海外採集レポート第10弾!!

クワガタムシの宝庫!中国最南端南国海南島続編

 前回は高峰にてアンタエウス(死骸)を確認したのに私自身が持ち込んだとか自分がどうして採集しなかったなどと言われた方がおられましたので発電機をはじめライトトラップに関する機材をすべて日本から用意して今回は昆虫雑誌の草分け的な存在「むし社」さんからの取材依頼もあり真実を見ていただくにはちょうど良い機会なので同行していただき出発しました。記者は飯島氏でむし社では若手のホープ、生虫を相当されていて採集のスペシャリストです。本当は9月の初頃の予定でしたがその時期は満月にあたりちょうど8月18日が新月になる為19日〜24日までの6日間です。海南島については前回説明していますので詳しい事は省かせていただきます。今回も前回同様通什市五指山をはじめ、三亜市高峰を中心に、前回私が手配した通訳は少し語学力に欠け、私の聞いて欲しい事や相手の返事をうまく通訳してもらえなかったのでもう少し日本語をよく理解できる通訳に同行してもらい、始めレンタカーを借りる予定でしたが現地で少しトラブルがありタクシーをチャーターすることにしました。初日は三亜到着が遅く、その日はホテルでこれからの行動を念入りに打ち合わせをして休む事にしました
 2日目は五指山で、ここは自然保護区の為当初からライトトラップなど目立つようなとこは避け、現地人に採集してもらうようにお願いに行くことが目的です。通什から五指山へ行くまでの間飯島氏は木々の種類や太さなどを興味深く観察され、始めは木々もこの辺では採集できない様だと言われていましたが五指山が近くなるにつれだんだん木々も太くなっていくことが非常に興味があるようで次回来る時は麓のホテルで長期滞在して採集したいと言っておられました。五指山の採集人達も私のことを良く覚えており話もスムーズに進み、2日後もう一度来るから集めてもらうようにお願いして帰ろうとしたところ、突然1枚の名刺を出しそこには中国のある旅行社の名前が書いてありたぶん日本人の誰かが旅行社に依頼したのだと思います。本当なら事前に電話やFAXにて注文をしてから現地に虫を買い付けに行くのが普通なのですが電話がまったくなく現地へ行ってからお願いするので非常に効率が悪いです。(※高峰も同じです。)
今日の夜は高峰の採集人に会いライトトラップをしても大丈夫か?を確認しようと思っていましたが、五指山で少し時間がかかってしまい高峰を目指し急いで帰りましたが到着が夕方になってしまい採集人に会って説明していたらライトトラップが出来なくなるので強行して自分達だけですることにしました。もし誰かに注意されても何か問題があっても通訳の中国人がいるので少しは心強いですが、どこに仕掛けていいのか全く分からず、とりあえず獣道を車で行けるところまで行き適当な場所を見つけ仕掛けることにしましたが、途中何人もの現地人と出会い皆が少し驚いた様子で、ある年老いた男性が「お前ら今夜泊まる場所がなくこんな所で泊まるのか?」と尋ねられるように全く彼らには私たちが何をしているのか分からないようでした。その時突然雨が降り出し少し様子を見ていましたが一向に止む気配もなく反対に雨が強くなってきたので仕方なく終了!!この時期海南島は雨が非常に多く、もしかしてこれから毎日雨が降るのではないか?と少し不安が過りながら、ホテルに帰ることにしました。3日目は前日到着が遅く再会する事が出来なかった採集人に会うためホテルを出発して、途中高峰の1番大きな村でバイクに乗せてもらい約20分ほどで彼の家に到着し今回の目的を説明をすれば快く協力してくれ、すぐに樹液採集に連れてくれました。採集人の家からポイントまでバイクで約10分、高峰は全て木々に囲まれた森だらけですが、このポイントだけは少し木々の種類が違います。クヌギ、アベマキによく似た日本の何処にでもあるような風景です。樹液も日本ほどきつくはないですが出ています。採集方法は樹液に集ったり、液皮の裏や洞に潜んでいるのを採集するといったほとんど我々が行っているのと同じです。ただ1つ違うのは私ではまず登れそうもない木を彼らは簡単に、それも素足で登り非常に身が軽い事です。たぶんヤシの実を毎日木に登っている為登り方が身に付いていると思います。初めは5人で採集しましたがいつの間にか気が付くと小学生ぐらいの子供が3人増え、彼らはきっと小遣いが欲しくてついてきたのでしょう。約2時間ほどでヒラタ♂30♀2、クベラ♂5、シバ♂5♀3、コンフィキウス♂3♀1採集でき、しかし♀が非常に少なく発生時期が少し遅かったようで、気温は30度前後だと思いますが、湿度が非常に高く、かなり蒸し暑かったです。メインのアンテ、ホーペイ、グランは採集できませんでした。ライトトラップまでかなり時間があるので彼の家で少し休憩を取っていると家の奥から大事そうに10頭以上のアンタエウス、1頭のホーペイの死骸を持って来てくれました。やはりホーペイも生息しています!このアンテ、ホーペイのしがいはぼうちゅうごくじんからのちゅうもんだそうです。そこで私は彼より少し高く買うから何とかお願いして譲ってもらう事が出来某中国人の方本当にすみません、これだけ目の前に死骸があるのにどうして採集できないのか?と訪ねるとなんと!!意外な返事が返ってきました。それは前回私が通訳にアンテはここで採集できるのか?と聞いてもらったところ「そうだ!!ここで採集できる!」と言ったのに、ココで1つ大きな言葉の壁が会ったようです。私の聞いている「ここ」とは高峰のことを言ってるのに通訳の言っている「ここ」は海南島全体の事を言ったようで本当の採集地は尖峰り(ちんぷり)でこの地域は先住民リー族の地域で同じ中国人でも入るのが非常に難しく、むろん日本人はまず不可能だとの事です。中国という国は省や自治区において少数民族の伝統と生活、文化を尊重して保護する政策を取っているのでここもその1つであります。
よく台湾やタイでも採集地が広範囲になる為1ヶ所に虫が集められるように高峰も同じだと思います。次回は如何なる方法にでも尖峰り山に入り自己採集できるように頑張ります。この高峰の採集人の家では車だけで行くのは不可能で彼らもこの村へは私以外の日本人がきたことがないといっており、多分何人かの日本人が高峰を訪れた場所はかなり下の村までだと思います。女性や子供達の中には日本人を始めてみる人が多く飯島氏が持参したその場に写した画像が見えるデジタルカメラに驚き飯島氏と仲良く遊んでいました。彼らは夕食に鶏1頭を料理してくれて、別に食べるのは全く抵抗ないのですが今まで放し飼いになっていたのを目の前で殺すというのは少し可哀相に思いましたが彼らにとって当たり前の事であり、これも彼らの文化なのだと納得しました。少しリー族の生活水準を説明しますと1ヶ月の収入は約1万円で三亜市内の約5分の1です。収入源は米や農作物がほとんどですが、男性は1ヶ所のところに集り1日中トランプや将棋、麻雀をしてほとんど仕事をせず女性が背中に赤ん坊を背負って畑へ行く姿をよく見かけます。あまりお金を使う事がないので男性は働かないのかも知れません。男性のお風呂は凄く濁った汚い川で女性はさすがに人目を気にして川には入らなく雨水を溜めて体を洗います。
そろそろライトトラップの時間です。ただアンテ、ホーペ、グランが、違うポイントだと分かり少し気が重くなりましたがまだまだコンフィキウス、クベラetcたくさんの種類がいるので気を取り直し出発する事にしました。今日は昨日の雨が嘘のように晴れてさぞかし沢山飛んでくるのだろうと期待していましたがまず最初に飛んできたのはフンコロガシで、その後もまったく同じくたまに巨大な蛾がとんでくる程度で一向にクワガタは飛んできません。たぶん時間帯が違うのだろう?そのうち飛んでくるだろう?と思っていましたが結局この日は1頭も飛んで来ませんでした。条件としては新月で風もなく最高で昼の樹液採集ではいとも簡単に採集できたのに。これも我々に対して自然の洗礼かもしれません。今日はこれ以上待っても飛んできそうにないので、明日こそ飛んでくることを願って終わります。
今まで3日間の食事はいつも冷房のよく聞いた、どちらかといえば観光客がよく利用する高級店ばかりで(※決して見栄をはっていたのではなく通訳やドライバーが自分達はお金を払わないので高級店ばかり連れて行ったからです)飯島氏がそろそろ庶民的な料理を食べたいと言い出したので屋台のラーメン屋へ行き料金も今までの3分の1程ですみました。本音は所持金が少なかったためのようでした(私も内心ほっとしました)
4日目は五指山にお願いしておいた虫を取りに行きましたがなぜかここでも♂のオンパレードで♂20に対して♀1の割合です。
前回のレポートで五指山へ行く途中、人民開放軍がライフルを持って検問している場所があると説明しましたがどうやらここに軍事基地がありスパイの侵入を防止するためのようで、さすが共産国です。今日もライトトラップを予定しているので五指山での用事を早く片付け高峰へ戻ることにしました。1日で三亜→五指山→高峰を移動するのはかなり疲れます最後の日ぐらい何とかライトトラップで採集したいのですが、なにぶんこちらからどうする事もなく、ひたすら飛んでくるのを待っているだけで、ただ時間だけがすぎていき結局前日と同じで今日も自然の洗礼を受ける結果になり足取りも重く採集人の家へ帰ることにしました。途中田んぼのあげ道では日本でほとんど見られなくなった蛍が飛び回っていて非常にのどかな風景が今回の採集での疲れを一時でも忘れさせてくれる時間でした。夜も遅いのに彼の家では我々の帰りを大勢の村人が待っていてくれ皆で記念写真を写したりしてなかなか帰してくれません。今回何とかお世話になったり協力してくれたお礼をかねて発電機を初め採集に関するもの全て置いてきました。通訳の人との待ち合わせの時間が近づいたのでバイクで下まで送ってもらい、そこで採集人は明日私たちの為にアンテ、ホーペイ、グランを採集してもらいに尖峰り山に行ってくることを約束して村へ帰ってきました。5日目は私たちが帰国する日ですが尖峰り山を一度見に行くには時間が足りず無理して採液採集ぐらいは可能なのですが体も非常に疲れており今回飯島氏は海南島が初めてで何分5日間ホテルと採集地外何処も行ってないので出発までの間少しぐらい観光しようとバタフライファームと実弾が撃てる射撃場と私の好きな足裏マッサージへ行き時間をつぶしました。飯島氏は射撃が非常に上手で銃を使う才能があるようです。今日はその日の内に日本へ帰る飛行機がないので広州で1泊することになり今回海南島採集紀行とは直接関係ないのですが以前から福健省の採集人にホーペイをお願いしておりちょうどいい機会なので広州で引き取って帰ることにしました。前回は私が海南島にアンタエウスが生息するという報告をしましたが今回むし社の飯島氏に同行していただき再度確認もでき又新にホーペイも発見できました。地質学上から見ても中国大陸と陸続きになっていたものが火山活動などの地殻変動により大陸と海峡によって分離されたものだと考えられます。このことから中国大陸に生存する種類が海南島にいても何ら不思議でもなく生存するほうが自然だと思います。
今回は前回以上に山奥へ入り自分自身でも採集でき標高が高くなるにつれ木々の種類や太さも変化して行くのが分り海南島は現在非常に進歩している島で高速道路も出来、それによる木々の伐採で虫たちの生息地域が非常に狭まっており特にホーペイ、アンテ、グランなど大木を好むような種類はかなり地域が限られているように思います。
海南島はほぼ九州と同じ面積です。私はこれで2回訪れましたが五指山、高峰といった限られたポイントしか行ってません。今回新しく発見した尖峰り山をはじめ、まだまだ私の知らない生息地(特に自然保護区)などがあると思います。今後も海南島におけるレポートは続けていきます。
乞う御期待!!!!                                                ―――――店長―――――

 

写真はこちらです