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ん!?  『シークレット・プレビュー』って、それ、何?
一カタログ・マニアの『Mazda Axela Secret Preview』参加記 高橋 徹


 去る10月4日(土)、私はマツダM主催の『Mazda Axela Secret Preview』に参加して来た。 これは、今秋の正式発表・発売が予定されている同社の新製品Cセグメントカー「マツダ アクセラ」を、 Webサイト上での申し込み・抽選を経た人及び販売店・ディーラー推薦の顧客等の限られた人にのみ事前に非公開形式で見せる技術説明会といった趣旨の催しである。
 この手のユーザープレゼンテーションは、過去にはフォルクスワーゲンのボーラの日本導入に際して東京で、またつい最近ではマツダRX-8の発売前に、大阪地区では梅田の某ホテルを舞台に開催されたらしいことは 人づてに聞き及んでいた。これは、クルマメーカーのインサイダーと直接話が出来る、またとないチャンス到来である!
 我々カタログマニアは、昔から「重・厚・長・大」のキーワードに弱い。曰く、”厚手のズッシリと重い‥”、”大判のゴツイやつ‥”等々、カタログにまつわるこれらキーワードには、正直いって知らぬ間にビビッドに反応してしまう悲しさがある。
また、”特別限定モデルの‥”とか、”○×専用の‥”など益々エスカレートの一途をたどるこの傾向のさ中で翻弄されている私は、今回の催しのキーワード《シークレット》に打ちのめされた。 《シークレット》とは、いったい何じゃ? ”ひみつ”? 世間に内緒で”何かイケナイこと”でも行われるのか?なんにせよ、車好きを対象としたとおぼしき《秘密めいた集まり》らしい。ここは一番、なんとしても抽選に当たり、是が非でもその会場に潜り込まねば!!
 私はWebサイトから応募したのだが、ラッキーにも”当り”のメールが自宅のパソコンに届いてからというもの、開催日が待ち遠しく、果たしてどんな催しの内容なのやら、非常な期待を持って当日を待っていた。 その日の朝は、南港ポートタウン内の某所まで地下鉄→ニュートラムと乗り継ぎ、ワクワク・ドキドキしながら会場へと向かった。

 さて、それでは当日の実際のタイムテーブル等を以下に紹介しよう。
13:00集合→13:30スタート→17:15終了・解散、その間、五つの「モジュール」と呼ぶ技術説明の 会場を回る。
@オープニング、A商品概要プレゼンテーション、Bアクセサリー(オプション部品)関係の説明、Cセーフティ(安全設計)関係の説明、Dダイナミクス(操安・ブレーキ)関係の説明、Eデザイン・クラフトマンシップ(細部の造り込み)関係の説明、F実車に直接触り、また併せて競合他車とも比較する、等々の後、最後に開発担当者を相手に質疑応答をする、といったスケジュールが組まれていた。
 会場の受付にて、にこやかなコンパニオンの出迎えを受け、A〜Dの4班に分けられた我々参加者は (ざっと約30名程か?)、首から提げる形式の参加章と催し内容の進行予定表・プレカタログ・アンケート用紙等を挟んだバインダーを交付された。一旦、茶菓の準備の整った待合室でしばらく過ごした後、 「それでは、行っていらっしゃいませー」とのコンパニオンらの見送りを受けて、メイン会場へ送り込まれた。
  そこは小さな体育館といった風情の場所で、内部は照明を落とし、正面には大きなプロジェクターのスクリーンが掛かり、また我々の座るイスの前にはサテン調の布カバーをふんわり掛けられた4台のアクセラが‥。 こっ、これは、まさしくプレス向けの新車発表会の雰囲気と同じではないか?!(わたしゃ、まだ行ったことはないけど‥)大容量のPAを通して流される、MAZDAの最近の広告宣伝ではすっかり耳に馴染んだ”♪ZOOM,ZOOM♪”のテーマに合わせ、イメージ映像が上映され始めた。さあ、いよいよショーはスタートだ!!

司会者の挨拶の後、開発技術者5名が紹介される。そう、Webサイトに写真の出ていたあの人達だ! そして、一斉に4台に掛けられていたカバーが取り払われると、白(4ドア)、赤・青・黄(各5ドア)の現車が我々の目の前に現れた。「ホーッ‥」という溜息ともつかない声が聞こえた(ような気がした)。
 まずは、開発責任者の谷岡主査のアクセラ開発に関する全般的な話がある。きけばこの方、それまでは乗用車開発ではなく直前まで、生産材としての自動車たる小型トラックのシリーズ「タイタン」を担当しておられた由。 いまや国際商品である自動車の中でも、アクセラの殴り込む通称”Cセグメント”は大混戦の様相を呈しているらしい。同氏の話の中に、頻繁に仮想敵としてVWゴルフ、プジョー307、アルファロメオ(具体的な車種には言及されていなかったが147のことか?)の名が挙がっていた。
 COTY(ヨーロッパ・カー・オブザ・イヤー)を取った過去の各車は、いずれもヨーロッパではベストセラーになった、MAZDAはアクセラが満足のゆく出来で完成したので、これをぶつけてCOTYを狙う、との趣旨の威勢の良い話が飛び出す。MAZDAは欧米の市場で勝負に出る!といったことを言っておられた。谷岡さん、この方どうも本気である!

 さてそこまで啖呵を切られると、翻って日本国内はどーなの?と、思わずツッコミのひとつも入れたくもなろうというもの。過去にルーチェHT、カペラCG 4WS、カペラ4ドアセレーブル4WSを続けて乗り継ぎ、MAZDAファンをもって任ずる私としては是非マツダに頑張って欲しい。社長が最近日本人のプロパーに代わり、社内の士気もさらに高まっているやに聞き及ぶが、
ここが踏ん張り所かもね、MAZDAさん!いすゞも乗用車生産をやめてしまった現在、最後に残った国産マニアック自動車メーカーとして、期待してマス。

話を元に戻そう。
さて、各モジュールでの話の内容とは‥、

【アクセサリー】これは後付けオプション品についての説明であった。エアロパーツ等の外装関係、インテリアカラーとコーディネートされたステアリング表皮やウッド調パネルが、プロジェクターの投影で説明される。その後、現品を手に取り品定めに及ぶのだが、改めて最近のウッド調パーツの良く出来た仕上がりに感心する。だって本物の木より木らしいんだもん!これが技術の進歩というものか?そんなことを考えながら、次のステージへ‥。

【セーフティ】ここでははっきり、フォード・ボルボ・マツダ三社共同で開発をした旨の説明があった。特にボルボのノウハウが大きく貢献している、とのことであった。

【ダイナミクス】サスペンション、ブレーキを主体としたカットモデルを前にしての技術解説が行われた。 プロジェクターで投影されたテスト風景の中に、他社車種の性能評価をする場面が有り、BMW3シリーズセダンを使ってサスペンションの動きとボディ剛性のテストがされていた。いまやスポーティーなドライバーズカーとしての評価が定まった感のある3シリーズをベンチマークとしているのか!!と、ここでもMAZDAの本気を感じた次第。

【デザイン・クラフトマンシップ】アクセラのデザインは、日・米・欧の各MAZDAデザインセンターの競争コンペが行われ、結果、ヨーロッパデザインセンター案が採用された由。チーフデザイナーの話の中にもあったが、オリジナル・レンダリングのイメージを
かなりそのまま生産車に反映できたのではないか、とのことであった。実物の5ドア車を見て、私もそう感じた。

ところで、今日の各ステージのなかで、私が一番心待ちにしていたのは、何を隠そうこのステージである。自動車のデザイナーといえば、クルマ好き皆の憧れの職業!!(私だけか‥?) MAZDAのインハウスデザイナーはどんな人が出席して、オモシロイ話が聞けるのか?ルケマン風?クリス・バングル風?はたまた、光岡自動車で『オロチ』をデザインしたブットンだ彼風?(そう、パジャマで会社に出勤したけど、光岡社長に怒られなかった、というアノ逸話のカレです)しかし、現実に我々の目の前に現れた方は、MAZDAを体現したような地味な印象の方でした‥。プロジェクターでスクリーンに投影されたその方の写真も、モデラーと一緒にクレイを削っている姿は、スーツの上着を脱いだだけの白ワイシャツに地味タイ姿だったし‥。いやいや、しかしいい仕事をしたという自信に溢れた言葉を吐いておられたのは、イイカンジでした!

【アクセラ商品説明&競合車比較】さて、各セクションでのブリーフィングを終え、メイン会場へ戻ってみると、先程の4台以外にシルバーの4ドアが一台追加され、また、比較検討の他社商品としてゴルフ「CLi及びインプレッサスポーツワゴン1.5が搬入されていた。
「さあ、それでは皆さん、どうぞご自由にアクセラ各車にふれてみてください!」との司会者の言葉が発せられるや、各参加者は一斉に目の前のアクセラに取り付いたのであった。
会場正面に置かれた4台は人だらけであったので、私は会場後方の地味なシルバーの4ドアのほうへ向かった。

 参加者の誰かが既に運転席に座って何やら検分中であったので、まずは後席の広さを確認してみんと乗り込んだ。天井と頭とのクリアランス等を確認していると、突然右前方ドア付近から「バスン、バスン、バスン、バスン、バスン!!」と、激しくドアを開閉する気配が‥。何やら、参加者のオッチャンの一人がドアの閉まり具合やその音を確認しているらしい様子。おいおいオッチャン、これは白いクラウンとはちゃうねんから‥、と言いたいところをグッとこらえながら、ふと私は最近経験したある事を思い出していた‥

 それは、今年9月に帝国ホテル大阪において新型BMW5シリーズのホテルショー形式内覧会がおこなわれた会場でのこと、会社帰りに同会場に立ち寄った私は、大宴会場に11台も並べられたうちの1台のドラーバーズシートにフロントドアを開けて静かに滑り込んだ。大盛況の会場の人々のさんざめきも、ドアを閉めると一転、静寂に変わった。
さて、と。これがインパネの眺め、これが7シリーズから5にも受け継がれたiドライブのコントローラー、ステアリングの握りはちょっと太めかなア‥、と、ひとつひとつ心を落ち着かせて確かめ始めたその刹那‥。 突然、右後方のドアあたりから空気の圧迫感と供に「バスン、バスン、バスン!!」という大音響が私を襲ってきた!驚いて振り返るとそこには、やはりドアの開閉フィーリングを確かめたいと思しきオッチャンが5シリーズのリアドアに張り付き、仁王立ちの態でドアと格闘していたのである!どーしてみんな、こんなことが気になるの!?理由をおせーて!?なおも5シリーズのドアハンドルを握り締め、肩で荒い息をしているそのオッチャンに向かって、一人私は心の中でつぶやいた‥。

また、話はアクセラに戻る。ドア開閉の実験台状態から脱し、車外に逃れた私は、やや憮然とした面持ちで車両後方にまわり、気を取り直してトランクルームの検分にとりかかった。すると、さっきのオッチャンにここでも先を越されており、あろうことか別のブッタマゲ攻撃を仕掛けられたのだ。オッチャン、すぐそばを通りかかった技術説明員を手招きして呼び寄せ、トランクを
オープナーで開けさせると、次のようにのたまった‥。「おい!ゴルフバッグはいくつ入るんや?」 オッチャン、あんたここにセルシオを見に来たの?技術員の方も困っておられました‥。

この秋、海のむこうでは、Cセグメントの覇者VWゴルフの新型「ゴルフ」」や、オペルの「新型アストラ」登場が報道されている。各自動車メーカーの収益の柱、いわば「コメ」ともいうべき最量販セグメントの戦いは熾烈を極める。そのタイミングで市場投入されるアクセラは、それを覚悟の上で厳しい戦場に敢えて切り込むわけだ。 谷岡主査!アクセラはやっぱりヨーロッパで頑張って売って下さいネ。万一、日本では売れなくとも気にすることはありませんヨ!だって、日本はまだ、『ゴルフ(玉転がしスポーツのほう)オヤジ』や『ドア開閉フェチオヤジ』が幅を効かせ過ぎですもん!!

【質疑応答タイム・アンケート記入】さて、すべてのスケジュールの最後は、皆さんお待ちかね(?)の質疑応答コーナーだ。挙手のあった7〜8名の参加者との間で、質疑応答が交わされた。 そのなかで、記憶にのこっている内容を一部再録すると‥

Q:今後のバリエーション追加の予定は?
A:ターボモデル等の高性能車を追加することは、既定の路線である。また、ボディーバリエーションとしてカブリオ等にも挑戦出来ればと思っている。

Q:ロータリーエンジンを積む計画はないのか?←会場内、爆笑でした。誰かが聞くんじゃないかナァー、と思ってたらやっぱり聞いちゃった人がいました!
A:レシプロ専用車なので、考えていない(キッパリ否定!!)

Q:アクセラと一部エンジンを共用する新世代マツダ車の一台、アテンザとどちらがより売れて欲しいと思うか?
A:※これも答えにくい質問よネエ‥→MAZDAの為には(販売単価の高い)アテンザが売れるほうがよいと思うが、アクセラの開発担当としてはやっぱこっちがより売れて欲しいナー‥と思う、とのアクセラ生みの親の本音も垣間見えるお答えでした。

さて、Q&Aの時間も瞬く間に過ぎ去り、フィナーレの宣言とともに、お開きとなった。
会場出口でバインダーやネックホルダーを返却する祭、お土産の紙袋が手渡された。
中身はアクセラのDVDとキーホルダーで、いわゆる本カタ等は無かった。イベント全体を通して、かなり質の高さを感じていたので、最後の締めがこれではナア、と一カタログ・マニアには物足りなさを感じさせたのであった。

終わってみての感想は色々あるが、「また、こんな催しがあればぜひ出席したい」との思いが強く募る。 そういえば、夫婦連れで参加されていた方も何組かあったが、心ウキウキ・目は爛々のオッチャンに対し、ご婦人の方は恐らくクルマにはとんと興味がない方だったのであろう、最前列で”船を漕いで”おられる姿を見受けた。 やはりこの手のイベントは、興味の無い人には長時間拘束される苦行以外の何者でもないのであろう。 しかし、私らマニアにはとってもオモシロカッタです!

さあ、この文章を読んでいるそこのアナタ、そうマニアのアナタですよ!ここまで読ん『Secret Prview』に興味が湧いたのなら、何をさておいても、同種のイベントに参加されることをお勧めします!!
このACCホームページの各自動車メーカー「リンク」から、《シークレット》な催しを探しに旅立って下さい。 これからは、各クルマメーカーのホームページから目が離せないデスヨ。 旧車に乗るというのは、今では都会でないとできないことなのかもしれません