地雷の埋設数
数年前までは1億1000万〜1億5000万と言われていたが、98年のアメリカ国務省の報告書“Hidden Killers”によると、6,000万〜7,000万個とされている。これは、地雷の知識が深まり、より正確と思われる数字がでてきたため、過去の記録から深い分析が進んだためであり地雷撤去が進んだというわけではない。また、地雷は数の問題ではなく、どれだけの人が実際に影響を受けているかが問題となる。
アンゴラ(アフリカ) | 約1,500万 |
アフガニスタン(中東) | 約1,000万 |
イラク(中東) | 約1,000万 |
カンボジア(東南アジア) | 約400万〜600万 |
ボスニア ヘルツェゴヴィナ(欧州) |
約300万〜600万 |
ベトナム(東南アジア) | 約350万 |
クロアチア(欧州) | 約300万 |
モザンビーク(アフリカ) | 約300万 |
エリトリア(アフリカ) | 約100万 |
スーダン(アフリカ) | 約100万 |
ソマリア(アフリカ) | 約100万 |
エチオピア(アフリカ) | 約50万 |
地雷の特徴
1,無差別性
殺傷する相手を選別することができない。被害者の80%は非戦闘員、その3割は14以下の子供。つまり、全体の24%は14歳以下の子供 である。2,半永久性
戦争が終わっても地雷は、そのまま20年でも30年でも地中のなかで生き続ける。50年以上前に埋められた地雷での被害も毎年数件〜数十件報告されている(ポーランド・エジプトなど)。地雷は撤去するか、誰かが踏むまで何十年と生き続ける 。3,非人道性
地雷は殺すためではなく、手足を失わせることを目的とした兵器。敵軍の進行を遅らせるために殺さない。死体は置き去りにできるが、傷ついて苦しんでいる味方は置き去りにできない。何人かの隊員で負傷兵を自陣に帰還させなければならないため、殺すよりも相手の戦闘要員を減らすことができる。また、味方が足を吹き飛ばされ苦しんでいるのを目の前で見せることで、相手の戦意を喪失させる。4,安価
最も安い地雷は3ドル程度でできる。高価な兵器を買うことが出来ない、途上国・反政府ゲリラにとっては手頃な兵器。そのため、被害に苦しんでいるほとんど国(自ら地雷を生産している国はほとんどない)は途上国で、紛争終結後の撤去資金も自国で捻出できないケースが多い。
このような理由により、撤去も遅れ地雷による被害者が増えていく
このような特徴を持っている地雷は様々な別称を持っている
貧者の兵器・貧者の守護神(poor man’s guard)・悪魔の兵器・卑怯者の友達・疲れを知らない門番・スローモーションの大量殺戮兵器、眠れる兵士etc・・・
地雷被害
毎年2万5千〜2万7千人 毎日70〜80人 22分に1人
80%は非戦闘員、その3割は14歳以下の子供 つまり、全体の24%は14歳以下の子供
被害者の約50%は死亡。生存しても四肢の一つは失うことになる。子供の死亡率は大人と比べては極めて高い。手足切断者の数はカンボジアでは234人に1人・アンゴラでは2万人を越えている 。被害者の治療・義足・義手などの生涯の経費は3千ドルである。被害の多い途上国では、不衛生な処置による感染症などによる死亡のケースは全体の50%を超える。事故後6時間以内の処置が重要だが、6時間以内に病院にアクセスできる比率は30%(アンゴラでは10%以下)
被害の増加の原因
東西冷戦終結により、米ソ代理戦争が終わり、避難民が自分の土地が地雷原となっていることを知らずに戻り、地雷被害に遭うケースが多い
南北問題
地雷を製造しているのは先進国。しかし自ら地雷被害に苦しんでいる国は少ない。被害に苦しんでいる国のほとんどは地雷を製造していない。
地雷の種類
全部で約340種類
対戦車地雷(ATM Anti-Tank Mine)
第1次大戦時にドイツが開発 サイズ:半径30〜50? 重量:20?前後
対人地雷(APM Anti-Personal Mine)
1、爆破型地雷(BLAST MINE)
直径 5〜15?どのくらいの重さで爆発するかは種類によって異なる 。上辺部への圧力で起爆装置が作動、信管に通電して本体の爆薬に引火する。構造が単純で大量生産しやすい。2、破砕型地雷(FRAGMENTATION MINE)
地中に埋めず地表の物陰などに隠して使用する。爆発で地雷本体が細かく砕けて周囲20〜30mに時速100?で四方に飛び散り、その破片で標的を殺傷する。種類によっては内部に鉄くずや鉄球が詰めてある物もある。紐を安全ピンにつなげておき、標的が紐に足をかけると安全ピンがはずれ起爆装置が作動する。3、跳ね上げ型地雷(BOUNDING MINE)
地雷本体が地面からはね上がり地表から1〜2m飛び上がり本体が爆発。他の地雷とは違い、被害を与える箇所は人の胴体・内蔵・頭部、人の生命を奪うことが目的、車両に乗っている人間にも怪我を負わせることができる。4、散布型地雷(SCATTERABLE MINE)
他の地雷とは設置方法が異なり、航空機やヘリコプター、地上の車輌から散布する地雷、ロケット弾やミサイルの中に地雷を詰めて、爆破の勢いで広範囲に地雷を散布することもできる。それぞれが小さいため、気づかずに踏んでしまう 。民間人を対象にした蝶々型のピンク色の地雷、人形型の地雷もある。5、Smart Mine(⇔Dumb Mine普通の地雷)
自己破壊装置or自己不活性化装置付きの地雷のことである。一定時間後、自爆もしくは無力化する。しかしこれがしっかり起動するのか?作動する確率は7割以下というNGOもある。本当に無力化しているか爆発させてみないと分からない。自爆したとき近くに人がいたら?
対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)
1,対人地雷の使用、開発、製造、取得、備蓄、保有、移転の禁止
1,地雷探知、廃棄の技術開発や訓練のための保有、移転は、必要最小限の数なら認める
1,締約国は、備蓄地雷を条約発行後4年以内に、埋設地雷を10年以内に廃棄
1,毎年、備蓄、埋設地雷の数量、型式、埋設場所などを国連に報告
1,締約国が他の締約国の条約遵守に疑いを抱いたときは、国連を通じて説明を求めることができる
1,締約国会議などで過半数の賛成があれば、違反の疑いがある国に調査団を派遣できる
96/10
カナダが対人地雷全面禁止条約交渉を賛同する国のみで進める方式(オタワ・プロセス)を提唱
97/9
オスロでの会合で対人地雷全面禁止条約を採択
97/10
地雷禁止国際キャンペーン(JCBL)と世話人ジョディ・ウィリアムスさんのノーベル平和賞受賞が決まる
97/12
オタワでの署名式で日本を含む121ヶ国が署名
98/9
ブルキナファソが批准書を国連に委託、批准国が規定の40ヶ国に達し、99年3月に発効が決まる。30日に日本が批准(45番目)
99/3
条約が発効
オタワ条約の調印、批准
オタワ条約は、対人地雷の「使用」「生産」「貯蔵」「移転」の禁止をした条約。また、被害者への治療、リハビリテーションなども積極的に行うと明記されている。例外として、地雷探知・除去・廃棄技術の開発・訓練のための保有は認められている。
「ランドマインモニター」制度
締約国の条約履行状況を独自に調査・分析し、非締約国の情報も集める
なぜこの制度ができたか?
条約交渉の中で、条約上の義務を遵守しているかどうかを検証するための独立した査察機関は定められなかった(多くの賛同国を得るため)、この欠陥を補うためのものに考えられた。未加盟国への「加盟圧力」にもなる
オタワ条約に調印している国:135ヶ国
(国連加盟国が185ヶ国)
批准している国:86ヶ国
発効している国:78ヶ国
(99年10月5日現在)特に国連常任理事国5ヶ国中3ヶ国が調印してない
調印をしながら、今後批准する意志のない国
アンゴラ・ギニアビサウ・ルワンダ・スーダン・コロンビア・ブルネイ・バングラデシュ・ギリシャ・リトアニアポーランド
未加盟地雷生産大国・・・アメリカ
「朝鮮半島に配備できる代替兵器の開発」を条件に2006年までに署名する方針
安全保障上必要・・・中国:ロシア
生産
対人地雷の生産国は、54ヶ国から、16ヶ国に減った
生産国 (16ヶ国)
ミャンマー・中国・キューバ・エジプト・インド・イラン・イラク・北朝鮮・韓国・パキスタン・シンガポール・ロシア・ユーゴスラビア・トルコ・アメリカ・ベトナム、これらの国の中には、この数年間まったく作っていない国、特定の地雷を作っていない国もある。しかし、禁止しているわけではない。
生産していた国 (38ヶ国)
<アジア>
日本・台湾(非調印)・フィリピン・タイ
<アメリカ大陸>
カナダ・ニカラグア・ブラジル・アルゼンチン・コロンビア・チリ・ペルー
<ヨーロッパ>
アルバニア・ベルギー・イギリス・スイス ・ボスニア・ヘルツェゴビナ・フィンランド(非調印)・スウェーデン・スペイン
クロアチア・チェコ・ルーマニア・ポルトガル・デンマーク・オランダ・ノルウェー・ポーランド・フランス・ドイツ・ブルガリア・イタリア・ギリシャ・ハンガリー
<アフリカ>
南アフリカ・ウガンダ・ジンバブエ
<中東>
イスラエル(非調印)
<豪州>
オーストラリア
生産国と見られるが、否定している国 (4ヶ国)
ベラルーシ・キプロス・ウクライナ・ベネズエラ
貯蔵
推定では、1億個だったが、現在は、108ヶ国、2.5億個があるとみられる。
オタワ条約批准国は、貯蔵されている地雷を廃棄しなければならないため、調印国の地雷は廃棄中もしくは、廃棄計画中。
例外的に訓練目的の場合は、地雷を保有することが出来るため、なかには数万個単位で地雷を持ち続けようとしている国もある。
中国 | 1億1,000万(推定) |
ロシア | 6,000万〜7,000万(推定) |
アメリカ | 1,100万 |
ウクライナ | 1,000万(廃棄中) |
イタリア | 700万(廃棄中) |
ベラルーシ | 数百万〜数千万 |
インド | 400万〜500万(推定) |
スウェーデン | 300万(推定、廃棄中) |
アルバニア | 200万(推定) |
韓国 | 200万(推定) |
日本 | 100万(廃棄中) |
アメリカは、オタワ条約に調印している以下の7ヶ国のアメリカ軍基地に、対人地雷を貯蔵している。
ドイツ・ギリシャ・イタリア・日本・ノルウェー・スペイン・イギリス
輸出入
過去に対人地雷を輸出していた国は、34ヶ国
貿易状況
地雷は登録も許可もなしで製造可能で製造するための技術も決して高くない、模倣、秘密生産も可能 である。また自国で製造を禁止しても他国に工場を移転して製造可能である。さらに自国で隠れて部品を製造し、他国で組み立てて輸出することも可能でもある。これらの理由により貿易状況は不透明である。
オタワ条約に調印 | オーストラリア・アルゼンチン・ベルギー・ボスニア・ヘルツェゴビナ・ブラジル・ブルガリア・カナダ・チリ・チェコ ・フランス・ドイツ・ギリシャ・ハンガリー・イタリア・ポーランド・ポルトガル・ルーマニア・南アフリカ・スペイン・スウェーデン・イギリス |
輸出を禁止・非調印 | アメリカ |
輸出を一時停止・非調印 | イスラエル・ロシア・パキスタン・シンガポール |
「輸出停止」声明・非調印 | イラン・中国・ベトナム・キューバ・ユーゴスラビア・エジプト |
輸出を停止せず生産している(非調印) | ミャンマー・北朝鮮・イラク |
97年12月〜99年3月までに、対人地雷が使用された国
<アフリカ>
アンゴラ 政府軍と反政府勢力、ジブチ 反政府勢力、ギニアビサウ 政府軍、反政府勢力、セネガル軍、ソマリア 様々な派閥、ウガンダ 反政府勢力
<アメリカ大陸>
コロンビア 様々な反政府グループ
<アジア・太平洋>
アフガニスタン 反政府軍、ミャンマー政府軍と反政府グループ、スリランカ 政府軍と反政府勢力
<欧州・中央アジア>
グルジア パルチザン(アブハーズ)トルコ 政府軍と反政府勢力、ユーゴスラビア 政府軍と反政府勢力
<中東・北アフリカ>
レバノン イスラエルとレバノン南部占領地区の非政府関係者
7年12月〜99年3月までに未確認ながら、地雷使用が疑われた国
コンゴ民主共和国 エリトリア スーダンアフガニスタン
カンボジア グルジア タジキスタン
オタワ条約批准以前は日本も地雷を製造していた
石川製作所
自衛隊地雷全般製造
指月電気製作所・京セラ米国現地法人・日立造船
自衛隊対舟艇水際地雷・94式水際地雷敷設装置・(キャタピラ式水陸両用車両)
富士重工業
自衛隊87式地雷散布装置・(ヘリコプタ用空中散布装置)
日産自動車
自衛隊70式地雷原爆破装置・92式地雷原処理車・(キャタピラ式処理ミサイル発射車両)
三菱重工業
自衛隊92式地雷処理ローラー
日立建機
自衛隊83式地雷敷設装置・(トラック牽引型敷設設備)
いすゞコーポレーション
自衛隊道路障害作業車・(舗装道路用オーガなど)
自衛隊も100万個保有していた。 日本もオタワ条約を45番目に批准したため製造も貯蔵も不可能になるが、条約批准後も除去訓練などのために1万5千個保有し続ける。
平成11年度概算要求における地雷破棄関連予算
指向性散弾調達予算 | 約3億5000万円 |
代替兵器試作部品購入他 | 約6億4000万円 |
地雷破棄費用(22万個分) | 約4億4700万円 |
その他条約関連を含み合計 | 約14億8000万円 |
無償資金援助(ODA)
除去活動 | 約8億円 |
被災者援助 | 約12億円 |