発情期に。

 

 

 

 

ガチャガチャ。

インターホンの音がする前に、鍵を差込んでまわす音がする。

回し終わってから、鍵を抜いて。ポケットに鍵をしまっているのか少し間が開いて。それから

ゆっくりとノブが回る音。

あまりにも慣れ親しんだそのタイミングに、室井は思わず微笑んだ。

(やっと来たか)

玄関の扉が閉まる音を確認して、ようやくキッチンから顔を出した。

相手が、室井を確認してにっこりと笑った。つられて室井も少し笑顔になる。

「ちょっと遅かったんだな。事件か?」

キッチンからパタパタと出てきて、入ってきたばかりの青島が脱いだコートを受け取る。

そのままハンガーにコートを掛けに行く室井を見て、青島は、なんか新婚夫婦みたいだ…

などと考えた。言ったら殴られるので言わないけれど。

「いえ、ちょっと、すみれさんの誘いを断るのに手間取っちゃって」

「断ったのか?可哀想に」

「…本気で言ってんですか、それ?」

「……いや、つい」

「つい、じゃありませんよ。どんだけ苦労したと思ってんです?」

「…すまん」

バツの悪そうな顔をする室井を見て。

「室井さんってかわいいですよね」

「…また何を言い出すんだお前は」

呆れ顔をする室井を見て、またそれもかわいいと思う。重症だな、と思いながらも青島は、

室井の肩をがっしと掴んだ。

「室井さん!!!やりましょう!」

実は、今日の朝からずっと考えていたのだ。約10日ぶりだし。30台男とはいえ健康

優良児だし。やっぱ、好きな人と会ったら…とりあえず。

案の定、室井はぽかんとした顔をして青島を見上げていた。

「…なん…だって?」

「『やりましょう!』!!」

もう一度言うと、室井は今度はもっともっと変な顔をした。

「お前な…前に俺たちが会ったのはいつだ?」

「10日前です」

「そのときも、確かヤったよな?」

「ええ、そりゃもう、一晩中」

「そこまでは聞いてない。で、その前に会ったのはいつだ?」

「その7日前ですね。その時も、確か一晩じゅ」

「だから言うなというのに」

「ラブラブですね、俺たち」

「あのな。…最近、会うたびにヤってる気がするんだが」

「そうですね」

「会う頻度も増してるし」

「…嫌なんですか?」

「いや、会うのは嫌じゃないんだ。…でも、以前は、こんな頻繁にエッチして

なかったろう」

「…そうでしたっけ。でも、ホラ、俺たち、まだ新婚さんじゃないですか!」

「…付き合いだして1年弱だ。普通は、寝る回数が減ってくるもんじゃないの

か?落ち着いて」

「そうですか?」

「なのに何でお前は増えてってるんだ!!」

う〜ん、と頭を抱える室井。

まあいいじゃないですか、と、さっそく床に押し倒そうとする青島の頭を、

せめてもの抵抗にひとつはたいて。

「せめてシャワー入って来い!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わかったぞ」

寝てしまったと思っていた室井がいきなり声を出したので、青島はすこし

驚いた。

気だるげにまぶたを持ち上げると、室井はいつの間にかひじで支える形で

上半身を起こしていた。

「…なにがですか?」

久しぶりの行為の後、若い青島ですらこんなにも消耗しているのに、なぜ

室井はこんなに元気そうな声が出せるのだろう。

「さっきの話だ」

「さっき…?エッチの回数の話っすか」

「ああ。どうしてお前がそんなにヤりたがるのかと思ってな」

「…わかったんすか?」

当の青島にも分からないというのに?

「ああ。それはな、…今が、発情期のシーズンだからだ!」

「…はい?」

「発情期、だ。動物たちは交尾したがる時期だからな」

「…俺は、その辺の犬や猫や馬と同じっすか…?」

「もちろんだ!!」

すがすがしい顔で断言する室井に、青島は少し泣きたくなった。

(獣かい、俺は…)

「そう考えると、なかなか可愛いじゃないか。俺には子孫は産めないけどな」

(あんたなら産めそうだよ)

思ったけど言わない。それこそ後が怖いから。

かわりに、室井の上半身の下に手を滑り込ませた。そして強く抱き寄せる。

バランスを崩した室井は、あっけないほど軽く青島の腕のなかにおさまった。

「…なんだ」

「発情期のケモノくんに、もっかい付き合ってくれますよね?」

とたんに後悔に顔をゆがませる室井。

にっこりと勝利の微笑を浮かべながら、青島は室井の胸にキスをして、

ゆっくりと行為を再開したのだった。

 

 

 

 

 

 


はっはっはっはっは〜!!!

いつもよりちょっとエロいです。当社比2,5倍です。

え、こんなんじゃマダ足りないですか??(汗)

 

ちなみに、発情期っていつなんですか?(爆)