椎名作品二次創作小説投稿広場

GS冥子？

グレート・マザー

　「では、これより！　悪霊との戦闘訓練を学んでもらう！！」
　「先日調伏した式神を使って！」
　「「生き残ってくれ！！」」
　「生き残るって！！　俺になにやらす気なんだ〜〜〜っ！！」
　霊力に目覚めて数日。俺はついに悪霊との戦闘訓練を行うことになったのだ。
　「これより我々は、コイツを使って練習用の式神を作り出す！」
　「貴様はヤタを操ってそれらを落としていってくれ！」
　「だんだんと数が増えていくから急がないと大変なことになるぞ！」
懐から式神ケント紙を取り出して鳥の形に切り抜いていく。
　「用意はいいか！！　行け！！」
　ポイと空中に投げ出された紙は、霊力をまとってカラスほどの大きさまで変わる。
　「くそっ！！　もうやけじゃ――ッ！！　ヤタ！！　あいつを叩き落せ！！」
　ギュゥウウウウウウウウウウウウ
　横島の影から飛び出した式神は、上空を旋回する式神目指して一直線に飛び掛っていく！！
　「何だ！？　早い！！」
　急速に上昇してくるヤタの動きを軽くいなして、今度は地上へ向けて一気に落下してくる。
　「ぃいい！？　こっちに向かってくるぞ！！」
　「式神使いの弱点は式神と術者が離れた瞬間にある！」
　「あまり式神を離すと自分の見が危険になるぞ！」
　言い終わるまでもなく式神は横島に向かって勢いよくダイブしてくる！！
　
　ドッゴォオオオオオ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン
　
　砂埃が舞い上がり視界がふさがれる――――――埃が晴れた底には直径一メートルの穴があいておりその数センチ後ろにし腰を抜かした横島が座り込んでいた。
　「・・・・・ぉ・・おい！　これって当たったらまじやばくないか！？」
　「早く立たないと次が来るぞ！！」
　「本当に死にそうになったら助けてやるから安心したまえ！！」
　「「だから、それまで死ぬなよ！！」」
　そう言ってさらに何体もの式神が空中に投げ出される。
　「チョ、チョッと待ってッ！！ドォゴォオオオ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ン！！！」
　躊躇する横島だが、式神は次々に横島めがけて襲いかかってくる。
　「くっ！？　ヤタッ！　はっ、早くコイツらを何とかしてくれ〜〜〜っ！！」
　空中旋廻して横島を追いかける式神たちの背後に回りこむ！
　ぎゅううう―――――っ！！！
　横島に集中していた式神の一体にヤタの嘴が迫る。
　シュボッ！！！
　ヤタの一撃は式神の翼を引き裂き地面へとたたき伏せる。その衝撃で式神は、霊力を失ってもとのケント紙へと戻っていく。
　「よし！！　よくやった！！」
　振り返ると今まで横島を追いかけていた式神たちは、ヤタを敵と認識したのか急速旋廻し攻撃を開始した。
　ぎゅぅう〜〜〜〜〜
　空中で体制を整えた式神たちは左右に分かれてヤタを波状攻撃する。その攻撃の隙を突いて一体ずつ式神をけり落としていくヤタ。だが、式神を一体落とすと同時にその隙を突いて残りの式神がいっせいに向かってくる。
　ギュッ！？
　「いてぇ―――ッ！？」
　「気をつけたまえ。式神の使役中そのダメージは術者に返ってくる！」
　「こめる霊力が大きいほど鋭く動けるが、ダメージもまたダイレクトになるぞ！」
　「なにぃい〜〜〜！！　それを早く言えってッ！！」
　素人の域を出てはいないが、横島は徐々にではあるが式神をコントロールしつつある。
　「月光、彼は」
　「ああ。彼は徐々に式神の使い方を見出している」
　距離が長い場合は、冥子のように複数の式神を使わない限り自分が無防備になってしまう。かといって自分が近づきすぎては術者を気遣って式神は、本来の力を十分に引き出せない。多数の敵に囲まれた場合においてもこの修業で式神との間合いを覚えておくことは大切なことなのだ。
　「彼には式神使いとしての才能があるようだ」
　「この年まで戦闘の訓練を受けていないというのに。彼は一体」
　大量に取り巻く式神の攻撃をかわしながらヤタを操り一体ずつ確実にしとめていく。
　（なんだろう？　さっきは驚いたけどよく見ればコイツらそれほど強力には思えない・・・）
　その動きは、優雅とは程遠いものだったが、なぜか歴戦を感じさせる動きだった。
　背後から襲い掛かる式神をヤタが察知しそれを知らせてくる。横島はヤタの思念を読み取ってそれらをわずかな動作でかわしていく。
　三つの目が周囲全体の死角をなくして、近づいてくる式神をヤタが蹴り落とす。
　「ぎゃあう〜〜〜〜〜っ！！！？」
　まだ全てを避けきれているわけではないが・・・・・・・



　「今日の特訓はココまでとする」
　「明日また同じ時間に待つ」
　「「では！！」」
　日光、月光はそう言って修行場を後にした。
　「・・・・・・死にそ・・う―――――――――――――」
　
　その後３０分くらいそのままだったが、様子を見にきた冥子さんにショウトラでヒーリングしてもらって何とか家にたどり着くことが出来た。



　学校が終わってから六道の修行場で式神の特訓をする。そんな日々がしばらく続いた。修業は、はっきり言って厳しいし何度止めようかと思ったが・・・・・・
　「横島ク〜〜ン〜〜〜、がんばってる〜〜〜」
　「バッチしですよ！　冥子さ〜〜ん！！」
　修業の合間に冥子さんが毎日尋ねてきてくれるので止めるわけにはいかない！！
　「いや〜〜、毎日すみませんねぇ〜〜」
　そういって手にしたティーカップに入れられた紅茶を口に運ぶ。
　「せっかく〜〜ウチまできてくれるのに〜〜〜お茶くらいお出ししないと〜〜〜」
　笑顔でそういいながら家で焼いてきてくれたであろうクッキーを進めてくれる。
　「これうまいっすねぇ〜〜」
　ボリボリクッキーをかじりながら笑顔の冥子さんに向けていう。
　「冥子も〜〜〜久しぶりに作ったから〜〜〜上手くできた心配だったんだけどちゃんと焼けてたみたいで良かったの〜〜〜」
　女の人の手料理を食うのなんて何年ぶりだろう？　思えば生まれてこれまでこんな美人の人に相手にされたことが会っただろうか？　いや！！　無い！！　だが、やっと俺のことを理解してくれる人ができたんや〜〜〜！！
　「冥子さ――――ああああああああああああああああああああああ！！」
　シャァアア―――――――――――――――――――――――――♪
　飛びつこうとした瞬間、蛇の姿をした式神（サンチラ）が影から飛び出して体に巻きついてくる。
　「本当に〜〜みんな〜〜横島クンのことすきなのね〜〜〜〜」
　（・・・冥子さん・・・俺は本当にコイツラに好かれてるんですか？）
　影からサンチラに続いて他の式神も出てきて雰囲気一変騒がしくなった。


　「そういえば横島クンは〜〜〜、もうすぐGSの試験なんだけど〜〜どうするの〜〜〜？」
　GS資格試験。これに合格することが今の第一の目標なのだが、実際俺は霊能力に目覚めて日が浅い、受かるだけの実力があるかも微妙だ。
　「冥子も試験受けるんだけど〜〜〜一人じゃ不安だから〜〜〜一緒に受けてくれない〜〜〜？」
　GS資格試験がどんなものか知らないが、落ちても来年受け直せばいいのだし受かればめっけものということで受けてみるのも悪くはないだろう。
　「分かりました！　俺もその試験受けさせてもらいます！！」
　「ありがとう〜〜！　横島クンも一緒にがんばろうね〜〜〜♪」
　GS資格絶対にモノにしてやるぜ〜〜〜！！
　
　

　「冥子〜〜貴方ココで何をしているの〜〜！？」
　ビクッ！！
　「おっ！？　お母様・・・・」
　振り返るとそこには鬼のオーラを纏った六道夫人が居た。
　「もうすぐ試験だというのにこんなところで・・・」
　「でッ・・・でも〜〜たまには生き抜きも必要かなぁ〜〜〜って〜〜〜・・・・・・・」
　「そんなことで〜〜！　試験に合格できるとおもっているの〜〜！？」
　「ごめんなさ〜い〜〜〜。ちゃんと修業するから〜〜〜」
　式神全てを引っぺがされてズルズルと引きずられて行った。

　がんばってください冥子さん（涙）

　六道家で修業するようになってしばらくして俺は、あの人の裏の姿を知ってしまったのだ。
　普段のほほんとしているが、あの人にセクハラまがいのことを仕様ものなら世にも恐ろしい目にあうということに・・・・あの人には逆らえません（血涙）
　
　
　
　そして、更なる恐怖はやってきたのだ。
　
　
　
目の前に現われたのは、豪華な服に見を包んだ綺麗な女の人に並んで歩く息子の姿。
　（どういうこと！？　うちの息子に限ってあんなお嬢さんに相手にされるはずがない！？）
　特売日のお肉を買いに出かけた道先で百合子は、自分の息子のありえない姿を目撃することとなった。
百合子の頭に一つの考えが浮かぶ。
（まっ！？　まさか〜〜〜〜っ！）

百合子脳内。
　「忠夫く〜〜ん。いつもありがとうね〜〜こんな高いもの」
　「そんなことないよ、君のためなら俺は」
　「うれし〜〜〜それでね〜〜私〜〜〜欲しいものがあるんだけど〜〜〜」
す〜〜と横島の腕に自分の腕を絡めて猫なで声の女。
　「なっ、何でもいってください！　冥子さんのために今日はいつもより多く持ってきました」
　さりげなく胸を当ててくるその女に鼻の下を伸ばす自分の息子が居た・・・・
　

そして、骨の髄まで搾り取られた跡は・・・・・・
　
　
　「にいちゃん！　借りた金返さんいうんはどういうことやッ！！」
　「天下の地獄組！！　なめたらあかへんで！！！」
　ごついそっち系の人たちに取り囲まれて涙を流す息子が・・・・・
　「すみません。来月には払いますから（涙）」
　「兄貴、未成年に言うてもあかへんで。ここはコイツの両親にはろうてもらをや」
　「そやな、にいちゃん今から家行くから案内してや」
　「すみませんっ（涙）！！　それだけは勘弁してくださいッ（涙）！！」
　　土下座しながら惨めな姿の息子。そして、たまたま通りかけるかつての女・・・・・
　「めっ、冥子さん！！」
　その姿に気がついて声をかけるがその隣の男が、
　「冥子はん、知り合いか？」
　はかま姿の結構美形の男に腕をからめている女。
　「え〜〜〜マーくん、私こんな貧乏なひとしらないの〜〜〜」
　「そらそうやな〜〜こんなヤツと冥子はんがつり合うわけないわ〜〜〜」
　はははははああ―――――――――――――――――――
　それだけ言い残して去っていく二人の前で燃え尽きた息子。
　「それじゃぁ、いこか？」
　屈強な男に引きずられながら去っていく馬鹿で、哀れで、不幸で、惨めな息子の姿が、百合子の頭の中に一瞬で出来上がっていた。


　（・・・・・・まずい！！　何とかしなくては！？）
いくら馬鹿で、間抜けで、アホで、モテないダメな息子でも自分にとっては、かわいい息子に違いはない。

　そう思った百合子の行動は早かった！
　
　「あなた達！　ちょっと待ちなさい！！」
　横島と冥子の前に百合子が仁王立ちで姿をあらわす。
　「おふくろ―――っ！？」
　「横島クンの〜〜〜お母様〜〜〜」
　なぜか鬼のような形相でいきなり目の前に現われた母親は、冥子にむかっていう。
　「あなた！　ウチの息子とどういう関係なの！？」
　浮気した夫に向けるほどの殺気を真正面から浴びて怯えすくむ横島だが、
　「横島クンは〜〜〜私の大事なお友達なの〜〜〜」
　「・・・・・・」
これだけの殺気を前にしてもまったく動じないどころか、のほほんとしている彼女の様子をみて百合子はしばし考える。

　（どう見てもこの子は・・・子供だわ！！　この子は精神の駆け引きとか出来る子じゃないわ）

　「・・・貴方、名前は？」
　「六道冥子です〜〜〜」
　「六道！？　六道ってあの六道財閥の！？　ちょっ！　ちょっと忠夫」
　（あんた一体何をやったんだい！？　よりにもよって六道財閥のお嬢さんに手を出すなんて！　いまのうちに本当のことをはきなさい！！）
　（別に何もしてないって！）
　（嘘をおっしゃい！！　あんたがそんなとこのお嬢さんに相手にされるわけが無いでしょうが！！）
　（これには理由が、理由が――――）


　「なるほどねぇ〜〜、あんたがGSを目指しているとはねぇ〜〜〜」
　そのまま三人は近くにあった喫茶店へと場所を移すことになったのだった。

　「そっ、そうなんだよ！　だから――――」

　百合子はしばらく考え込み重い口を開く。

　「実は直前（前日）まで黙っておこうと思ったんだけど、実は今度ナルニア転勤になるみたいなの」
　「ちょっとまってくれよ！！　俺はそんなところ絶対にいかないぞ！！」
　「そういうと思っていたから黙ってたんだけどねぇ。それに、GSってどんな仕事か知らないけど、中学でそんな結論出さなくても高校出てからでも十分いいだろう？」
　「イヤだ！！　俺のことはもうほっといてくれ！？」
　「横島クン〜〜〜ナルニアに引っ越しちゃうの〜〜〜？」
　「頼む！　俺もうすぐ卒業だしだから好きなようにやらせてくれ！！！」
　ドンッ！！！
　「ガキがきいたふうなこと言うとんのやないで！！　男子一生の仕事やないか！！　半人前のままで勤まると思とんのかッ！？」
　（よっ、横島クンのお母さんって結構かげきなのね〜〜！？）
　「きゅ・・・急に大阪弁はずるいぞっ・・・！！」
　「この時代！　中卒で就職したら再就職はないねんでッ！！！　本気でなりたい仕事やったら待てへん道理あるかっ！！」
　「せやけど母さん・・・！」
　「才能あるていうけどそれがどのくらいのもんかも怪しいもんやなっ！！」
　「でも〜〜〜横島クンは〜〜〜」
キッ！！
　「！？　あの〜〜〜！　あの〜〜〜！」
さっきよりも近距離で威圧を喰らってさすがに言葉に詰まる冥子。
　「なら一度。私が直接六道さんと話をつけましょう！！」
　「おふくろっ・・・！　もしかして冥子さんのお母さんに・・・」

　「冥子ちゃんココはおごらしてもらうわ―――さあ、貴方のお家に行きましょうかっ！！」

　レジに三千円たたきつけて振り返るその姿は、横島が知るはずも無い『村枝の紅ユリ』と呼ばれたかつての姿だった。



六道自宅応接間

　「それで〜〜横島さんはどういったご用件で〜〜」
六道親子と反対側に横島親子。
両者の間には北極点のようなオーラが漂い始めていた。

　「最近うちの馬鹿息子がお世話になっていたようでそのお伺いに」
　「あら〜〜そんなことないわよ〜〜ウチは横島クンなら大歓迎よ〜〜〜」
　相変わらずのほほんとした口調を崩そうとしない相手に、

　「・・・はっきり申し上げましょう。ウチの息子を勝手におだて祭り上げるのは止めてくださらないかしら」

　静かなる口調が一変し力ある言葉として六道婦人に向けられる。

　「私は〜〜、本気ですよ〜〜。彼ならいずれGSのトップに立つ人材になりえると思っていますが〜〜」

　「そして、その優秀な人物が自分の派閥に居ればどれだけ有益なことか」

　「そんな〜〜別に私は〜〜、目の前の才能を見過ごせないだけですよ〜〜」

　（この女、私の息子を客寄せパンダにする気か！？）

　「大体才能があるって言うけど、どれほどのものかもわからないしねぇ〜〜〜？」

　（村枝の紅ユリ。確かに一筋縄ではいかないようで〜〜〜）

二人のオーラの間で、息子（娘）は一言も言葉を発せられずに居た・・・（涙）

　「分かりましたそこまでいわれるのでしたら〜〜〜こうしましょう〜〜〜」
六道婦人は、何かを思いついたらしく俺たちに提案してきた。

　「横島クンに〜〜、六道家に伝わる死の試練を受けてもらってそれに合格できればその才能を認めて日本での修業を許可すると〜〜」

　「そんな危険な試練を私が息子にやらせるとでも！」

　「確かに横島クンはまだまだ未成年ですし〜〜貴方の大事なむすこですものね〜〜、でも私は〜〜、横島クンならあの試練を超えられると思いますし〜〜それだけの力を持っていると信じています〜〜〜」

　「おふくろやらせてくれ！　それを合格できたら俺は日本にのこってもいいよな！」
　「まあ、彼の意思がどれだけ固かろうとも〜〜〜未成年である彼の判断だけで〜〜、そんなことをやらせるわけにはいかないですし〜〜、最後の判断は〜〜、横島さんが決めてください〜〜」
彼女も長い間六道財閥の中枢にかかわってきた人間だ、人を見る目はあるだろう・・・

　「頼む！！　おふくろッ！！」

息子にこんな危険なことをやらしてもいいのだろうか？　

そっと息子の顔を盗み見る・・・・・・

　「・・・・・・分かったわ。もしもその試練に合格できるのなら日本での修業をゆるしましょう」


こうして横島は、六道家に伝わる死の試練に挑戦することとなった。