラジウム針混入事件』(CASE.6、7)等々、
周辺人物の一通りの登場と、妻木の色んな面が楽しめる最初の巻にふさわしい一冊。


1話モノながらも推理、アクションと内容の濃い『六文銭のラブレター事件』(CASE.8)。
日本のどこかに失踪した漫画家を3日で探し出す『逃げた漫画家事件』(CASE10、11)。
家賃滞納で事務所を追い出された妻木が他所の探偵事務所に出稼ぎに出る
『盗聴・盗撮ノイローゼ事件』(CASE.12〜14)等、短編・長編粒ぞろいの第2巻。


ヒマを幸いに茜の卓球のコーチをかって出るCASE.16。
既存の大多数の探偵マンガに直球で疑問をぶつけつつ、
奇怪な集まりの裏を解く『丑の刻参りサークル事件』(CASE.17、18)。
妻木の開業時代に起こった『前衛散文詩暗号事件』(CASE19〜22)と、
推理モノ中心の第3巻。
特に『前衛散文詩暗号事件』は、泉探偵が汚れ役として、
涼子のライバルの座から転落した記念すべき(?)エピソード。


一冊丸ごと、大家の娘、茜が主人公な『茜の一番長い日』を収録の第4巻。
『ああ探』最大規模の推理・アクション充実の感動巨編。
妻木の『カッコイイ』部分が満載でオススメの一冊!


海水浴場の盗撮撲滅に奔走する『夏と海と探偵と』前後編(CASE.30、31)。
宝くじで当った一億円をどうか『いいひと』たちに配ってと、
奇怪・奇抜な依頼ながらも実は社会派エピソードな、
『ノーベルいい人でしょう』事件(CASE.32〜36)他を収録した第5巻。
4巻が『カッコイイ』妻木を描いているならば、5巻では『ステキな』妻木が見られます。
まぁ『笑い』の度合いも激しく強いので要注意(笑)


こそこそと事務所の荷物をまとめにかかる妻木の行動の真相とは……!?
『探偵事務所の暑い夜』前後編(CASE37、38)
学園内で起こっているいじめ事件を暴き出し、
いじめの撲滅からその裏に潜む悪党退治、
いじめの対象の心のケアまで奮闘する『校務員探偵が行く』(CASE39〜43)
『前衛散文詩事件』以来の妻木の過去物語。

 

<04/07/30>

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