第十一回 策を献じたのはビジクである。 その策は、北海のコウユウと青州のデンカイに援軍を要請することであった。 トウケンは早速書状を書き、デンカイにチントウを、コウユウにビジクを使者に 送った。 ビジクはコウユウに会ったが、そこで黄巾の残党カンガイが攻め入って来たた めにこれを先にかたずける事になってしまう。黄巾と戦っている所に老母の命を 受けたタイシジが駆けつけた。コウユウは彼をリュウビに援軍を要請する使者に した。リュウビらは精鋭3千を率いて駆けつけ、カンガイをカンウが十合ほどで 真っ二つに斬り、賊軍は大敗した。 その後、タイシジは国へ帰った。リュウビはコウソンサンのもとに戻って、兵 2千とチョウウンを借りてトウケンの援軍に駆けつけ、コウユウとデンカイに合 流した。 リュウビは、トウケンから除州を譲りたいと申し出を受けたが、これを断った。 そして、ソウソウに停戦の書状を書いて送ったが、ソウソウはこれをはねのけて 攻め入ろうとした。 しかし、そこに長安から落ち、各地を転々としていたリョフが攻め込んできた 事が伝えられ、カクカの進言でこの場はリュウビに恩を売って兵を引き上げた。 リュウビは、トウケンから再三除州を譲りたいと言われたがこれを断り続けた。 トウケンも諦めて小沛の城に兵をとどめておくことを提案し、リュウビはこれに 従った。 一方兵を返したソウソウは、リョフと対峙した。リョフにはチンキュウが軍師 についており、ソウソウ軍に伏兵を使う事を進言したが、この言葉を聞かずに進 撃した。ガクシンとリョフが戦い、三十合ほどしてカコウトンが加勢に入った。 しかし、リョフの前に二人は敗走しソウソウ軍は総崩れとなった。 ソウソウは夜襲をするが、チンキュウに見破られて大敗し逃げたが、リョフも これを追撃し、ウキンとガクシンがリョフの前に立ちはだかるがかなわず敗走し た。テンイがソウソウを救いだし、諸侯も集まって来たので血路を開いて陣へ帰 ろうとした。 そこへリョフが 「曹賊逃げるな。」 と追いかけて来る。 ソウソウの命はいかに。それは次回で。
第十二回 リョフの前にカコウトンが立ちはだかり、その隙にソウソウは逃げ帰った。 今度はリュウヨウの策で、リョフの城を三手に分けて攻撃したが破れてしまう。 しかも逃げるソウソウとリョフはばったり出くわし、ソウソウはとっさに顔を手 で隠した。リョフは 「ソウソウはどこだ。」 と言うと、 「あの黄馬に乗って行くのがそうでございます。」 とソウソウは答え、リョフはそれを追って行った。難を逃れたソウソウはテンイ に助けられて陣へ戻った。 ソウソウは、自分が火傷を負って死んだことにし、リョフをおびき出して打ち 破った。リョフは逃げ戻って城を固めた。以後、睨み合ったままで動かず、ソウ ソウ軍は兵糧がつきてやむなく撤退し、戦いは自然に休戦となった。 除州ではトウケンが病に倒れて病死した。その後、除州はリュウビに任せられ ることになった。小沛の兵を入城させ、リュウビはトウケンの葬儀を行った。 リュウビが除州を乗っ取ったとソウソウは大いに怒った。しかし、ジュンイク は大を棄てて小につくと諌め、先に黄巾の残党を討って兵糧を得るべきだと進言 した。そして、ソウソウは黄巾の砦を攻めた。そこで、テンイはキョチョと戦い、 キョチョはソウソウに降った。その後、ソウソウは黄巾を平定した。 兵糧を得たソウソウに、テイイクはリョフを攻める事を進言した。そして、兵 を進めた。リョフはチンキュウの言葉を聞かずに進撃してきた。キョチョがリョ フに挑んだが、ソウソウは 「リョフはとても一人では討ち取れまい。」 と言ってテンイを加勢に向かわせた。さらにカコウトン、カコウエン、リテン、 ガクシンが向かった。しかし、六人がかりでも討ち取ることができなかった。さ しものリョフも六人がかりではたまらずに逃げ去った。しかし、リョフが逃げ帰 って来ると城門が閉められ、しかたなくリョフはチンキュウのいる城へと逃げて いった。しかし、チンキュウ達もソウソウに打ち破られ城から逃れていた。 ソウソウはリョフをさんざんに打ち破って大勝した。リョフは落ち延び、途中 でチンキュウ達と合流した。チンキュウはまだソウソウくらいは破れるといい、 リョフは兵をとって返そうとする。 リョフの勝敗はいかに。それは次回で。
第十三回 リョフはリュウビを頼って除州へ行った。リュウビは、除州をソウソウから救 ったのはリョフが背後を突いたからだと言って快く受け入れた。そして、小沛に 駐留することを許した。しかし、チョウヒはリョフが気に入らず襲いかかろうと して、カンウに止められた。 朝廷はリカク、カクシのものとなっていたが、大尉ヨウヒョウの計によってリ カクとカクシは仲違いを始めた。帝と皇后はリカクに監禁され腐った肉や古米し か配給されなかった。リカクは、邪道妖術のたぐいを好み常に巫女をともなって おりカクの諌める事を聞かなかった。カクはリカクの腹心とはいえ君恩を忘れて おらず、天子に 「しばらくご辛抱下さいますよう。」 と天子奪還の心を示した。 カクはリカクの兵に帝からの命であるといって都を引き上げさせ、帝にリカク をおびき出すために大司馬に任ぜさせた。大司馬に任ぜられたのは巫女の力と喜 び恩賞を与えたが配下には何もしなかった。怒った配下のヨウホウとソウカが反 乱を企てるが阻止され、ソウカは殺されヨウホウは西安に落ち延びた。これによ ってリカクの勢いは衰えた。そこにカクシが攻めたてた。そこにチョウサイが大 軍を率いて、リカクとカクシの戦いを止めさせ、帝を弘農に連れた。途中、カク シの軍に追いつかれるが、帝の警護をしていたもとリカク配下のヨウホウがそれ を撃退し、カクシの配下サイユウをヨウホウ配下のジョコウが一合のもとに斬り 落とした。 カクシは敗軍の率いての帰途でリカクに出会い、ともに弘農を攻めた。そして、 帝はヨウホウ、トウショウに守られて落ち延びて行った。しかし、配下のリガク の裏切りによってリカク、カクシに追いつかれてしまう。 漢の天子、いかに危難を逃れるか。それは次回で。
第十四回 ヨウホウはジョコウに迎え撃つように命じ、リガクもそれを見て自ら討って出 た。しかし、ジョコウに一合で斬られ、残兵はけちらされた。かくして、帝は洛 陽に戻ることができた。しかし、洛陽は荒れ果て朽ち果てていた。 太尉ヨウヒョウはソウソウを洛陽に呼んで洛陽を守らせた。 リカク、カクシの軍が攻めてくると、帝はカコウトンに迎え撃つように命じた。 カコウトンとソウコウは敵を撃破した。ソウソウは司隷校尉に任じられた。 カクは、ソウソウ相手では降伏すべきであるとリカクに進言する。しかし、リ カクは怒って殺そうとしたのでカクは単騎で故郷に落ちのびていった。 ソウソウはキョチョ、ソウジン、テンイ、カコウトンらとリカク、カクシを攻 めた。リカク、カクシ軍は壊滅し、討ち取られた者、降参した者は数しれなかっ た。リカクとカクシは落ち延びていったが、行く先もなく山賊になった。 ソウソウは、洛陽が荒れ果てているので許都に遷都を勧めた。これにヨウホウ らが手勢を率いて道をさえぎった。そしてヨウホウ配下のジョコウが前に出た。 ソウソウはキョチョに相手をさせるが、決着がつかず引き分けた。しかし、その 後、マンチョウはジョコウを味方に引き入れることに成功した。怒ったヨウホウ はジョコウを追って出てくるが、ソウソウにやられてエンジュツを頼って落ちて いった。 かくして、許都に帝を迎えて宮殿を建て、ソウソウの思いのままに論功行賞、 罪人の処罰が行われた。 ソウソウは、除州のリュウビの存在を気にしており、ジュンイクの「二虎競食 の計」を取り入れた。しかし、リュウビに見破られてしまう。ジュンイクは、次 に「虎を駆り立て狼を呑ましむるの計」を進言した。ソウソウはこれを取り入れ、 勅命をもってリュウビにエンジュツを討伐させた。チョウヒは禁酒の誓いをたて て留守をあずかった。 進軍したリュウビ軍は、途中エンジュツ配下のキレイと一戦し、カンウとキレ イが一騎打ちをするが引き分けに終わった。キレイは陣に帰って配下のジュンセ イを出すが、カンウに一合いに斬られてしまった。 一方、留守をあずかったチョウヒは、禁酒の誓いを破って酒を飲んで酔っぱら ってしまう。それを諌めたソウヒョウは、チョウヒに 「俺の酒が飲めんのか。」 と責められてしまい、さらにソウヒョウが 「私の婿のリョフの顔に免じて容赦下さい。」 と言って許しを乞うた。するとチョウヒは大いに怒ってソウヒョウを鞭打った。 ソウヒョウはこれを恨んで、リョフに城を襲わせた。チョウヒは酔いもさめない ままに徐州から逃れた。城門のところでソウヒョウを馬もろとも斬り殺し、リュ ウビの所へ急いだ。 チョウヒは、リュウビに一切を話して自ら剣で首をはねようとした。 チョウヒの命はどうなるか。それは次回で。
第十五回 リュウビゲントクは、「義兄弟の契りを交わし、死ぬときは同じと誓ったでは ないか。」と言って、チョウヒヨクトクのあやまちを許した。 そして、軍を引き払って広陵を取ろうとした。しかし、エンジュツコウロの夜 討ちにあって敗退した。そこにリョフホウセンの使者が来て、行き場のないリュ ウビゲントクはリョフホウセンのもとに身を寄せる事になった。 一方、エンジュツの所にソンサクが訪れ、父、ソンケンの大望であるリュウヨ ウ攻めをかなえるため玉璽を質に兵を借りた。進軍中、容姿端麗な男、ソンサク の義兄弟であるシュウユに再会した。ソンサクが事の次第を話すと、シュウユは 二張、チョウショウとチョウコウを紹介した。 ソンサクが兵を率いて到着すると、リュウヨウ配下のチョウエイが迎え撃った。 チョウエイは陣中に火をかけられ、さんざんに破れて敗走した。 ソンサクは、 「夢で光武皇帝のお召しを受けた。」 と言って、リュウヨウの陣にある墓に参詣しに行った。帰りにリュウヨウ配下の タイシジに襲われて一騎打ちになり、お互い一歩も譲らなかった。そこにリュウ ヨウの軍勢が押し寄せ、テイフはソンサクを助けて逃げ帰ろうとした。そこに、 シュウユが手勢を率いて駆けつけたので両者軍をまとめて退いた。 翌日、両軍対峙してタイシジがソンサクに一騎打ちを望んだが、テイフがソン サクを諌めて代わりに馬を出した。両者三十合いほどした所でリュウヨウ軍は、 シュウユに曲阿を襲われたので兵を退いた。ソンサクは追撃して打ち破り、タイ シジは落ちて行った。その後、タイシジは、リュウヨウの仇討ちのために再びソ ンサクと対峙したが、捕らえられてしまい、ソンサクの配下になることを誓った。 時にゲンハクコが、自ら「東呉の徳王」と名乗り呉郡を占領していた。ソンサ クは平定に乗り出し、カントウを出陣させた。一戦交えたゲンハクコはかなわな いとみて和睦を申し立て、弟のゲンヨを使者に出した。ゲンヨは領土折半の条件 を出したが、ソンサクは怒ってゲンヨを斬り殺して城に送り届けた。ゲンハクコ は城を捨てて落ちて行った。ソンサクはそれを追って進撃し、ゲンハクコは略奪 を繰り返しながら逃げていった。 ゲンハクコが会稽まで来ると、会稽の太守オウロウがゲンハクコを助けようと した。これに配下のグホンは、 「ソンサクは仁義の軍であるからそちらに助力するように。」 と進言した。しかし、オウロウは聞き入れずゲンハクコに味方してソンサクと対 峙した。ゲンハクコとオウロウの軍は、ソンサクに打ち破られオウロウは海岸へ 逃げ去った。翌日、ゲンハクコの首は、一人の男によって献上された。ソンサク が名を聞くと、トウシュウといい、彼を別部司馬に任じた。 さて、曲阿の宣城を守っていたソンサクの弟、ソンケンは、山賊に攻め込まれ て苦戦を強いられた。しかし、シュウタイの活躍で死守する事ができた。シュウ タイは十二カ所も突き傷を受け重傷であった。グホンは、以前トウシュウが海賊 と戦った時の大怪我を半月で治したというカダという医者が紹介した。カダはシ ュウタイの傷を一ヶ月で治してしまった。 ソンサクは、江南を平定したのでエンジュツに玉璽の返還を求めたが、 「わしの兵を借りて平定したのに、恩を忘れて玉璽を返せとは無礼な奴。」 と言う。しかし、エンジュツ配下の長史ヨウタイショウは 「ソンサクのことはさておいてリュウビを討つべきです。それがしに一計があり ます。」 と進言する。 さてその計とは。それは次回で。
第十六回 長史ヨウタイショウの計とは、徐州のリョフに兵糧を送って恩を与えリュウビ に加勢させずにおいて、リュウビを討ってからリョフを討つというものであった。 エンジュツはすぐさま準備し、カンインを使者として向かわせた。カンインが 帰ってくると兵を率いてリュウビを攻めた。リュウビはリョフに助けを求め、リ ョフはチンキュウと協議してリュウビを助けることにした。 キレイは大軍を率いてリュウビに向かったが、リョフがリュウビに加勢したの を知ってその背信をなじった。 リョフは一計をもって、リュウビとキレイを対面させた。そして、 「わしの和睦のすすめは、天意だ。百五十歩はなれたところの戟を一矢で射抜い たら戦いをやめよ。」 と言う。キレイは当たるはずがないと言って承知した。リュウビは当たることを 心から祈った。リョフの放った矢は見事に命中し、両軍は兵を退いた。 キレイが帰ってくると、エンジュツは怒って、キレイの「疎きは親しきをへだ てずの計」を用いてエンジュツの息子とリョフの娘の婚姻を計画した。 カンインが使者として参上し、リョフに婚姻の話を勧めた。リョフはこれを承 知し、カンインを客舎に泊まらせた。次の日、チンキュウがカンインを訪れて、 狙いはリュウビの首であることを見破ったがカンインに協力して婚姻の準備を急 がせた。 チンケイもこの計を知ってリュウビが危ないとリョフにその事を伝えた。そし てカンインを許都へ送りつけるよう説いた。そこへチョウヒは山賊を偽って馬を 奪っていると一報が入った。リョフは怒って兵を出してチョウヒの兵に向かって 行った。チョウヒが迎え討ってリョフと百合あまり戦ったが勝負がつかず、チョ ウヒは兵を退いた。リュウビは、チョウヒが馬を奪った事を叱って、リョフに許 してくれるよう頼んだ。しかし、チンキュウが殺すべきだと進言し、リョフもそ う決めた。リュウビは囲みを破って逃れ、途中チョウリョウをカンウが食い止め、 その隙にソウソウのもとに落ちて行った。 ソウソウはリュウビを喜んで迎え入れ、リョフ討伐の約束をした。しかし、そ こへ死んだチョウサイの甥チョウシュウがカクを幕僚にして攻め入ってきた。ジ ュンイクは、 「リョフは官位を進めればリュウビと和睦するでしょう。」 と進言して、ソウソウは、奉軍都尉オウソクをリョフの使者に使わした。そして、 自ら十五万の軍勢でチョウシュウ討伐に出陣しカコウトンを先鋒にした。 カクはチョウシュウに降伏することを進言し、ソウソウに降った。ソウソウは、 カクの弁舌を評価し幕僚に入れようとしたが、チョウシュウを見捨てられないと 断られてしまう。 チョウサイの妻、雛氏を気に入ったソウソウは、チョウサイに見つからないよ うに城外の陣屋に連れ出した。それを知って怒ったチョウサイは、カクの進言を 聞き入れて、コシャジにテンイの鉄戟を盗ませ、陣屋に火を放った。鉄激を盗ま れたテンイは、長柄の槍を持って応戦し、それが使えなくなると素手で立ち向か った。裏手から迫った敵の槍に突かれてテンイは戦死した。しかし、しばらくは 彼が死んでも門をくぐる者はいなかった。 ソウソウはその隙に馬に乗って落ちのび、同行していたソウアンミンは追手に 斬り刻まれ、長子ソウコウはソウソウに馬を差し出し、追手の矢の雨の中で死ん だ。ソウソウは、配下のウキンのもとへたどり着き、身内の死よりもテンイの死 を悲しんだ。 一方、リョフのところに行っていた奉軍都尉オウソクは、リョフを説得してリ ュウビと和睦させ、滞在していたエンジュツの使者カンインを捕らえてチントウ とともに戻ってきた。その後、カンインは斬首にされ、チントウは広陵の太守と されて徐州に戻った。 そこにエンジュツの軍勢が徐州に押し寄せてきた。 さてこの戦いはどうなるか。それは次回で。
第十七回 エンジュツは、ソンサクから玉璽を得て、自らを天子の位を名乗って年号を仲 氏と定めた。 リョフはエンジュツの軍に慌てて協議をした。チンキュウは、チンケイ、チン トウ父子が招いた危機であるから彼らの首を差し出すことを提案した。しかし、 チントウは笑って、一計を献じた。チントウは、エンジュツに不満を持っている カンセン、ヨウホウを寝返らせ、リュウビに援軍を求めた。 キレイ率いる大軍が攻め寄せて来ると、リョフが出て、さらに、カンセン、ヨ ウホウが寝返った。キレイ軍は総崩れになって兵を退いた。そして、退路にカン ウが立ちはだかり、一喝するとエンジュツは慌てて逃げ帰った。こうしてリョフ とカンウの連合軍は勝利を得た。 一方、逃げたエンジュツはソンサクに兵を借りたいと申し出るが、玉璽を横領 したエンジュツに怒って拒否した。 ソンサクは、ソウソウから会稽太守に封ぜられ、エンジュツ討伐の詔を受けた。 ソンサクが兵を起こそうとすると、チョウショウがソウソウに援軍を要請する事 を進言した。ソンサクは、ソウソウにこの旨を伝え承諾を得た。ソウソウはリュ ウビとリョフにも参戦の要請を申し出た。ソウソウが軍を向かわせる途中、リュ ウビがカンセンとヨウホウの首を持って訪れ、 「この者の兵は略奪を働いたので討ち取りました。」 と言った。ソウソウは、厚くねぎらい軍を徐州の境界に進めた。出迎えたリョフ は左将軍に封じられた。ソウソウは、カコウトン、ウキンを先鋒に命じ、ソンサ ク、リュウビ、リョフの連合軍はエンジュツ軍を撃退した。エンジュツは、ヨウ タイショウの進言で持久戦に持ち込んだ。ソウソウ軍は兵糧が不足し、兵の士気 が落ち始めた。ソウソウは、倉官のオウコウを呼んで 「そちの首をくれ。妻子の手当は十分にしてつかわす。」 と言って、兵糧を盗んだ罪で処罰した。兵士の不満はおさまり、一気にエンジュ ツを打ち破った。逃げるエンジュツを追う所、ジュンイクが兵糧不足のために兵 を進めるのを諌めた。 そこにチョウシュウがリュウヒョウとともに攻め込んだという知らせが来て、 ソンサクに書面を送って引き返した。 ソウソウが許都に戻ると、山賊になったリカクとカクシの首が献上され、人民 は皆喜んだ。 ソウソウは、チョウシュウを迎え討ち、キョチョを出してチョウシュウ軍を崩 した。 チョウシュウが退却して来ると、カクは一計を進言した。 さて、その計とは。それは次回で。
第十八回 カクの計は城内に伏兵を置くことであり、ソウソウが城内に入ると一斉に攻撃 をした。ソウソウは慌てて兵を退いた。リュウヒョウは、ソウソウが兵を退いた のを見ると、ソンサクを警戒した。この一戦は全てカクの進言通りに進んだ。 ソウソウが丞相府に帰ると、エンショウからコウソンサン攻めの兵を借りたい という書面が来た。ジュンイクとカクカは 「エンショウ如き恐れるものではありません。リョフ攻略を優先すべきです。」 と進言し、ソウソウはエンショウに兵を貸し与えた。そして、リュウビにリョフ 討伐の加勢を求める書状を使わした。しかし、途中でチンキュウに書状を取られ てしまい、それを読んだリョフは怒って兵を出した。 この異変に気付いたリュウビは、ソウソウに事の次第を知らせて城を固めた。 ソウソウは、カコウトン、カコウエン、リョケン、リテンらに五万の兵を与えて 先行させ、自ら大軍を率いて出陣した。カコウトンは、コウジュンの軍勢とぶつ かりコウジュンと一騎打ちをする。コウジュンは四、五十合いしてかなわず陣に 逃げ帰った。追いかけて陣中まで来たカコウトンは、ソウセイに左目を射抜かれ てしまう。急いで引き抜くと目玉まで抜け出て来たので、 「これは父母の血だ。棄ててなるものか。」 とそのまま呑み込み、ソウセイを突き殺した。両軍の兵士はこれを見て息をのん だ。カコウトンが自分の陣へ帰ろうとすると、コウジュンが全軍で後を追ってな だれかかったのでソウソウの軍勢は討ち崩された。勢いにのってコウジュンはリ ュウビ達の陣に押し寄せた。 リュウビの勝敗は。それは次回で。
第十九回 リュウビの軍はさんざんに討ち崩されて、単騎で落ちていった。 リョフがリュウビの家に駆けつけると、ビジクが出迎えて 「リュウビ殿はソウソウに迫られてやむなく加勢したのです。なにとぞ妻子はお 見のがしを。」 と説得し、リョフは納得して徐州にビジクとリュウビの妻子を住まわせた。 ソウソウはリュウビを保護してリョフ討伐に向かった。 チントウは、リョフとチンキュウの仲があまり良くないことを利用してお互い の兵を闇夜で同士討ちさせた。それを合図にソウソウの軍勢が一斉に攻撃したの で、リョフとチンキュウは徐州に逃げ帰った。しかし、ビジクが城門を閉ざして 中に入れさせなかったので逃げ出すと、退路にカンウが立ちはだかり、リョフは あわてて立ち向かった。そこにチョウヒも加勢し、リョフは血路を開いて配下の コウセイの城に逃げ込んだ。 チンキュウがリョフにあれこれと進言するが、リョフは妻の厳氏や貂蝉の言葉 を重視し、さらには厳氏や貂蝉と酒で心中をまぎらわせていた。そして、以前に エンジュツと縁組結んでいたので協力を求ようとするが、リョフは口先ばかりだ から先に娘を出せと言われた。リョフ自らがソウソウらの囲みを突破してエンジ ュツに娘を渡そうとしたが、かなわず城に戻った。そしてまた酒にひたっていた。 ある日、自分の顔が酒にひたっていたせいで衰えているのに気づき禁酒の令を 出した。しかし、ソウケン、ギゾクがリョフに酒を勧め、棒打ちの罰を受けた。 これを恨んでコウセイ、ソウケン、ギゾクは、赤兎馬を盗みだし、ソウソウに寝 返りの約束をし、白旗を城壁に掲げた。ソウソウが攻め入ると慌ててリョフは応 戦し、敵を退かせた。部屋に戻ったリョフは疲れて椅子の上で眠ってしまい、そ の隙にソウケン、ギゾクは画戟を取り上げてリョフを縛り上げた。ソウソウ軍は そこで一気に城内に押し寄せた。 チンキュウは、ソウソウが殺すのをためらっていたが潔く刑に服した。リョフ は命乞いをし、ソウソウも殺すのをためらったが、リュウビが 「テイゲンを殺したのをお忘れか。」 と言い、ソウソウは処刑を決断した。そこに一言、刑手らに引っ立てられて来た チョウリョウが 「見苦しいぞ。」 と言った。ソウソウはリョフを絞殺した。チョウリョウはソウソウに罵言を浴び せた。怒ったソウソウは、自らチョウリョウの首を切ろうとする。チョウリョウ は首を差し出して待ちかまえる。その時、後ろから 「丞相、お待ち下さい。」 と声がした。 チョウリョウを救おうとしたのは誰か。それは次回で。
第二十回 チョウリョウを救ったのはカンウであった。ソウソウはチョウリョウが忠義の 士であることを知っていたので、戯れただけと言って剣を投げ捨てた。 この後、リョフの手勢は次々と降伏した。 リュウビは大功を立てたので献帝に謁見を許された。そこで中山の靖王の末孫 であると名乗り、献帝が家系を調べさせると叔父にあたることがわかった。リュ ウビは左将軍宜城亭侯に封ぜられた。 テイイクがソウソウに今こそ覇業を成すときであると勧めると、 「朝廷にまだまだ股肱の臣がいるの。様子をうかがってみよう。」 と言って献帝らと巻狩りに出た。 リュウビ、カンウ、チョウヒらも献帝に随行した。 献帝が 「今日は皇叔の手並みを見たいものじゃ。」 と言った。そこへ兎が飛び出し、リュウビはそれをしとめた。献帝はたいそう誉 めた。そして、丘を廻った時に鹿が飛びだした。献帝は矢を三本射たがみな外れ てしまった。ソウソウは 「そなた射てみられよ。」 と仰せつかって弓矢を拝借して鹿をしとめた。諸侯は献帝の矢を見て献帝の射た ものだと思って万歳を称えて集まってきた。そこにソウソウが献帝の前に出て万 歳を受けた。そして、そのまま弓矢は自分の腰にかけてしまった。カンウは怒っ てソウソウを切り捨てようとしたがリュウビはそれを止めた。そして、 「万一仕損じて天子を傷つけてしまうとば我らが罪に陥されてしまうではないか。」 と言った。カンウは 「今日あの国賊を討たなかったこと、必ず禍根を残しましょう。」 と言った。 献帝は還御してソウソウの巻狩りの振る舞いを涙ながらに伏皇后に言った。そ こに伏皇后の父フクカンが現れ車騎将軍の国厩トウショウに密詔を託す事を進言 した。 翌日、献帝はトウショウを呼び、西都での功績をたたえて錦の袍と玉帯を賜り 「帰宅の上、これを調べよ。」 とささやいた。 トウショウはこれを着込み閣を出た。そこに参内してくるソウソウと出くわし た。ソウソウは恩賞の錦の袍と玉帯を見せろと迫り、トウショウはしぶしぶそれ を渡した。ソウソウは密詔がないか調べ、自分ではおりトウショウに 「これを私に譲ってくれないか。」 と言った。 「恩賞の品ゆえ、私が別に作らせて差し上げましょう。」 「いや、貴公が賜った物を取ったりするものか。戯れを申しただけじゃ。」 ソウソウはトウショウに錦の袍と玉帯を返した。 トウショウは帰宅して錦の袍と玉帯を細かく調べたが何もなかった。疲れて机 にうつ伏せになったところに燈心が玉帯に落ち、裏地を焦がしてしまった。焦げ 跡から献帝の密詔が現れ、急いで切り開いて取り出して読んだ。そして、オウジ フク、ゴシラン、チュウシュウ、ゴセキとともに打倒ソウソウモウトクを誓った。 そこに西涼の太守バトウが現れ、巻狩りの一件に怒りを表しともに連判状に名を 連ねた。 バトウは同士を集めるため職員録を調べた。そして、劉氏のところまで調べた とき手を打って、 「この人こそ、その人だ。」 一同名を尋ねると、バトウの言葉は。それは次回で。