『みどりの手紙』第11号 2006年5月

●巨大ニュータウン計画
大きく方向転換!!


 学研高山第二工区開発について

 高山第二工区ニュータウン開発計画は、バブル期に立てられた計画であり、
 生駒市北部の里山二八八ヘクタール(甲子園球場の約七三倍)を宅地造成して
 二万三千人の町を作るというのが当初の計画でした。
 平成十五年九月議会で、開発は当面南半分と発表しましたが、
 費用負担面であいまいさを残したままになっていました。

 平成十五年夏には、開発の是非を「住民投票」で決めてほしいと、
 署名活動が大規模に展開されました。
 要件の厳しい署名(生駒市の有権者で、印鑑、生年月日も必要)
 を約一五〇〇〇筆集めたにもかかわらず、議会では否決されました。

 しかし、その後オオタカの営巣が発見されたことで、調査のため二年近く
 計画は中断され、再び市長選によって民意を問うチャンスが巡ってきました。
 山下市長の圧勝により、市民の第二工区開発に対する考え方も一定明らかに
 なったのではないかと思われます。そこでいくつかの点について質問いたします。


 一、すでに市長は、事業主体である都市再生機構、奈良県に対して開発中止の
 意向を伝えられました。生駒市が一方的にこの事業から離脱できるのですか?
  また離脱した場合、法的責任は問われないのですか?

 二、開発予定地の跡地利用については、市による買い取りも考えておられるよう
 ですが、買取費用についておおよその目算は出されていますか? また法定外目的税
 の新設も可能性の一つにあげられていますが、具体的にどのようなものですか?

 三、第二工区の市街化区域に課される税負担の軽減措置について、
 どのように考えていますか?

 四、計画区域は、放置された田、畑で里山の荒廃が進み、竹林面積が大幅に
 増加しています。オオタカ保全エリアやその周辺だけでも、とりあえず
 山林の手入れ管理が必要ではないですか?

 五、オオタカ検討委員会で報告された保全エリア二〇ヘクタールではオオタカの
 生息は難しいのではないでしょうか?この二〇ヘクタールは営巣中心域のみの
 面積であり、餌取り場などの高利用域も、ある程度保全地域に含める必要が
 あるのではないでしょうか?

 六、住民投票の位置づけはどのようなものか、市による第二工区の買い取りや、
 そのための法定外目的税の創設を住民投票によって問うこともあるのですか?

 七、都市計画決定された幹線道路(高山南北線、東西線、北回り線)については、
 オオタカ保全エリアの関係でのルートの見直し、あるいは事業そのものの
 見直しの可能性はありますか?





●山下市長の回答

 一について
  高山第二工区開発については、生駒市は具体的な協力の約束はなく、
  努力義務でしかない。従って離脱は可能であり、法的責任もない。

 二について
  買い取り価格については、合意に達することも買い取りの条件になるので、
  現時点では未知の部分が多く、買取面積の試算はしていない。
  買い取りは、他に方法がない時の最終手段である。
  法定外目的税は可能性の一として考えているにすぎない。

 三について
  一八年度は、すでに税負担の軽減措置は行っている。
  一九年度についても引き続き検討する。

 四について
  里山管理については、土地所有者(地権者、都市再生機構など)にお願いする。
  それがダメなら、里山保全ボランティア組織を立ち上げる。

 五について
  保全エリア二〇ヘクタールでは、足りないと思う。

 六について
  開発の是非について、住民投票で問うことはないが、予定地の買い取りや、
  法定外目的税の新設について、検討する必要が生じた際には住民投票も含め、
  市民の意思を問う。

 七について
  オオタカ検討委員会の報告通り、ルートの変更は必要ない。
  しかし、道路整備の必要性自体を再検討する必要がある。





 (有村京子の市議会日誌 3月議会一般質問より)



市長の回答に思うこと

 私は、はっきり言って、この事業は生駒市が協力しない限り、
 まちがいなく頓挫すると思います。

 都市再生機構も、県も、生駒市支出分を補うだけの財政余力がありません。
 必ず生駒市長の同意文書を添付しなければなりません。
 つまり、財政的にも手続的にも、生駒市の協力がなければ、
 この開発計画は破綻します。

 そこからすると、この開発計画は生駒市がキャスティングボードを
 握っていますので、協議の持って行き方によっては、かなり生駒市の意見が
 反映されるのではないでしょうか。市長にはまず、協議の席に着いて、
 生駒市の意向を伝えるべく努力していただきたいと思います。




●予算案について

平成一八年度一般会計予算)三一一億円)は否決されました。そのため、
人件費などの義務的経費や前年度からの継続事業の経費に限定した二カ月の
暫定予算となり、山下市長新提案の事業は執行できなくなりました。


否決された予算
○小・中学校耐震診断・耐震補強工事
○道路・公共施設のバリアフリー工事
○生駒保育園増設、壱分学童保育施設立替工事
○市民公募による行政改革検討委員会の設置
 (口きき・働きかけ防止部会、入札制度改革部会、補助金検討部会)
○図書会館開館時間の延長
○傷がい福祉サービス利用者支援事業、等々
その他多数の予算あり。
 この中には一日も早く実現してほしい項目もあり、誠に残念なことです。
五月中に再び一八年度予算が審議されます、予算の行方がどうなるのか、
是非とも、市民の皆様には関心を持ち続けていただきたいものです。


 今、生駒市は大きな転換期にきています。
 改革の「ともしび」が消えないよう、支える人々が必要です。

 今回の予算に賛成したのは、
  民主市民連合…小笹、福中、有村
  日本共産党…宮内、西、上原
  ビジョン21…井上清の計七名

  反対十三名(新政会・公明党)、棄権三名(ビジョン21)

 今後も山下政権の舵取りの難しさが予想されます。
 





●市民からの質問


 Q 山下市長の公約には、生駒駅前の大型ビジョン事業は打ち切ると
  あったのに、まだ、放映されている。どうなっているのか?

 A 生駒市が税金(年間三二〇〇万円)を使って、市の広報に大型ビジョンを
  使用することは止めました。現在の放映内容は民間企業の宣伝と、
  ニュース、音楽ステージなどです。
 
  大型ビジョンそのものは生駒都市開発株式会社所有であり、
  大株主の生駒市といえども簡単に撤去させることはできません。
  それでは、会社を精算すればいいかといえば、
  生駒市は別の業務(アントレ生駒駐車場経営、アントレ生駒ビル管理)も
  委託しているので、それも当分難しいようです。
  大型ビジョンは、今のところ相変わらず放映されていますが、
  市の税金を節約できたことは確かです。
 





●あとがき

 山下市長がもたらしたもの

 市長が交代して初めての三月議会は、異例づくめだった。

●傍聴人の動き
 議会初日は、朝早くから議会傍聴者であふれかえり、本会議場は早々に満員。
 モニター付きの別室も開会前に満員、入りきれなかった人々は一階ロビーでテレビ傍聴。
 この人の波は初日ほどではないにせよ、会期中絶えることはなかった。驚きである。
 こんなことは今までなかった。

●マスコミ攻勢
 テレビカメラが、議場にほぼ毎日入り込んできた。主役である市長の密着取材だ。
 市長が移動するとカメラを持ったまま報道陣もゾロゾロと従う。まるで「スター誕生!」だ。
 山下市長はルックスもセンスも今風で、マスコミには受けるのだろうか。

●市長の答弁
 就任してからまだ1カ月余りというのに、ほとんど山下市長が答弁に立った。
 しかも理路整然としてわかりやすい。今回は普段よりも一・五倍質問者が多く、
 体力的にも精神的にも大変だったと思う。あまり部長にも答弁させず、
 ほぼ市長一人で対応したというのは大したものだ。

 しかし、あざやかな答弁も、一部強弁に走り詭弁に至るのではないかという危うさも感じた。

●議会の変化
 良い意味での緊張感と活気がでてきた。以前は市長と一部議員との密度の濃さを感じて
 (感じたのは私だけかもしれないが…)、暗たんたる思いがあったが、山下市長は
 すべての議員・政党に対して、等距離を保っているので、議員間の格差がなく、平等で
 気持ちが良い。市長の言うことだから賛成、反対というのではなく、問題点を是々非々
 で判断する本来の議会のあり方をさらに深めていくことになるのではないか。

●高まる世間の関心
 生駒市内はもとより、市外であっても、私の出向く所では必ず山下市長と議会の話題が
 でる。テレビの力は本当に大きい。市長と議長はすっかり有名人だ。
 二人の対照的なキャラクターをマスコミがうまく起用した感じである。
 演出の度が過ぎる場面もあって、見る者の冷静な判断が必要ではないかと思う。

●奈良市への転居
 前市長に二倍以上の得票で圧勝、市民の人気度抜群で「生駒のヨン様」と
 もてはやされた市長は就任1カ月で転居し、市民を少なからず失望させた。
 「ヨン様」が「よそ様」になってしまったのだ。
 当初は非難ごうごうであったが、最近は収まりつつあるようにみえる。

 しかし、年輩者や子育て世代の人々からは今でも厳しい意見が寄せられる。
 市民は、市長が生駒に住むことによって、生駒に愛着を持ってほしいと願っている。
 次期市長選も考えて、事情が許せば、また生駒に戻ってきてほしい。

●むすびに
 山下市長になって、私は本当に良かったと思っている。
 私の政策の多くが、市長の公約と重なり合うからだ。
 以前は私の理念理想など、とうてい叶うべくもないと半分あきらめていた。
 でも今では夢・幻ではなく、にわかに実現への可能性が強くなってきた。

 前の中本市長も、人口・税収が急増した発展成長期の生駒市においては、
 大いなる功績を残されたと思う。しかし、人口も税収も伸び悩み、
 頭打ちになる停滞成熟期に入った生駒市では、大きく方向転換する時期にきていた。
 その役割を果たすべく、彗星のごとき山下氏が現れ、今、その変革を始めだした。

 議員は是々非々で対応すべきものであるが、「是」の部分については、
 市長の政策・提案が実現されるよう、支えていきたいと思っている。