椎名作品二次創作小説投稿広場


GS六道親子 天国大作戦!

アメリカン・ドリーム? 4


投稿者名:Tりりぃ
投稿日時:06/ 3/ 3





美神美智恵がひのめ片手に美神令子除霊事務所に来た時は既に遅かった。

ビルの近くには大きな花輪と「ご結婚おめでとう美神令子さん!」の垂れ幕。
宅配会社が大きな花の植木鉢を所狭しと廊下に置いていく。
そして、扉を開けるとGS協会幹部達がお祝いの言葉と贈り物、そして金一封を令子に渡している。

「おほほほほー、悪いわね〜」
「いえ、美神さんには良くお世話になりましたから」
「おほほほほほ」

金一封を手にしながら令子は上機嫌だ。理性がどこかに飛んで行っている目が微笑ましい。

「………令子ォーーーーー!!!」






 GS六道親子 天国大作戦! 〜 アメリカン・ドリーム? 4 〜






「や、やぁね〜ママ。騒ぎが収まったらデマだって言うわよ〜」

やっと理性の回復を見せる令子に美智恵はため息をつく

「今から結婚しませんなんて言ってみなさい? 信用はガタ落ちよ?」
「だ、大丈夫よ〜」
「ついでに贈られた物は全て贈り主に返すのよ? 勿論金一封も」
「え?!」
「返す時は2倍返し位しないといけないのよ? わかってる?」
「ゲ?!」

美智恵の(ちょっと大げさな)常識披露に令子の顔色が真っ青になる

「一体どうしてこうなったのよ?」
「金一封がなくなる…なくなる…おまけにコレ以上の出費が…出費が…」
「令子!!」

美智恵の怒声に令子、この世に復帰した。しかし顔色はまったく優れなかった。




「そういうわけ…」

令子から事のあらましを聞いた美智恵が頭痛を堪える仕草で娘を見るが、令子はがっくりとうなだれたままだ。

冥子はともかくおキヌには悪気はなかったのだろう。性質が悪いとも言えるが。

問題はあまりに周りが速やかに行動した点にある。
美智恵の脳裏には幽子がのほほんと笑っている顔が浮かんだ。

<フ、師匠。私は負けませんよ?>

美智恵は脳裏の幽子に決闘状を叩きつける。後は令子を励ますだけだ。

「令子、仕方がないから結婚の事はそのままにしておきなさい? 今の世の中、成田離婚なんて
掃いて捨てる程いるのだから」
「ママ………」

令子は青ざめた顔を上げて美智恵を見つめる。

「アナタが『お金を返す』なんて事できるわけがないものね。もっとポジティブに考えましょう」
「………」
「アメリカに行って成功したら日本に何回も来なさい。そして今は『フリー』である事を言いまくるのよ?
そうね、横島君辺りに言うのがいいわ」
「………」
「ついでに横島君が高校卒業したらアメリカに連れて行ってもいいのだし」
「ママ…!」

じ〜〜んとしている令子に美智恵は心の中で勝利の笑みを浮かべる。
お金を返さなくて良い&横島お持ち帰り案に令子が食いつくのは明らかだ。

「いい? これから言うことをしっかりやるのよ?」
「ありがとうママ!!」

がっしりと抱き合った親娘にもう1人の娘のひのめが幼いながらも引いているのは勿論気付いていない。






さて、令子の結婚騒ぎの翌日、男子高校生3人が足取り重く美神除霊事務所へと向かっていた。

「が、頑張ったけど、どうしようもないんだよな〜 俺たち貧乏だし」
「仕方がありませんよ。美神さんが喜びそうな高価なプレゼントなんて…僕らにはどうしようもありません」
「まったくじゃノ〜」

横島・ピート・タイガー寅吉が制服姿で花輪と花に埋もれた美神所霊事務所を見上げる。
横島の手には小さな袋が握られている。これが彼ら合作の令子への結婚祝いだった。

「……プ、プレゼントは心だよな!? 結果が全てじゃないもんな?!」
「当然ですケン! 心が篭っていないプレゼントは納豆のない納豆巻きですサカイ!!」
「………気に入らなかったらみんなでシバかれるだけですから…」

3人がため息をついて、恐る恐る事務所へと足を踏み入れるのだった。






横島が緊張しまくって令子に渡したプレゼントに令子がにっこり笑って封を切る。
その途端、半歩後ろに下がるピートとタイガー。

「ふ〜ん…考えたわね」

令子は手のひらに転がる結婚祝いに感想を述べた。

横島の文珠(無記入)2つが水色の飾り紐で結ばれ、携帯ストラップになっている。
紐は意外にもタイガー寅吉の手作りでピートが飾り紐に祝福を与えている。

彼らにできる精一杯の祝福だろう。ちなみに原材料費は10円だ。

「ありがとう、たとえ原材料費が10円でも嬉しいわ」
「イヤァァ〜〜?! 既にバレてるぅ〜〜??!」
「し、仕方がなかったんじゃケン!! でも心はこもってこもりまくりじゃケン!!」
「か、神よ…! 貴方は我らを見捨てたもうたのか…?!」

いっせいに顔を青ざめて横に振りまくる3人に令子がちょっと半目になる。
握られた拳にこめられた一撃必殺の霊力が…不意に消え去る。
ドキドキしながら3人が見つめる先の令子の顔が笑顔に彩られる。ただし

「な、なんか、危険度20倍〜〜〜?!」
「ワッシは…ワッシは…ここで終わりジャ〜〜〜?!」
「ああ、お母さんの笑顔が目に浮かぶ…」

3人が言う通り、獰猛な光りを宿した笑顔が眩しい。





「私の勝手で色々とみんなには悪いことをしちゃったわね。気にしないで召し上がれ」
「い、いただきます」

令子が笑顔でお茶をすすめるので恐る恐る茶を手にするピート。他2名は未だに青くなりながら
縮こまっている。

「ところで横島君、いままで随分世話になったから…私からもプレゼントがあるのよ?」
「ハ、ハァ…」

今までの令子像から外れまくった行動を示しまくる令子に横島はいつものセクハラまがいはどこかへ
行っている。横島は美神から渡された封筒から中身を取り出した。

「今までの事、感謝しているの。私はコレくらいしか形に出す方法を知らないんだけど…
受け取ってもらえるかしら?」

「「「………」」」

封筒から出された物は横島名義の通帳と美神除霊事務所であるビルの所有権書類だった。

「人工幽霊一号は霊力の補給を受けないと死んじゃうでしょ? 是非とも横島君に受け取って
欲しいの。事務所として使ってもいいし、居住場所にしてもいいけど」
「あ、あの、そうしたらおキヌちゃんは?」

固まったままの横島を尻目にピートが慌てた様に口を出す。
なにせ同居人が横島だ。引越し1日目で親友が犯罪人になるのはさすがに気が引けるのだろう。

「六道女学院の寄宿舎に移ってもらうわよ。私が氷室さんのところから預かっている責任があるからね」
「美神さん…そこまで…」

ジーンとした3人が令子に尊敬の念を込めて見るが実はコレ、全て美智恵の知恵だったりする。



横島に人工幽霊一号ビルを所有させればアメリカから帰ってきた時に所在地はバッチリ確保されたも同然。
そして、通帳のお金はなんでもない。横島に与えられるハズの給料なのだから。
令子は損を出してはいない。血の涙を流したが。

ちなみにおキヌを六道女学院の寄宿舎に送る案に令子は当初反対したのだ。

「悪いとは思うけど、おキヌちゃんは実家に帰した方がいいじゃない?」
「令子? それは早計よ? おキヌちゃんが近くにいれば横島君の牽制になるじゃない」
「横島クンの牽制?」
「そう、例えば愛子ちゃんとか、小鳩ちゃんとか、夏子ちゃんだっけ? 横島君、もてるわね?」
「ぐ」
「おキヌちゃんは六道女学院の生徒でしょ? それなら、イベント以外で横島君に告白なんて事は
絶対ないわ。イベントの時には私がお邪魔するから」

何気におキヌの危険性も削除している美智恵を見て、少し考えた令子はうなずいたのだった。



横島が半分夢心地でサインをしている頃、六道幽子はにこにこしながら書類を見ていた。
おキヌの寄宿舎の居住書類だ。

「……実家に帰すと思ったんだけど〜 美智恵さん、やるわね〜」
「お、お母様〜 目が怖い〜〜〜」

同じ部屋にたまたまいた冥子も泣き出す怖さだった。


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