まず、以前からのニーズであった、
- デスクトップで使う小型機が欲しい。
- 普通のバスレフやダブルバスレフは作るのが楽しくない。(バックロード依存症)
という背景があって、
- サイズは横から見てA3程度にしたい。(ミドルタワーのPCよりは小さく)
- 小さいのでデッドスペースを避け、無駄のない構造としやすい1/4スパイラル形状を使う。
という方針。
ユニットはモニターの横に置く訳なので当然防磁型、小型なので8cmというわけで、安直ですがFE87Eを使います。試行錯誤の結果、下図のような構造になりました。
なお、こちらに板取を書きますが、(1)の板にユニット取り付け用の抜き穴を書いてませんので、あしからず。
当然ですが、真似して気に入らない結果となっても責任はとりません。
結局、
- 木口を隠すために集成材(14mm)を重ねるので、外観と引き換えに集成材の厚さ分サイズオーバー。
- 音道長を150cm確保した代わりに細くなり、開口部は100cm2と控えめ。
ただし、これでも14cmウーファー相当、音道入口の5倍の開口面積なので、8cmユニット用としてはまずまず。
細く短いホーンなので低域特性は凸凹が予想されますが、これを抑えられるかどうかがポイント。90Hzくらいまでそこそこのレベル、何とか60Hzくらいまで聴こえれば良しとします。
非力な防磁ユニットを使うことによる中低域の盛り上がりを抑えるために、空気室を大きい目にします。具合が悪ければ端材を放り込んで小さい側に調整するのは容易です。
調整段階で空気室の一部を使ってホーン入口側の音道を延長することも想定しており、調整前の空気室容積は1.3リッター程度となります。ちなみに、バスレフとして働いたとすると、部分的なFdの下限は85Hz前後、再生限界は半オクターブ下の50-60Hzまで再生すれば目論見通りということになります。
「パソコン用なら至近距離で聞くはずなのに、音源位置の離れた後面開口とは何事か!」とのお叱りが目に浮かぶようです。
しかし、至近距離は見た目のあらが見えやすく、前面開口としたときの開口部の仕上げに自信のない私としては、誰が何と言おうと後面開口が好きなのです。音の点であえてこじつけるなら、短い音道なので、後面開口とすることでドライバーユニットとの距離差を確保して、ローエンドを少しでも伸ばしたい、という意図もないことはないです。
そもそも、ある程度音量を出さないとうまく鳴ってくれないバックロードを深夜の使用がメインのパソコン用途にすること自体が間違っていますかねぇ、、、~/.~;;
さて、長岡氏の作例のコピーや自作派のオリジナル作品を聴いてみても、180度折り返しによる音の癖というのは気になりませんが、にもかかわらず、なぜ簡単な180度折り返しにしないかというと、
- 同じサイズと同じ折り曲げ回数なら、実効的なホーン長が180度よりも90度の方が長い(欲張り)。
- 音道の仕切りを補強板として考えると、180度ターンの繰り返しは補強が一方向に偏りすぎ。
特に(2)の方は箱鳴きに関わるので、自分で設計する限りはこだわってみたいところです。
今回の1/4スパイラルでは、内部の音道仕切り6枚のうち縦方向が3枚、横方向が3枚とバランス良い配置となっています。(ただし、効果は不明)さて、奥行きをパソコンと同じ450mmまで許容すれば、拡張により2m程度の音道長と上面に150cm2程度の開口を確保できます。
こうした設計の融通性のメリットは通常のスパイラルホーンと同じですが、今回はサイズ優先なので、出口ではなく空気室側で10cmの延長が可能なように空気室を大きい目に確保します。延長の必要または効果がないときは、端材を放り込んで内容積調整すればよいだけのことです。空気室にいろんな仕切り板を入れて遊ぶこともできます。
もう一つの1/4スパイラルのメリット、ユニット取り付け位置を空気室の上側にして高さと奥行きを入れ替えたり(ver2)、ユニットを側板に取り付けて薄型とする(ver3)こともできます。ユニットも開口部も側板に設ければ正面の姿をD-99そっくり(ver4)にもできます。
悪乗りすれば、正面と両側板とに3個のユニットをつけてマトリックスとかも可能です。しませんけど。
このスピーカーをメインに据えるつもりはないため、通常のシナベニヤで簡単に作るつもりでしたが、カットを依頼した業者の手違いでフィンランドバーチで出来てしまいました。うれしい誤算です。パーツが少なくサイズも小さいので、釘を使わなくとも1回の週末で組みあがってしまいました。
左の写真の後、内部塗装をしたら、側板と突き板兼サブバッフルを貼り付ければ組み立て完成です。
内部塗装は側板側にマスキングテープを貼るのが面倒くさかったので、側板片方と仕切り板にだけ塗りました。中央の写真は、コーナーをトリマーで45度カットしてからカンナでラフにRを整えたところで、この後、紙やすりで滑らかにして下地処理をしたら塗装に入ります。
右の写真は塗装後。木目がきれいなのでクリアニス3回塗りとしました。
内部構造の様子 | 塗装前の外観 | 塗装後 |
パソコン用だしぃ、、、と思って、深夜にパソコンの横で間に合わせの息子用ミニコンポで鳴らしてみると、、、
スカスカ、、あ〜、やっぱり。週末、気を取り直してメインのシステムに接続して鳴らしてみると、、!
低域に強い目の共鳴音があり、低音感に寄与。
中低音にコンコン鳴るこもり音が耳につきますが、エージングゼロ、吸音材ゼロの音出しとしてはまずまず。
これくらいなら、吸音処理とホーン前後の調整でなんとかなりそうです。全体的な印象としては、FE88ESと同じキャラクターが支配的。あたりまえでしょうか?
というわけで、調整中‥‥。
調整もある程度エージングが進まないと、的外れになりかねないので時間が必要です。
ということで、2ヶ月経過したところでの聴感。ここまでで作り立てから変更したところは、ユニット付属のパッキンを使ったこと。
プレスフレームの場合、抜き穴周辺の狭い部分だけで気密性を確保する形になるので、ちょっとした穴の精度が気密性に影響するのではないかと思い当たり、パッキンを使うようにしてみました。
これで、ずいぶんと鳴りっぷりが良くなったようです。また、動かしたときに机が痛むので、底全面に2mm厚のコルクシートを張りました。
この影響は、あまり感じません。低音は不足しているはずですが、パソコンの前で聴いている分には不足は感じません。
PC用につき、他のスピーカーとは違う部屋、違う条件での測定(軸上30度、60cm)。
130Hzから下でレベルが落ち始め、50Hz付近まで約10dB落ち。100以下を潔くあきらめずに、執念深く低いところまで伸ばそうとするとこうなります。^/.^;
至近距離で測っているため、高域の伸びているようすがよくわかります。
思ったよりも、低域の落ちはじめが早いようなこと、中低域(200Hz付近)の盛り上がりも小さいので、空気室を小さくしてホーン長を入り口側に10cmだけ伸ばす予定でしたが、それよりも、中低域のボーボーなる感じを解消するのが先決と、吸音材を空気室に入れてみました。
使用した吸音材は、車の洗車に使うスポンジ。空気室形状に合わせて、10cm角に切って使いますが、厚さが4.8cmと、実に空気室の40%以上を占める大きさ。
ちなみに、当初は13cm×10cmに切ったものを圧縮して入れていましたが、かえって中低域が膨らんでだめでした。
圧縮したことで吸音効果が減少し、空気室を小さくする効果だけが残ったのでしょうか?
帯域バランスは、この口径のドライバーでは必然の中低域で低音感を出す形となっていますが、50Hzまでしっかりしたレスポンスで、マイクで測らずに聴感で凹凸を判断しようとしてもわからないくらい滑らかになりました。(サイン波の聴感なら八角堂より滑らか。)
もう、どんなボーカルを聞いても、馬声に悩まされなくなりました。^/.^
当初の予定通り、シナベニヤだったらどうだったか‥‥確認するつもりはございません。あしからず。