椎名作品二次創作小説投稿広場


その光の先に

STAIRWAY TO HEAVEN


投稿者名:カラス
投稿日時:06/ 7/24

彼は夢を見ていた、
淡い、かすかな、それでいてやわらかい光の筋が、彼の意識のなかで、浮かんでは消え、そして浮かんでは消えていた。その光の軌跡は、蛍のそれとよく似ていた。

やがて、光は消え失せ、彼の意識は深い闇の中へゆっくりと、静かに堕ちていった。


「・・・シマ・・・・」

「ヨ・・・シマ・・・横島」
・・・誰だ?
「横島、起きなさい。横島。」
・・・誰だよ、俺は今眠たいんだ、静かにしいてくれ。
「・・・あぁ〜〜!もう、じれったいのぉ、起きろゆうとんのが分からんのか!このボケェ!!」
「は、はいいぃ!!!?」
彼、横島忠夫は目を覚ました。すると、彼の目の前には光り輝く、神々しいオーラを放つ二つの人影があった。一人は絹のようなゆったりとした衣装を身にまとい、もう一人は背中に十二枚の羽を背負い、悠然と彼の前に立っている。いや立っている。という表現は少し不適切かも知れない。なぜなら彼ら三人がいるこの空間は漆黒の闇に覆われていて、どっちが上でどっちがしたか、それすらも判断出来ないのだから。
現に、今横島は彼ら二人を基準にするならば、反対、逆さまに立っていた。
「へ?あんた達だれ?ッていうかここは?・・・うわ!なんで俺だけ逆さまなんだ!っつうか地面どこ?地面どこ?地面どこ????」
泣き叫ぶ横島。
「ここはあなたの中、正確には深層意識の中です。ここには元々、重力という基点がありません。ですから当然地面も無い。どうかご安心・・・」
「いやぁぁぁぁっぁ・・・!!もしかして俺死んでしもたんとちゃうん?」
「・・・あの・・・」
「いややぁぁぁぁ!!死ぬ前に裸のね〜ちゃんと一緒にジョニーBグッド歌いたかった〜〜〜!!!」
「・・・お〜い・・・」
せっかくの説明もむなしく、当の本人はまったく聞いて・・・いやその前に完全にパニクっていた。
「・・・聞いてませんね。」
「・・・オゥラ!ボケェェェ!!!!!何べん言わすんじゃ!静かにせぇ言うとんのがわからんのかぁぁぁ!!!いてまうぞこらぁ!!!」
「は、はひ!?」
背中に羽が生えた、なぜか関西弁の男に突っ込まれ、ビクッと身体を強がらせ、泣き止む横島。
「こら!さっちゃん!さっきからあなた、口を開いては怒鳴っているじゃありませんか。大体、“何べん言わすねん”って、今さっき一回言っただけじゃないですか。」
「いやぁ、すまんなきーやん。なんでも勢いに任せてしまうのが、関西人の悪い癖でなぁ。」
角が生えた頭をポリポリ掻きながら弁解する“さっちゃん”。
「・・・関西人もなにも、あなた魔族でしょうが。」
半ばあきれながらも一応、やんわりと突っ込む“きーやん”。
「硬いこというなやきーやん。そんな調子やとあと何億年か先、はげるで。かっこわるいでぇ、神界の最高指導者が波平カットやったら。」
「うぐっっ。」
「それでなくても前髪かき上げたら結構後退してんのに。」
「悪質なデマを流さないでください!!!」
「・・・あの〜〜〜。」
二人が息の合った漫才を繰り広げている中、一人取り残された横島がおずおずと声を掛けた。
「ん?あぁ、すまんの。えっと・・・どこまで話したっけな・・・あぁそうや!ここがあんさんの深層意識の中ゆうとこまでやな。まぁ、簡単に言ってしもたら夢の中やな、あんさんの意識はいまここにおって起きてるが、身体はねむっとる。そのことについては分かるか?」
「あぁ。前にナイトメアっていう悪魔と戦ったことがあるから。んで・・・あんた達は誰っすか?今ちらっと神界最高指導者とかなんとか。」
「あぁ、そのことについては気にせんでええ。ワイらのことは、ワイがあっくんでこっちがきーやん。それだけ覚えとったらええねん。」
「はぁ、」
「でや、やっと本題に入れるわ。あんさん、なんか、ほしいもんないか?」
「・・・はぁ?それはどういう意味っすか?」
「そのままの意味です。あなたが望むことはなんですか?」
と、きーやん。
「俺が望むもの・・・俺が・・・。」
沈黙のなか、じっと横島を見守る二人。そして、横島が出した答えは。
「美人で裸のねーちゃん。」
「「・・・は?」」
おもわずハモる二人。
「だから、美人で裸のねーちゃんっすよ。ソファーな寝そびり、セクシーポーズをとりながら『おいでタダオ』とか言って!んで、おれはそのひとの後頭部に手を当てながら『今夜は寝かせないぜ』とか言いながらかっこよくキスとか決めちゃってぇ!!!・・・」
途中から勝手にスイッチが入った横島。こうなってはもう止まらない・・・もうすでにそのスピードについていけてない二人を尻目に、マシンガントークをぶっ放し続ける横島。
「・・・・・って言うねーちゃんがほしいです。」
ひとしきり妄想し終え、落ち着きを取り戻した横島。
「・・・・はぁ、さよか、んじゃ、ま、せいぜいがんばってくれや。かえろか。きーやん。」
「じゃないでしょ!!!もう、分かっているくせにそういうこと言わないでください!」
言うだけ言わしといて、くれないのかよ!!!とか突っ込んでいる横島を無視し、なおも二人の会話は続く。
「わかってるって、ほんの愛嬌やん。」
「わかっててやってるのが一番たちが悪いんです!横島さん。それがあなたの本当の望みですか?」
今まで無視されて、急にはなしを振られ、驚く横島。
「え!?」
「よく考えてください。あなたの望むこと求めることはそんなことではないはずです。」
「え?っつうかおれが何を望もうがあなたたちには関係ないじゃないっすか。」
「それが、あんねや。」
と、きーやん。
「あんさんがなにを思い、どんな行動をするのか、それがこの世界に大きく関わってくんのや。」
「え、なんで?」
突然、初対面の人間(?)にそんなことを言われ、戸惑う横島。少し混乱しているようにも見える。
「それ以上は言えません。宇宙意思に反する可能性がありますから。今こうやってあなたに会いに来たことでさえ、のちにどんな影響がでるか・・・」
「はぁ、でもそれじゃあ・・・」
「わかっています。しかし、今はこうするしかないのです。今、神 魔 人の三界のバランスは非常に不安定です。そして、この状況を打破する動きがまもなく起こり、あなたはその渦の中心に引き寄せられるでしょう。自分の意思とは関係なく。」
「え、なんで?そんなこと・・・」
「『・・・わかるのか。』ってか?わいらにはわかるんや、あんさんたちよりも、ずっと高い視点と広い視野を持ってるもんでな。」
「え、・・・んじゃあ何とかしてくださいよ!!!嫌ッスよ俺。」
「そういうわけにはいかんのや、わいらにはめんどくさいんやけども、デタントっちゅう制約があるからな、それに縛られている限り、自由に動かれへんねやわ。それに、わいらは止めれたとしても止めへんよ。むしろねがっとる。あんさんが巻き込まれんのを。」
「っっっつ!!?」
突然の事の連続で、もはや横島の脳はパンクしかけだった。そのパンクしかけの脳を無理やり使い、なんとか言葉と言葉をつなげ、身体の外にだそうと試みる。が、うまくいかない。
「許してください。しかし、われわれにはそうするしかないのです。」
「・・・どうして俺なんすか?」
喉の奥からめいいっぱいしぼりだし、ようやくそれだけ言えたようだ。
「あんさんならできると信じとるからや、アシュタロスを倒したあんたなら。」
「・・・」
「それに、ワイらも鬼や無い、宇宙の意思をかいくぐり、ここまで来た、助言するために。」
「・・・助言?」
「さっきの質問ですよ。」
「あれがどう関係してくるんすか?」
「今は具体的なことは言えません。しかし、覚えておいてください。それが、あなたを、あなた自身を救うことになります。」
言い終わったあと、二人も周りをまたまばゆい光が覆い始めた。
「あんさんがはあんさんが望むことをしたらええ、そうしたら・・・」
光がより一層強くなり、もう目を開くことさえできなくなった。
「え?っつちょっと!?」
目をつぶり、なおも瞼の上からも差し込む光からめを守るため手を顔の前でかざしながら横島が問う、しかしその答えが返ってくることは無かった。

めを開けると、光は消え、二人の姿もなかった。
「なんなんだ一体?」
「・・・俺が望むこと・・・・・・・・」


午前六時 
横島はうるさく鳴り響く目覚ましを煩わしそうに手探りで止め、ぐうっと布団の中で背伸びをし、のそのそと起き上がった。そして、昨晩あんなことがあったのに、何事もなかったように学校へ行く支度をし始めた。

夢のことは忘れていた。
「あの事件」より数ヶ月たった春から夏に変わろうとしていた頃、静かに、そしてゆっくりと、何か始まろうとしていた。


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はじめまして。Dです。僕はいま高校生で、GS美神にはまったのはつい最近ですが、作品を思う気持ちは十分にある。と勝手ながら思っております。もし見苦しい点や意見がございましたら、どんな些細なことでも結構です。ご意見をいただけたら幸いです。
 


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