第一回 漢朝は高祖が白蛇を斬って義兵を興し、天下統一をしたのに始まり、後に光武 帝の中興があって、以来献帝まで伝わり、ついに三国に分かれた。 このたびの乱の源は、桓帝と霊帝の二帝に始まったといえる。桓帝は正義の士 を弾圧し宦官を重用した。桓帝崩じて霊帝即位するや、大将軍トウブ、大傳チン パンが補佐に当たった。宦官ソウセツらが権力を持ち大将軍トウブ、大傳チンパ ンが誅滅を謀ったが殺害され、宦官の力は専横きわまった。 建寧二年(169年)、温徳殿にて青色の大蛇が現れ、すさまじい雷雨となり 雹までまじえて夜半まで降り続いた。倒壊家屋は数しれなかった。 建寧四年(171年)、洛陽に地震があり、大津波もおそった。 光和元年(178年)、雌鶏が雄になった。五原の山々に激しい山崩れがあっ た。 このような事件が重なり、帝が臣下に原因を尋ねたところ、議郎サイヨウが女 子や宦官が政治に関わるためと上奏した。しかし、その上奏を宦官ソウセツがひ そかに読み、サイヨウを罪に陥れた。 その後、チョウジョウ、チョウチュウ、ホウショ、ダンケイ、ソウセツ、コウ ラン、ケンセキ、テイコウ、カウン、カクショウら宦官は十常侍と呼ばれ、帝は チョウジョウを信じて敬い「父上」と呼んだ。これより、政道日々に乱れるに至 った。 時に鉅鹿郡にチョウカクという秀才がおり、一日、山中で南華老仙に出会い太 平要術を与えられた。中平元年(184年)正月、疫病が流行したときに護符と 水を施した。そして、自ら大賢良師と称した。弟子は500人、各地を渡り歩い た。 「蒼の世はすぎ黄の世だ。甲子の年は天下大吉だ。」 と言い広めた。 チョウカクは、バゲンギに金帛を持たせてひそかに宦官のホウショと結んで内 応を頼もうとしたが、弟子のトウシュウが謀反の事を朝廷に密告した。大将軍カ シンがバゲンギを打ち首にし、ホウショ達を獄に落とした。チョウカクは、事が 露見したので、にわかに兵を挙げて、自ら天公将軍、弟のチョウホウを地公将軍、 チョウリョウを人公将軍として乱を起こした。人はみな、黄色の布で頭をくるみ 黄巾と呼ばれた。その数、4、50万。 時の大将軍、カシンは帝に上奏し、各地の乱を抑えようとした。中郎将ロショ ク、コウホスウ、シュシュンを討伐に向かわせた。 チョウカクの軍が幽州の境界を侵した時、幽州太守リュウエンは配下のスウセ イの進言で義兵を募集した。その高札をみたリュウビはそこでチョウヒと出会っ た。そして酒場でカンウに出会い意気投合した3人はチョウヒの屋敷で義兄弟の 契りを交わした。 「生まれた時は違っても、願わくば死す時は同じに。」 と誓いあった。 そして、鍛冶屋でリュウビは雌雄一対の剣、カンウは青竜円月刀、チョウヒは 鋼の矛を造らせた。総勢500人ほどの義勇兵を集めリュウエンの所へ行った。 リュウエンはスウセイに命じ、賊の討伐にリュウビらを向かわせた。敵の副将、 トウモをチョウヒが討ち、大将テイエンシをカンウが討った。そして、大勝をは くして帰陣した。 次の日、青州太守キョウケイからの加勢の要請に、リュウエンはスウセイに5 千の兵を授けてリュウビらと向かった。これも討伐し、リュウビらは引き上げる 時、手勢500で中郎将ロショクの加勢に向かった。中郎将ロショクの命により、 コウホスウ、シュシュンの加勢に向かった。到着した頃にはソウソウらによって 鎮圧されており、再び中郎将ロショクの所へ戻ったが、中郎将ロショクは軍情視 察に来た宦官サホウに賄賂を贈らなかったために讒言をして罪に陥れ、護送され る所であった。頼る者のいなくなったリュウビらは故郷に引き返した。 途中、中郎将ロショクの後を継いだ中郎将トウタクが、黄巾に討ち崩されてい た。そこにリュウビ達が加勢し難を逃れたが、中郎将トウタクはリュウビに官職 のないのを知ると手のひらを返したようにすげなく扱った。怒ったチョウヒは本 陣に駆け込んで中郎将トウタクを殺そうとする。 さて中郎将トウタクの命は?それは次回で。
第二回 トウタクを殺そうとしたチョウヒをあわててリュウビとカンウが引き止めた。 「我らは生死を誓った仲。役人を斬って追われよりここを去ろう。」 と言い、チョウヒも 「それなら、腹の虫もいくらかおさまる。」 と、その場を去る。 3人は手勢を引き連れて、シュシュンのもとで戦う。 チョウカクの弟、地公将軍チョウホウの軍と戦い、副将コウショウをチョウヒ が討ち取る。しかし、深く敵陣へ切り込めばチョウホウは妖術にて撃退する。シ ュシュンの命を受けたリュウビは、妖術を封じる術を用いて再びチョウホウに戦 いを挑む。術が破れたチョウホウは退却した。 そのころ、敗北続きの中郎将トウタクにかわって、コウホスウが人公将軍チョ ウリョウを破った。この時すでに天公将軍チョウカクは病死しており地公将軍チ ョウリョウが後を継いでいた。そのチョウリョウもコウホスウに斬られた。コウ ホスウはその功で車騎将軍に任ぜられた。 シュシュンもこれを聞き、人公将軍チョウホウを攻めたてていたが敵将ゲンセ イがチョウホウの首を献じ降参した。 かくして官軍により黄巾の乱は平定された。 各地に残る黄巾の残党をシュシュン率いるリュウビ達がけちらし、途中ソンケ ンとともに活躍した。シュシュンが都に帰ると車騎将軍に封じられ河南の伊に任 ぜられた。そしてソンケンはつてをもとめて別郡司馬に任ぜられた。しかし、リ ュウビには何の沙汰もない。 街中でリュウビは郎中チョウキンの車と行き会い、自分の功績を訴えた。郎中 チョウキンは直ちに帝に 「黄巾の乱の発端は十常侍の悪政にあり、その乱を鎮めた者達に恩賞が与えられ ておりませぬ。」 と上奏した。しかし、十常侍は 「郎中チョウキンは陛下を欺く賊にございます。」 と上奏し、郎中チョウキンは追放された。十常侍は功労のあった者が官を授けら れなかったのを恨んでこのような事にならないように、リュウビに小さな官職を 授けた。こうしてリュウビは中山府安喜県の県尉に任ぜられ役所に着任した。1 ヶ月もするとその善政に民衆はなついた。 4ヶ月ほどすると、都からの視察の督郵がリュウビを訪れた。そして賄賂を要 求したが、これを断ったために督郵の怒りを買い官職を召し上げられた。これに 怒ったチョウヒは督郵を打ち据えた。一度は止めたリュウビだがこのままでは漢 のために立ち上がった意味がないとカンウに言われ、官印をはずして代州へ行っ た。 代州でリュウカイのもとに身を寄せ、リュウカイはリュウビが漢王室の血を引 くと知ると幽州牧リュウグに紹介し反乱を鎮圧に向かわせた。リュウビは、これ を鎮圧した功績により平原県令に着任した。 中平六年(189年)夏、霊帝の病気に伴い大将軍カシンが後事を議するため に宮中に向かった。その途中で、十常侍のケンセキが命を狙っていることに気付 き引き返した。すでに霊帝は崩御しており十常侍のケンセキが協皇子をたてよう としており、これを大将軍カシンはエンショウ率いる5千の兵と、ジュンユウら 三十余人の重臣を従えて宮廷に入るや霊帝の柩の前で太子弁を擁立して皇帝に即 位させた。 式が終わるや、エンショウは、十常侍ケンセキを討ちに乗り込んだ。十常侍カ クショウは十常侍ケンセキを討った。何皇后は 「争いの発端の十常侍ケンセキは討たれた今他の者に罪はない。」 と争いをやめさせた。たが、エンショウは、宦官を根絶やしにすることを勧めた。 そして、大将軍カシンに諸国に檄を飛ばし英雄達を集結させるよう進言した。 「このような事になんと大げさな。」 一同声の主を見ればソウソウ。 さて、ソウソウは何を言うか。それは次回で。
第三回 「宦官が国の大事をあやまったことは今に始まった事ではない。その元凶を除 けばよく、諸国の兵を集めるに及ばぬ。」 とソウソウは言った。しかし、大将軍カシンはこれを聞かず密詔を飛ばした。 十常侍は、何太后にすがり仲裁を求めた。そして、何太后は大将軍カシンを宮 廷に参内の詔を出した。大将軍カシンはエンショウ達を連れて参内するが、一人 で中にと言われ、憶することなく門をくぐった。十常侍チョウジョウは董太后殺 害の罪で大将軍カシンを殺害した。 エンショウ達は門前で大将軍カシンが謀反の罪で殺された事を知り、待機させ ていた兵で宮中になだれ込み宦官を全て抹殺した。 その中で十常侍チョウジョウ、ダンケイ、ソウセツ、コウランは皇太子と陳留 王を無理矢理連れ出して逃げたが追手に追いつかれてしまう。しかし、帝と陳留 王の姿がなく兵士達は八方を捜した。 この時、西涼の刺史トウタクは大将軍カシンの密詔に従って洛陽を目指してお り、その途中でこの二人を保護した。そして、その軍勢を率いて洛陽に入城し、 わがもの顔に振る舞った。 さらに、酒宴で今の帝を廃して陳留王を帝に立てようとした。皆はトウタクを 恐れ言葉もなかった。しかしそれに怒ったのは荊州の刺史テイゲンであった。ト ウタクは従わぬ者は斬ると息巻いていたが、軍師リジュはテイゲンの後ろの男を 見て諌めた。その男、リョフという。 その場は、リョフを恐れた軍師リジュの進言によってトウタクは姿を隠した。 トウタクはリョフを部下にしたいと言い、リシュクは金と赤兎馬を持って説得 にあたった。リョフは養父テイゲンを斬ってトウタクのもとに駆けつけた。 再び、酒宴の席にてリョフと甲冑兵千人を立たせて、今の帝を廃して陳留王を 帝に立てようとした。 これに怒ったのはエンショウ。またもトウタクは従わぬ者は斬ると怒る。 テイゲン大儀に命を落とし、エンショウ歯向かって危うし。 さて、エンショウホンショの命は。それは次回で。
第四回 「大事が決まっていないのに、みだりに人を殺してはなりませぬ。」 と、またもトウタクを諌めたのは軍師リジュ。エンショウは宝刀をひっさげたま ま落ちて行った。 「エンショウは策は企てるが実行力に欠ける男。渤海郡の太守にでもしてやれ ば罪を免れたことを喜ぶでしょう。」 と重臣達に言われトウタクは。エンショウを渤海郡太守にした。 ついに陳留王を帝にし、少帝、何太后を幽閉した。その後、軍師リジュにより 少帝、何太后は毒殺された。 洛陽はトウタクのものとなり、悪逆非道の世となった。 司徒オウインの誕生日の日。旧臣を集めた席で、司徒オウインは激しく泣き出 した。一同驚いて問うと、 「実は今日は私の誕生日ではありません。話をしたくとも疑われてはと、かく申 したのです。漢帝国がトウタクの手で葬られようとしているのに泣いたのです。」 と、司徒オウインは言う。これに一同も涙を流した。 と、一人、笑う者がいる。 「朝廷の大臣諸公が、夜は夜で泣きあかし朝になれば夜まで泣きとおされて、ま だトウタクを泣き殺すことが出来ぬのでござるか。」 見れば、ソウソウである。 「それがし、ご一同がトウタクを殺す計をなにもない事を笑ったまで。」 一計を献じたソウソウは、司徒オウインより宝刀七星の剣を授かった。 ソウソウは、トウタクのもとに参じるが傍らにリョフがおり隙がない。ソウソ ウに馬を与えるためにリョフが席を外したときに七星の剣を抜き暗殺を企てた。 しかし、鏡に映ったソウソウを見たトウタクは 「何のまねだ。」 と問うた。 「宝刀所持しておりましたので献じようと思ったのでございます。」 とソウソウは答える。 リョフの連れてきた馬を見て、試乗したいといってそのまま東南の方へ走り去 った。トウタクはしばらくして追手を放った。 ソウソウは、中牟県の関所で捕らえられてしまうが県令チンキュウに助けられ た。そして、2人で故郷に向かった。途中、商人のリョハクシャに世話になるが、 リョハクシャの留守に 「ふん縛って殺したらよかろう。」 と言う声に、殺されると思い皆殺しにしてしまった。廚をさがすと豚が一頭縛っ てある。2人は馬に乗って逃げた。途中、リョハクシャに会うが、これも殺して しまう。チンキュウ問えば、 「家の者が殺されているのを見れば黙っておるまい。もし人を集めて追って来れ ば大変なことになる。」 と言う。チンキュウは何も言えない。 その夜、ソウソウが宿で眠れば、チンキュウ 「これほど残忍な男とは。このまま生かしておけば、必ずや後の禍いとなるであ ろう。」 と白刃をかざす。 さてソウソウの命はいかに。それは次回で。
第五回 ソウソウを殺そうとしたチンキュウだが、ここで彼を殺せば義が立たなくなる と思い直しその場を去った。ソウソウが気が付いた時には彼の姿はなく、急いで 陳留の家へ戻った。 そして、兵を整え諸国に檄文をとばした。その中の一人、北平太守コウソンサ ンは、平原県にさしかかったときにリュウビ達と合流した。 四代つづけて三公の位たった家柄のエンショウを盟主に立てて、弟エンジュツ に兵糧を任せる。先陣にはソンケンが立つ。 リョフは先陣に進み出るが、カユウも 「鶏をさくに何ぞ牛刀を用いんや」 と言う。トウタクは大いに喜んでカユウに歩騎5万を授けて迎え討たせた。ソン ケンの軍勢はカユウの副将コシンを討ち取り、関門に殺到したが、関の上から矢 や石が降り梁東に陣をかまえた。そして、エンジュツに兵糧を求めるが、これを 拒否されてしまう。その隙にカユウに攻められ退却を余儀なくされた。ソモは、 ソンケンの赤い頭巾をかぶってカユウの軍勢を引き寄せた。ソンケンはその隙に 逃げおおせる事ができたが、ソモはカユウに斬られてしまった。 次に、エンジュツ配下ユショウが名乗りを上げるが、カユウと三合せずに討ち 取られてしまった。カンフク配下ハンポウが大斧で挑むがこれも討ち取られる。 エンショウが 「我がガンリョウ、ブンシュウがまだ来ていないのが残念じゃ。」 というと、 「それがしカユウの首を献じましょうぞ。」 とカンウが名乗り出た。カンウは、カユウの首を持ってすぐさま戻ってくる。陣 営の一同は賞賛するが、エンジュツは、足軽風情が出しゃばるなと怒る。そして、 リュウビらを陣屋に引き取らせた。ソウソウはひそかに人をやって、三人を慰め た。 エンショウ達は、虎牢関へ兵を進めるがリョフと対峙した。河内太守オウキョ ウの名将ホウエツが出るが討たれ、オウキョウ勢は大敗してしまう。上党太守チ ョウヨウの配下ボクジュンが出るが、一撃に倒されてしまう。北海太守コウユウ 配下ブアンコクが出るが、腕を切り落とされる。逃げるブアンコクを追ってリョ フが来ると、全軍ブアンコクを助けに出て、リョフは引き返した。 再びリョフが出てくると、北平太守コウソンサンが迎え討つ。数合いする間も なく、コウソンサンは逃げ帰るが途中で迫られて、間一髪、チョウヒに助けられ た。リョフはコウソンサンを棄ててチョウヒに向かった。戦うこと五十合、勝負 がつかずにカンウが加勢に入った。それでも三十合してもリョフは倒せず、リュ ウビがさらに加勢に入った。この戦いを将兵達は酔ったように眺めるばかり。リ ョフは応戦に疲れ馬を引く。 これをチョウヒが追って関の下まで行くとトウタクがいる。チョウヒは馬に鞭 をあて、関に駆け上がってトウタクを捕らえようとする。 賊を討つにはまず頭から。さてこの勝負どうなるか。それは次回で。
第六回 チョウヒは関の下まで迫ったが、矢石が雨のように降り注ぎやむなく引き返し た。諸侯は三人の勲功をたたえて、エンショウに勝利を報じる使者をたてた。 一方、トウタクは、洛陽の財を全て持ち、民百万を連れて洛陽を焼き捨てて長 安に遷都をした。 洛陽に入城した一同は焼け落ちた洛陽で休息するが、ソウソウの軍は追撃を開 始した。しかし、ジョエイとリョフに阻まれ大敗をする。ソウソウはジョエイに 矢傷を負わされ、死を覚悟するが、重臣に諌められて落ちて行った。カコウトン は、追ってくるジョエイを倒し、追手をっさえぎった。こうしてソウソウ軍は五 百騎余りで敗走した。 洛陽ではソンケンが宮廷の井戸の中から玉璽を見つけ、病気と偽って長沙への 帰路についた。ソウソウもエンショウ達諸侯に野心があるのを見抜き手勢を率い て去った。諸侯も統制をなくして各自国へ帰ってしまう。 ソンケンは、玉璽を持っていることを見抜かれリュウヒョウに道をさえぎられ てしまう。 ソンケンはいかにここを抜けるか。それは次回で。
第七回 テイフ、コウガイ、カントウの三人の活躍によってリュウヒョウの追撃の危機 を脱したソンケンだが、この一件以降、リュウヒョウとは多々対峙することにな る。 エンショウはカンフクの領土を狙っており、コウソンサンに共同で攻める事を 提案した。コウソンサンはこれに賛同して兵をおこした。その裏でカンフクにコ ウソンサンの事を伝えると、カンフクの配下シンピョウはエンショウに州刺史の 任を譲ってコウソンサンを迎え討つ事をカンフクに進言した。 エンショウはこれを受けカンフクの領土を乗っ取ることに成功した。しかし、 コウソンサンは大いに怒ってエンショウと対峙した。コウソンサンはブンシュウ と切先を交えたが、十合余りでかなわぬと逃げる。追ってブンシュウがコウソン サンをしとめようとしたとき、一人の若武者が割って入った。そして、ブンシュ ウと五、六十合しても勝負がつかず、そこにコウソンサンの部下が来たのでブン シュウは逃げた。コウソンサンはその若武者に名たずねると、エンショウの手勢 だったが見限って参じてきた、チョウウンという者であった。 次の日、コウソンサンはエンショウを攻めたて、チョウウンは単騎で敵をけち らした。陣へ帰ったコウソンサンはリュウビらにチョウウンを紹介した。 しばらくしてこの戦いを、長安のトウタクは天子の詔を発して停戦させた。 エンジュツはエンショウに馬千頭を貰いたいというが断られ、さらにリュウヒ ョウに兵糧20万石の借用を断られる。そこで、ソンケンに、以前にリュウヒョ ウが帰路を絶ったのはエンショウのはかりごとであるといい、自分はエンショウ を、ソンケンにはリュウヒョウを討つべきであると言った。 ソンケンはこれに賛同して兵をおこした。立ちはだかるコウソを破っって退却 させた。サイボウが一万の兵を率いて布陣してきたが、テイフはサイボウと数合 して敗走させた。しかし、カイリョウの策によってリョコウが待ち伏せをしてお り、ソンケンは山中に死してしまう。 城中からコウソ、カイエツ、サイボウらが討って出て、コウガイはコウソを生 け捕りにする。テイフはソンケンの長男ソンサクを守り血路を開きリョコウを突 き殺す。それぞれ軍を引いて、ソンサクは漢水に戻ってから初めて父、ソンケン の死と屍が敵の手にあることを知った。 ソンケンの屍と捕虜コウソの交換をコウガイが提案し、ソンサクはカンカイを 使者に出す。カンカイは両国の和のために交換を求めたが、カイリョウがリュウ ヒョウに斬り捨てることを進言する。 ソンケン落命し、カンカイの命はいかに。それは次回で。
第八回 カイリョウの進言にリュウヒョウは、義が立たぬと言ってカンカイを送り返し てソンケンの屍とコウソの交換を約束した。 ソンサクは父と手厚く葬った。 トウタクは長安でソンケンの死を知って胸のしこりが一つ落ちたと安心し、息 子ソンサクの事は気にしなかった。 暴政極まるトウタクに司徒オウインが館で泣いていると、我が子のように可愛 がっていた歌い女貂蝉がその訳を聞いた。そして、貂蝉は命を捨てる覚悟をして、 オウインの連環の計を用いる。 オウインは自分の館にリョフを招いてもてなし、娘の貂蝉を紹介する。リョフ は貂蝉をとても気に入り、オウインは輿入れの約束をした。 数日後、オウインはリョフがいないのを見計らって今度はトウタクを館に呼び、 宴席を設けて貂蝉の舞を披露した。トウタクは貂蝉を気に入り、オウインは貂蝉 をトウタクに献上した。 リョフがこれを知り怒ってオウインに問うと、 「太師様が、今日は吉日じゃ。貂蝉はわしから将軍にやろう。とおっしゃって連 れて行かれました。」 と答えた。リョフはそれに納得してその場を去った。 その後は、トウタクは貂蝉を可愛がり、政務もおろそかにする有り様。一方、 貂蝉を取られたリョフは無念に思う。 ある日、リョフは宮中で貂蝉に出会った。貂蝉は涙ながらにトウタクのものに されてしまった悲しみの心を打ち明け、今でもリョフを慕っている想いを語った。 リョフは、必ず助け出し妻とする事を約束した。そこへトウタクがやってきて、 貂蝉とリョフの仲を見て怒る。リョフは慌てて逃げ出し、トウタクは重い体を動 かして追いかける。と、そこでトウタクは慌ただしく駆け込んできた男とぶつか って転んだ。 この男、一体何者か。それは次回で。
第九回 トウタクを突き倒した男は軍師リジュであり、リョフを殺そうとしているのを なだめに来た時にぶつかってしまったのである。トウタクはリジュに説得されて 思いとどまった。そして、リョフに貂蝉を与えれば一層忠誠を誓いましょうと進 言されて、それを承知した。 その後に、貂蝉に何故リョフに会ったのかと問うと、貂蝉は 「将軍に無理矢理連れられてしまったでございます。」 と答えた。そして、リョフホウセンの妻にする事を貂蝉に言うと、貂蝉は 「あんな下郎と一緒になるならば死んだ方がましでございます。」 と泣いて答えた。トウタクは、貂蝉を絶対に離さない事を誓う。そして、リジュ にリョフの罪は咎めないのでなだめてやってくれと言うが、リジュは 「女に惑わされてはなりませぬ」 と助言する。これにトウタクは 「自分の妻を息子にやれるか。」 と怒った。リジュは引き退がってきて、天を仰いで嘆息した。 リョフはオウインに会い胸の内を話した。すると、オウインは、トウタクを倒 すことを話し、リョフもこれに賛同した。そして、官を昇らせてもらえないで不 満のあるリシュクも賛同し、彼がトウタクを宮中におびき出させてた。そして、 リョフはトウタクを討ち取った。 トウタクの一族は皆殺しにされ、軍師リジュも殺された。 一方、難を逃れていたリカク、カクシ、チョウサイ、ハンチュウは許しを乞う が受け入れられず、幕僚のカクの進言によって長安に攻め上った。これをリシュ クが迎え討つが、リシュクはさんざんにやられて敗走し、リョフのもとに帰った。 リョフは怒ってリシュクを斬って、自ら進撃して敵を撃破していった。しかし、 その隙に長安はチョウサイ、ハンチュウらに落城されそうになった。リョフはオ ウインに長安から逃げることを勧めたが、オウインは残ってリカク、カクシらに 殺された。 リカク、カクシは 「ここまで来たら天子も殺して国を乗っ取ろう。」 と決め、宮中に乗り込もうとする。 さて、献帝の命は。それは次回で。
第十回 リカク、カクシは、献帝を殺そうとしたが、チョウサイ、ハンチュウに諌めら れ官位を貰って引き下がった。 大権を手にしたリカク、カクシの手によって再び暴政が始まり、人々は虐げ、 意に従わない者は斬り捨てられた。献帝は密奏をバトウ、カンスイに送って、賊 を平定しようとした。リカク、カクシはカクの進言を聞かずに出陣するが、バト ウの息子バチョウにオウホウを討たれ、リモウを捕らえられて殺されてしまい、 さんざんにやられた。そして、リカク、カクシはカクの聡明さに気付いた。 リカク、カクシはカクを重用し、カクの戦略によって、バトウ、カンスイ軍を 大敗させた。バトウは息子バチョウの奮闘でチョウサイ軍から逃げるがカンスイ はハンチュウに捕まってしまった。しかし、カンスイはハンチュウに釈放された。 リカクは大いに怒ってハンチュウを斬った。そして、これを見たチョウサイは兵 を集めて弘農へと帰ってしまった。 その後、カクが人民を安じて賢人豪族を用いることを勧めたので都は少しは生 気を取り戻すことができた。 ところが、青州の黄巾の賊、数十万が立ち上がり、これを平定するためにシュ シュンがソウソウを推挙した。ソウソウはこれを平定し、鎮東将軍に封ぜられた。 その後、ソウソウのもとにジュンイク、その甥のジュンユウが参じた。そして ジュンイクの推挙でテイイクが、テイイクの推挙でカクカが、カクカの推挙でリ ュウヨウが、そしてリュウヨウの推挙でマンチョウとリョケンが参じた。リョケ ンの推挙でモウカイが推挙され、その他多くの者がソウソウのもとに集まった。 鎮東将軍になったソウソウは一族を呼び寄せるが、途中、除州のトウケンの配 下で元黄巾であったチョウガイに父を殺されてしまう。ソウソウは兵3万で除州 に攻め入った。途中でチンキュウに出会い、 「ご尊父をあやめたのはチョウガイでトウケン殿のあずかり知らぬ事。領民にな んの罪があるのですか。」 と言わた。しかし、以前ソウソウを見捨てて逃げたので、チンキュウの言葉は全 く聞き入れられなかった。 トウケンの臣ソウヒョウは迎撃を勧め、トウケン軍は迎え討った。ソウヒョウ は、カコウトンを迎え討ったが、狂風に襲われて退却する事に。 トウケンが 「我が身と引き替えに領民を助けよう。」 と言うと、一人の男が 「私にお任せを。」 と進み出た。 この男は一体何者か。それは次回で。