コ−チの陥りやすい落とし穴


●アクションをおこす前に長々と説明をしてしまう。
 アクションをおこす前に選手を集めて、練習のオ−ガナイズからキ−ワ−ドまで説明してしまうこともよくありますが、「それでは、始めよう!」と選手を配置につかせた時に、今までの話は無駄であったことにきづくはずです。「まず説明」よりも、選手を実際に動かしながら、出てきたプレ−に応じて1つずつキ−フアクタ−を理解させていくべきです。

●意味もなくボ−ルなしのトレ−ニングを行う。
 トレ−ニングにおける最大のモティベ−タ−はボ−ルです。ウォ−ムアップや体力のトレ−ニングにおいても、できる限りボ−ルを用いて行う方が選手は高いモティベ−ションで取り組むことができます。

●スキルや戦術のトレ−ニングがスタミナのトレ−ニングになってしまう。
 目的に応じて、適切な負荷とインタ−バルを設定していかないと、トレ−ニングは意図とは違う方向へ流れてしまいます。

● テ−マを決めたにもかかわらず、出てきた現象に対していちいち指摘してしまう。
 テ−マ以外のことを指摘すればするほど(Random Complaints),テ−マはボケてしまいます。テ−マに焦点を絞った指導(Focused Coaching)のためには、コ−チも忍耐が必要です。

●自分のチ−ムの現状の把握に失敗し、テ−マの選択を誤ってしまう。
 Random Complaintsの原因の1つは、テ−マ選択のミスです。闇雲に高度なことを追いかけるのではなく、チ−ムの現状をしっかりと分析して、最も必要なことをテ−マにしてトレ−ニングしましょう。

●練習を複雑にしてオ−ガナイズだけで精一杯の状況に追い込んでしまう。
 トレ−ニングで大切なのは、メニュ−ではなくその中での「働きかけ」です。実際、海外のトップレベルのクラブなどでも、シンプルなトレ−ニングを有効に活用しながらトレ−ニングを行っています。目新しいメニューをただ単に行わせても、自分自身がオ−ガナイズで精一杯では、選手にいい習慣を身につけさせることはできません。

●ボ−ルを追いまわしてしまい、全体を観察できなくなる。
 コ−チは特殊な場合を除き、全体を見渡せるポジションに立って観察すべきです。特に、サッカ−において重要なものは、Off the Ball、すなわちボ−ルを持っていない時のプレ−の中に存在しています。

●ゲ−ムフリ−ズした時、長々とした話でゲ−ムの興味を低下させてしまう。
 ゲ−ムフリ−ズは選手にとって最もわかりやすいコ−チング法ですが、時間の経過に比例してゲ−ムに対する興味・闘志は低下してしまいます。長々とした話は、キ−ファクタ−が整理されていないため生じるものです。あらかじめキ−ファクタ−を頭の中に整理しておき、Quick、Simple、To the Pointを心がけましょう。

●適時にコ−チングできず、練習終了後に長々と話をしてしまう。
 ゲ−ムフリ−ズのテクニックを持っていないと、練習が終わってからその日の練習すべてを振り返り、「あの練習の時にはもっと・・・・・、この練習の時には・・・・・」と、抽象的な話になってしまいます。これでは、選手が理解できないばかりか、たとえ理解できたとしても。今度の練習の時間まで修正の機会がない状況です。

     「クリエイティブ サッカ−・コ−チング」 小野 剛 より



  こんなコ−チングを心がけよう


1.オ−プンマインド
 最も重要なファクタ−です。過去に輝かしい経歴があるが故にオ−プンマインドになれない指導者も見かけますが、コ−チがオ−プンマインドになれなければ、指導される選手もオ−プンマインドになれるはずがありません。結局、損をするのは、向上するチャンスを逃してしまうコ−チ自身です。

2.励ます指導を心がけよう
 Fearful Coaching(恐怖の支配するコ−チング:疑問に思ってもとても口に出して言えないような雰囲気)に陥る原因は、指導者自身のFear(恐れ)です。すなわち、知識の欠如や指導力のなき故、質問を受け付けないような雰囲気をつくってしまうのです。 Cheerful Coachingの実践、すなわち、わからないこと、疑問に思ったことなどを、選手が気軽に質問できる雰囲気を作ってあげるためは、コ−チ自身が正しい知識を持ち、それを必要に応じて引き出すことができるように整理しておくことが必要です。

3.頭ごなしの命令にならず、選手自身が納得できるように指導してみよう
 頭ごなしの命令では、クリエイティブな選手は育ちません。内面に働きかけ、選手自身に納得させ、自らの判断で行動を起すことを促していきましょう。そのためにも不可欠なのが、それぞれのテ−マのキ−ファクタ−をしっかり理解し、整理していることです。
   ・そこはこうしろ! いいから言われたとおりやれ――― ×
   ・それではこんなに損だよ! こうすればこんなに得するよ!――― ○

4.M−T−M[Match−Training−Match]の流れをトレ−ニングに生かそう
 サッカ−は、すべて逆算の発想によっています。プレ−においては、ゴ−ルを奪うこと。選手育成では、完成期にこんな選手になってもらいたいということ。トレ−ニング計画では、〜の時期に完成させたいということ。そういうものがあるから、それぞれ「今何をしなくてはならないか」がはっきりするのです。同様に、1日のトレ−ニングも最後のゲ−ムから逆算して組み立ててみましょう!

5.まずはやらせてみよう!その中でどんどんミスをさせてあげよう!それからがコ−チの出番!
 練習前にそのトレ−ニングのキーファクタ−等すべてを話してから始めるコ−チもいますが、活動前の長い話は、選手のモティベ−ションを高めることにはつながりません。また、先に解決法を与えるのではなく、選手自身が解決法を見い出す能力を身につけさせてあげましょう。そのためには、出てくるミスを大切にしてあげなくてはなりません。特に、M−T−Mのはじめのゲ−ムでミスが顕在化されるような工夫(ピッチサイズ・ゴ−ル・意識付け・・・)をすると、より効果的です。それからが、コ−チング。選手が困っている時が、最大のモティベ−ションで学べるときです。

6.ゲ−ムの中でのコ−チングができるように
 実践的なスキルを養成するには、実践的な状況の中で高めることがベスト。そのためにはゲ−ム(スモ−ルサイド)をうまく活用して、その中で(終わってからの話ではなく)コ−チングできる能力を身につけよう!

7.焦点を絞ったコ−チングを心掛けよう
 練習にはテ−マが必要。そのテ−マにそったものにしましょう!出てきた現象に対して、いちいち指摘する――Random Complaints――にならないように!

8.よい手本となろう
 フェアプレ−、ディシプリンは選手の教育にとっては非常に大切なものです。しかし、大切なのは言葉以上にコ−チの態度。「フェアプレー」を100回言い続けても、試合中に「何で今のがファウルなんだ」などというコ−チの一言で、選手たちはそちらになびくはずです。子どもにとって、コ−チの言うこと以上に大切なのが、コ−チの行いなのです。

  「クリエイティブ サッカ−・コ−チング」 小野 剛より