椎名作品二次創作小説投稿広場


速き者達

学校での危険


投稿者名:鷹巳
投稿日時:06/ 1/14

キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン、キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン。


平日の朝、学校ではいつも通りに鐘の音が響き渡る。教室ではこれまたいつも通りに登校してきた生徒達が青春をエンジョイしている光景がうかがえる。
ガラガラ、と担任が扉を開ける音。それに続いてすぐさま出席を確認する担任教師。次々と名前が挙げられ、呼ぶ名前の数も終盤に差し掛かったその時・・・・・


ダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッ!!


廊下を勢いよく誰かが走ってくる足音が、ハッキリと聞こえてくる。
その瞬間、教室中の生徒がその人物が誰なのか予想を立てた。もっとも、全員一致で一人の男の名前がすぐさま頭の中に浮かんできた。扉が勢いよく開き、予想通りの男が入ってきた。


「どもー、不肖横島忠夫!ただいま登校いたしました!!」
「おい横島・・・久しぶりに学校に来たと思ったら遅刻とはいい身分になったな(怒)」


教室に入った横島が一番に見たものは、持っている出席簿を握りつぶすかのような気を発している担任の姿だった。
そんな担任にいつの間にか土下座で謝るり、なんとか機嫌を取ろうと懸命に努力の限りを尽くす横島。しかし、そんな彼の姿を周りは呆れた眼差しで見下ろしていたのはお約束。


「・・・・・・もういい、早く席に着け!」
「はい!ありがたき幸せ!」


なんとか許しをいただいた横島は、瞳キラキラと輝かせながら席へと向かった。何しろここで担任の機嫌を損ねれば停学はほぼ確定的だったからだ。その代わりに、横島に向けられる周りの視線はさっきよりも居心地の悪いモノになっていたのだが。


「フフフフフ、横島クン相変わらず青春してるわね」


席に着いた横島の隣から話しかける声が聞こえる。声の正体は、この学校に住み憑いている、机妖怪の愛子だった。


「何処が青春だ!?それにしょうがないだろ。今朝は色々あったんだから」
「どうせ昨日深夜のやらしい番組でも見てて、朝寝坊して遅れたんでしょ?」
「いや・・・・・深夜番組は当たってるけど・・・・・寝坊はしてない・・・」
「それじゃあ、何で遅刻したの?」
「それは・・・・・・・・・・・・・・・・・・(汗)」


言える訳がない。寝ている間に『GS』である自分が韋駄天に憑かれて、さらにそれが原因で、それとは違う韋駄天と朝からドンパチやっていたなんて、八兵衛から口止めされていなくても少々格好悪くて言えない。
しかもそんな状況にも関わらず、『自分の出席日数を稼ぐためだけ』に電車で二駅はかかる距離を走ってきたとは、さすがの横島でも言いたくなかった。


「どうしたの〜?違う理由があるんだったら早く言ってよ」


しかし愛子は待ってはくれなかった。横島の話す理由よりも、自分自身の説いた『深夜番組説』方が絶対に合っているという思いを感じさせる口調だった。
と、ここで横島にとっての助け舟がやってきた。


「まぁまぁ、愛子さんも其処まで追及しなくてもいいじゃないですか」
「そうじゃよ、横島さんが遅刻する事なんてよくある事じゃし・・・・・・」


御存じ、ピートとタイガーの二人である。
横島、愛子、ピート、タイガーの四人の席は、この学校唯一の除霊委員のメンバーであるということもあり、万が一学校に悪霊などの霊障に見舞われることがあっても迅速な対応ができるよう普段から席なども近くしているのだ。
なにわともあれ二人が愛子を止めてくれた御蔭で、横島の口から安堵のため息が洩れた。


「何今のため息!?やっぱりHな番組見てたんでしょ!?それともビデオ?本?正直に言いなさい!」
「い、いや違う!!このため息はそういう意味じゃなくて・・・・えーと・・・」
「愛子さん、もうその辺にして下さいよ!横島さんも早く納得のいく答えを!」
「ピートさん。もうワシらが何を言っても無駄ジャ・・・」


騒ぐ四人はすっかり忘れている様だが、今の時間は本来ならば丁度朝のホームルームの時間になっている。
無論この後に担任教師からの大目玉を食らった事は書くまでもないだろう。

















「ハァーーーーーーー・・・・・眠い・・・・・普段の倍は眠い・・・」


場面は変わってここは屋上。そこに横島はゴロリと寝転がっているところである。
すると横島の頭の中に八兵衛の声が聞こえてきた。


《どうしたと言うんだ横島クン?こんなに眠そうにして》
「あんたが授業中に寝かせてくれないからでしょうが!!」


あの朝のホームルームでの説教を終えた後の授業・・・基本的に横島は学校の授業は寝て過ごしている。そのため、教科ごとの教師に大声を出されたり、チョークを投げつけられたりする事は珍しくない。だがそんな事をされても、すぐにまた横島は夢の世界へと旅立ってしまう。しかし、今日はそうではなかった。
横島が眠ろうとすると、チョークが飛んでくるよりも先に八兵衛が起こしてくる。
もともと根が真面目な八兵衛に取っては、居眠りなどもってのほか。結局一睡もすることなく四時間授業を受けたのだ。
周りはそんな横島を見て・・・・・


『あなたホントに横島クン?』
『今日は吹雪になるんじゃないか?』
『スゲー・・・・・・・奇跡って本当にあるんだな・・・』
『横島・・・いい病院紹介するぞ』
『な!!シャーペンが折れた!!まさか・・・横島クンが原因で・・・!?』
『横島ーーーー!!正気に戻れーーーー!!』
『こんな事があるなんて・・・・・俺・・・・・今日死ぬかもしれん・・・・・』
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(気絶)』


等などの意見が嫌と言うほど出てきたという。


「あぁぁぁ、しんどい・・・」
《ハァー、横島クン。もう少し緊張感を持つことはできないだろうか?あの時、おキヌどのの言葉を聞いた時の心は何処へいってしまったのだ!?》


横島は仰向けの状態から上半身を起こし始めた。


「別に何処にもいってませんよっ!八兵衛さまがこの事は周りに知れちゃいけないって言うから・・・・・・・・」
《・・・・・・・・・それが理由か?》
「・・・・・・・・・・・・・はい」
《・・・・・そうか・・・・・横島クン、君は嘘が下手な男だな》


その一言を最後にして、八兵衛との会話は終了した。
『嘘が下手』だという事は横島自身が一番よく知っている。だが、それを他人の口から聞くとなると、改めて思い知らされる。
横島は、本質はギャグタイプに分類されるものの、その気になればかなりのシリアスになることのできる男だ。だが、そう易々とできることでもない。
アシュタロス大戦を思い返してみれば分かると思うが、横島が本気でアシュタロスとの戦いを決意したのはルシオラを愛し、三姉妹の秘密を知ったからだ。それまでは、周りに影響されて成り行き上そこに存在していたと言っても過言ではないだろう。
横島には決定的に“覚悟”というモノが足りていない。


「・・・・・皆の前では・・・・・俺はギャグでいきますからね・・・」
《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》


無言の八兵衛に横島は話し掛けた。内容からも、横島の中でまだ覚悟が決まっていないことが分かる。
横島は扉へと向かい、ガチャという音と共に屋上を後にした。

















「どうやらここみたいですね」
「言われんでも解る」


その頃学校の外では、澄んだ声としわがれた声を持つ男二人が、まじまじと校舎を見上げていた。
澄んだ声の持ち主は若い男。外見的特長は薄っすらと輝いている紫色の髪と瞳。服装は多少前を開けた高そうなスーツに身を包んでいる。格好だけで見れば、真っ先に『ホスト』という単語が出てくる。
しわがれた声の持ち主は老人。外見的特長は腰にまで達している白い髪と髭。服装は何処の道場のものとも分からない柔道着。格好だけせ見れば、真っ先に『柔道家』という単語が出てくる。


「学校か・・・ボクにとっては好都合だ!早速ボクは入って彼を・・・横島忠夫を探しますんで、万が一彼が逃げないように結界のほうは宜しくお願いします」
「結界は張っておいてやる。六麻呂の時の様にいかぬ様ワシがその場で見張ってな」
「ありがとうございます」


ホスト風の男が丁寧な口調で頭を下げる。
柔道家風の老人の手にはすでに一枚の札が握られていた。
それを確認すると、ホスト風の男は校門を飛び越えて校庭に降り立ったと思ったら、次の瞬間にはその姿は消えていた。
ホスト風の男の名は・・・・・・・・・・・・・・七也(ナナヤ)
















一方その頃、教室へと戻った横島は八兵衛に言った通りに道化を演じていた。いや・・・半分道化、半分本気といったところかもしれない。
横島はある重大な危機に陥っていた。その危機とは・・・・・


「弁当・・・・・忘れた・・・(涙)」


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