狂牛病
Mad cow disease

 ウシ海綿状脳症ともいいます。
 ウシに起こる伝達性海綿状脳症(Transmissuble Spongiform Encephalopathy, 
(TSE)、またはBovine Spongiform Encephalopathy, (BSE))。
 プリオンの感染によって起こります。狂牛病は1986年にイギリスで初めて
報告されました。当初の感染牛は17頭だったのが、その後その数は1996年
には累積で15万頭に達しました。羊のくず肉を飼料としてウシに与えて飼育し、
ウシの成長を良くしていましたが、スクレイピーに感染した羊の肉が混入してお
り、そこから感染してしまいました。以後、10年間で感染したウシは15万頭
に達し、ヒトに感染し、致死性痴呆症の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病が報
告されました。
 1988年に、その飼料を禁止したため減少した。しかし、イギリスで禁止さ
れた飼料が、日本に輸入され、2001年に日本で狂牛病が確認されました。

 プリオンタンパクは、脳、脊髄、内臓の一部に存在しており、病原性のプリオ
ンに感染すると、数年を経て病原性プリオンが増加し、病原性プリオンが存在し
ていた部分が空洞となりスポンジ状になってしまいます。

 病原体はプリオンタンパク質の異常型です。プリオンタンパクは健康な人の体
内に存在していますが、病気を引き起こすのは異常な構造を持つプリオンで、こ
れを食べると体内で増えて、脳がスポンジ状になり、中枢神経が侵されてしまい
ます。
 感染した牛や羊の脳に異常プリオンの粒子はたまっていますが、関連遺伝子は
発見できませんでした。遺伝子を持たないので、生命体とはいえないタンパクが、
増殖して病気を起こす事は不可能です。そのため、感染してもすぐに発病しない
スローウイルス(遅発性ウイルス)が異常プリオンをつくっているのではないか
と言われました。
 ノーベル賞を受賞したアメリカのプルシナーは、感染力を持ったタンパク粒子
をプリオンと名付けました。動物脳内では正常なプリオンタンパクが生産されて
いますが、病原体である異常プリオンが入って正常プリオンに接触すると、正常
なプリオンタンパクを鋳型にして異常プリオンに変化します。こうして連鎖反応
的に異常プリオンが増えていきます。そのため、細胞は正常な働きを阻害され、
自滅してしまいます。その結果、脳内に穴があいてしまいます。つまり、異常プ
リオンが脳細胞を破壊して、穴だらけのスポンジ状にしてしまいます。これが感
染と発病の構図です。
 プリオンが感染するのは羊や牛、ヒトだけではなく、20種類近くの動物で発
病がおこるとされています。

 プリオンには不明な点が多く、生きている動物から精度良く異常プリオンだけ
検出する方法は発見されていません。生きたウシの診断は不可能で、防疫は感染
経路の肉骨粉を与えないこと以外にありません。
 また、未だ研究段階で治療法は見つかっていません。

ウシの利用
・皮  :コラーゲン・ゼラチン
・胎盤 :美容飲料に利用。
・牛乳 :牛乳・乳製品
・肉  :食肉
・小腸 :こてっちゃん・飼料
・心臓 :心臓弁
・肝臓 :肝臓エキス
・すい臓:インスリン
・血清 :血清アルブミン
・骨  :骨粉・牛エキス・カルシウム剤
・脊髄 :骨粉・牛エキス・飼料
・脳  :飼料
・目  :飼料
・くず肉:牛エキス・飼料

・脊髄・脳・目・小腸→特定危険部位として、20019/27日から廃棄。焼却
 牛の解体は背中を割っているため、骨髄が肉に入る可能性もないとはいえない。
 病原性プリオンは30分以上煮ても破壊されないため、どんな料理法でも異常
プリオンは残ってしまいます。

1732年:英国でヒツジのスクレイピーが発生。
1921年:英国でクロイツフェルト・ヤコブ病の報告。
1952年:豪は英国からの生きた羊とヤギの輸入を禁止。
1966年:豪は英国からの肉骨粉を輸入禁止。
1981年:日本でヒツジのスクレイピーが発生。
1982年:米ブルジナー氏がプリオン病原体説を提唱。
1986年:英国で狂牛病を確認。
1991年:英国で狂牛病がピークに。
1994年:英国で最初の変異型クロイツフェルト・ヤコブ病患者発生。
1996年:EU委員会が英国からの牛肉を輸入禁止。
2001年:日本で狂牛病が発生。



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