小手先プロジェクト

(34) 誘惑


はぁ〜、そろそろ駅か、、良く寝た‥‥
帰宅時は気が緩むせいか、電車で実に良く寝られる。

お、向かいはミニスカートか、、、よくあんなので座ってられるもんだわ。
さて、降りるか。

じろじろ見ないように、っと。
「ふっ」これが大人の余裕ってものさ。

‥‥!。なっ、何だ、その視線は、、、俺は見てないってば。
まさか、さっきの「ふっ」を見えた喜びの表情とでも思ったのか?
ち、違う。違うぞ。そうじゃない。

わかってくれ、良く考えてみろ。
あの笑みはいやらしいにやけ顔とは違うだろう? さわやかでさえあったはずだ。

あぁ、言い訳したい、、、けど、降りなきゃ。
そうだ、きっと俺の見間違いだよな、、、(ちらっ)、、!、、だめだ。あの膝の綴じ方警戒してる。
それにこっちを睨んでる、、、なんてことだ。

あぁ、言い訳したい。どうしよう、無実なのに
誤解されるくらいなら、もっとしっかり見とけば良かった。

次から電車を変えようか、、、それとも、同じ電車を選んで見ようとなどしていないことをアピールした方が良いのか?

どうしてこんなことになってしまったんだ、、、もうおしまいだ。


(くんくん)

こっ、この匂いは‥‥  たこ焼き!  何故こんなところで!!!

うむ、良い焼け具合だ。きれいに焼けている。
‥‥?。どうしたんだみんな。誰も買わないのか?あんなに旨そうだぞ。

このままでは、せっかく中身がとろ〜ん&外がパリッの絶妙のコンディションが台無しになってしまう。
今が一番良い時なのに。

店員も店員だ。
いらっしゃいませとか、焼けてますとか言ったらどうなんだ。
うまく焼けたたこ焼きにこだわりを、愛情を感じないのか?

俺には帰ってから夕飯があるんだ。ここで買うわけにはいかないんだ。
早く誰か買ってやれよ!

「ありがとうございましたぁ〜(にこっ)」

うむ、ソースも良いものを使っているな。
つい買ってしまったが、これは自分が食べたかったから買ったわけじゃない。
たこ焼きにとっての最も良い生涯の手伝いをしたんだ。

せっかくだから、家族への土産にしてやろう。

‥‥‥‥(ほかほか)‥‥この温もり。た、、食べたい
1個や2個なら、、、2個食べてもまだ8個残ってるし。

そう、誘惑に負けたんじゃない。
8個も残ってるんだから、誘惑との勝負は8勝2敗で勝ち越しじゃないか。


(すっかりたいらげた俺は証拠隠滅を図るべく、ゴミを
持ち込んだことに「すまない」と心で手を合わせながら
コンビニのゴミ箱に残骸を落としこんだ。)

間が悪いし、このままコンビニに入ろう。

しかし、俺は無駄な行動は取らないのだ。
立ち読みをするフリをして窓に映った自分の姿をチェックする。

「口の周りにソースはついていないか」
「歯に青海苔は付いていないか」
奥歯に鰹節がはさまっているが、これは見えないから大丈夫だ。

「ただいま」

「おかえり〜、あれ?何付けてるん?」

(ギクッ)な!‥‥ソースがズボンに
やはり歩きながら食べたのがまずかったのか。たこ焼きはうまかったが、、、そういう問題ではない。

「ああ〜、これ、給湯室でカップ焼きそば食べてるやつに撥ね飛ばされたんよ。(う、うまいっ♪自画自賛じゃ)」
「その時は気づかんかったんやけどねぇ」

「ふ〜ん、その時は気づかんかったのに、その時に撥ね飛ばされたんか、、、」

「‥‥!(し、しまったーーー、手強いぞっ!)」

「まぁええわ。今日、駅前でたこ焼き売ってたんで買って帰ったんやけど食べる?」


この話は、言葉が関西風であるとか思い当たることがあったとしても、
完全に100%混じりっけなしのフィクションであり、実際にあった話に
基づいていたりはしません。


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