英夫の手に誰かの手が触れる。とても暖かい手だ。
『母さん?』
それは、身内の人間、特有の暖かさだ。そして、頭の中に何かが流れてくる。
『お父さん?もう、いないわ。貴方が小さい頃にとても強い悪霊と戦って死んだの』
優しく、哀しそうに微笑む女性。
『ついに、追い詰めたぞ。さあ、渡して貰おうか?その『悪魔の子』を』
周りを囲む数人のGSらしき男たち。
『本当なの?私が、お父さんを?』
戸惑う少女。
『お母さん?ねえ、返事をしてよ』
既に冷たくなっている女性を抱える少女。傍らには先ほどの数人の男。
『へ、素直に言う事を聞いていれば』
すでに荒野と化した場所に少女は立っていた。
『皆、消えてしまえばいいのに』
『誰か、私を止めて』
英夫には理解できた。
この感情は『絶望』だ。
カーテンからこぼれる朝日で目を覚ます。
「うーん?朝か」
いつの間にか眠っていたらしい。
「さて、朝飯でも」
と、台所に向かう。
「あ、もうすぐできるから、座って待っていて」
台所の方から声がした。
「ん?ああ」
英夫はテーブルの前に座り、TVをつけた。
「やっぱり、朝はパンよりご飯よね?」
「ああ。そうだな」
「やっぱり、好みも似ているわね」
と、英夫はそこで気が付いた。このアパートには英夫しかいないことに。
「え?」
台所を見ると、そこにいたのは蛍だった。
「蛍、さん?」
「あら?違う人に見える?」
まるで、当たり前のように、料理を運んでくる。
「え?何で?」
「私、精神体の時はどうでもなかったんだけど、肉体を持つと、住む所が必要になってね。それで、知り合いの所に泊めてもらおうかと思ったんだけど、生憎といないでしょう?だから、ね」
と、英夫の前に座る。
「あ、昨日、ベッドに入って来なかった?」
「ああ、ごめんね。何しろ寒くてね。ぐっすり眠っているのを起すのもどうかと思って、勝手に入ったんだけど。まあ、同じ父親を持つ、腹違いの姉弟みたいなものだから、気にしないで。
それよりも、さあ、食べて食べて。って何をしているの」
英夫は玄関の扉を開けて、外を見渡す。
「いや、こういう時、昔から美希が来るんだ。もの凄く不機嫌な顔をして」
「へー」
と、意味ありげな笑顔を浮かべる。
「大丈夫よ。あの子は今、忙しいから。さあ、食べて食べて」
「どうかしたんですか?」
突然、美希が不機嫌な顔をする。
「いえ、何か嫌なことが起きている気がしまして」
と、頭を振る。
「まあそれよりも、これ、ですね」
と、石碑を見つめる。
「ねえ、『伊達 望』さんは、知り合いですか?」
「いえ、直接会ったことはありません。と、いうより存在しません。一応、調べて見ましたが、私の家系にはいませんでした。
でも、一人だけ心あたりがあります。
私の両親が言っていました。子供が生まれたら、女の子なら『美希』。そして、男の子なら『望』と名を付けようと」
「そうなの、貴方も『伊達 望』を知っているのね?」
「ああ。昔、美希から聞いたことがある」
二人は向かい合って朝食を食べていた。
「伊達 美希さんは、貴方の恋人さん?」
突然の一言に、思いっきり味噌汁を吹いた。
「な、何を、突然」
「いえ、最初から気になっていたの」
「違うよ」
口を身近にあったタオルで拭く。
「そう。違うんだ。残念ね。
こっちの世界でも、曖昧な関係か」
と、聞こえない声で呟く。
「そんな事よりもだ」
英夫が箸を置く。
「何が目的だ?家にまで来て?」
「あら、迷惑?」
「いや、迷惑ではないが」
困った顔をする。
「大丈夫よ。それに、おいしいでしょう?」
「まあ、好みの味だが」
確かに、英夫の好みの味そのものだ。
「私も好きなのよね、こういう料理」
そして、
「本当は、あなたの修行の手伝いも兼ねてなの。だって、折角のパートナーの魔族を来られなくしてしまったんだから。
さあ、何したいことはある?」
「何か、って言われても。
ああ、そうだ。一つ試したみたいことがあるんだ。俺の中の、二つの【魂の欠片】。あれと会ったことがあるんだけど、確か、神族の人に連れて行ってもらって。封印が解けると、あそこに行けるんだけど、普段は行けないんだよな」
それを聞いて、蛍の顔が輝く。
「OK!貴方の中の精神世界に行きたいのね。任せて」
と、英夫に近付く。
「じゃあ、出発」
英夫に自分の額を当てる。
「え?」
そして、そのまま二人は倒れた。
「じゃあ、蛍は?」
「ええ。確かに私達とは違う未来から来たようですね。早い話が、横島忠夫さんと、氷室おキヌさんの娘です。
今までの話を統合すると、横島忠夫さんが氷室おキヌさんと結ばれた未来では、横島蛍、そして、伊達望という二人が生まれていた。そして、何らかの事件かがあり、伊達望は彼女を黒霊石に封じ、時を越えてこの時代にやって来た。そして、恐らくは、そのまま」
美希が石碑に触れる。その瞬間、眩い光が辺りを覆う。
「え?」
瑞穂が目を開くと、美希の姿が消えていた。
「あれ、ここは?」
辺りは真暗だ。
「貴方の精神世界よ」
横に蛍が立っている。
「ほら、あそこに」
と、指差すと、獣人と黒衣の男が立っている。それぞれが、【神】【魔】の【魂の欠片】だ。
「で、どうしたいの?」
「決まっている。この二人を完全に使いこなしてみせる」
それぞれの前に立つ。
「さあ、やってやる」
「あれ?ここはどこですか?」
先ほどの祠と同じだが、辺りの風景が全く違う。
感じとしては、精神世界であることが解る。ふと、先の方に一人の少年の姿が見えた。
「あの、すみません」
後ろから声をかける。すると、少年は驚いて飛び退いた。
「は、はい。何でしょうか?」
その顔は美希に似ていた。まるで美希が男装をしたような顔だ。
「貴方は、伊達 望さんですね?」
「はい。確かに僕は、伊達 望ですが?貴方は」
気弱な青年、といった第一印象を受ける。
「私は、伊達 美希です。こちらの世界の貴方、と言えば解っていただけますか?」
その言葉に大きく反応する。
「ああ、そうですか」
と、美希に近寄る。そして、その手先が美希に触れた。瞬間、表情が一変する。
「蛍が、蘇ったんですか?そんな、あの封印が解かれるなんて。
そうですか。それで、未来が変わったんですね?」
何故か解らないがオドオドした口調だ。
「はい。おかげで、本来、いえ、どちらが本当の未来か解りませんが、とにかく、横島 蛍と伊達 望の変わりに、横島 英夫と伊達 美希が存在しています」
「そうですか。貴方の言いたい事は想像がつきます」
と、掌に精霊石を浮かべる。
「!!」
その色がやがて白に変わっていく。
「貴方も使えるんでしたっけ?これ?」
「はい、精霊王の力ですね」
美希も同様に、精霊石を白く変える。
「お見事、とはいえ、僕ができることを、できるのは当然ですか。おそらく貴方も使えるでしょう。この、黒霊石を」
精霊石の色が漆黒に変わる。
「これを、使いこなせるようになりたいのでしょう」
「はい」
「止めておいた方がいいですよ」
途端に真剣な表情になる。
「黒霊石は禁断の力です。それこそ、蛍と同等に戦える様にもなれるでしょう。いえ、それ以上の力を手にする事も可能です。黒霊石とは術者の生命力を糧として、精霊石を触媒にし、術者の霊力を極大に上げる力です。その過程で、術者の生命力を吸収した精霊石が黒く輝く事から、黒霊石と名づけられた。
よろしいのですか?これを身に付けにいらしたようですが」
口調は相変わらずオドオドしているが、雰囲気は凛としている。
「もちろんです」
美希は決意を込める。
「この!」
精神世界では、英夫が二つの【魂の欠片】と死闘を演じていた。
『君の【人】の力は【神】【魔】と比べて極端に弱い。それでは、その力を使いこなす事はできない。また、暴走するだけだ』
カインの言葉が頭に響く。
「だったら、こいつらを超えればいいんだろう?」
これ以上に戦いに巻き込まれるのは好まない。いや、もしかしたらこの力を完全に使いこなせるようになれば、さらなる戦いの渦に巻き込まれるかもしれない。だが、今は、
「とりあえずは、今できる事をやるだけだ」
そして、一週間が経過した。
「へへへ………」
横で見ていた蛍も驚きを隠せない。たった一週間で、英夫はそれぞれの【魂の欠片】の霊力に追いついたのだ。
「なるほど。さすがね」
英夫の前から、二つの【魂の欠片】が消えていった。
「これで、俺は」
何故か、哀しい顔だ。
「解るわ。貴方の気持ち」
蛍が近付く。
「貴方の力は規格外過ぎるのよ。私と同じくね。
さて、貴方はどうなるのかしらね?私との戦いに勝てば、次は誰が貴方を狙うのか?いや、誰かに利用されるのか」
そして、
「じゃあ、こうしましょうか。貴方が私に勝てたら、封印してあげるわ。貴方の力を、永遠に」
「え?」
「おそらく、両親がかけた封印は意味をなさないわ。何しろ、貴方がそれらを吸収したんだから。
どう?私が封印してあげるわ。これなら、やる気も出るでしょう?貴方の人生における、ラストバトルにしてあげるんだから」
そして、周りの空間がゆがみ出す。
「そうだ。一つ面白い物を見せてあげるね」
『あれ?ここは?』
英夫は違った場所に立っていた。
『どこだ?』
周りは瓦礫の山。まるで、何もかもが破壊されたかのように。
その、瓦礫の一つに蛍は立っていた。
『あ、蛍さん』
しかし、こちらに気がつかない。
『ちょっと』
と、蛍に触れるが通り抜けてしまう。
『え?』
自分の手を見る。すると、ゆっくりと蛍がこちらに振り向いた。その目は、あまりにも冷たく、光が宿っていなかった。
「また、来たの?」
数人の人間が辺りを囲んでいた。
「うるさい!」
「仲間の敵だ!」
「お前だけは、許さん」
口々に叫び、手に武器を持つ。全員がGSやオカルトGメンの人間だ。
「ここで、終わりにしてやる。タナトス」
「タナトスか。死を司るギリシア神話の神。いいわね。私にはピッタリの名前よ」
後ろからGSが霊剣で斬りかかる。それを蛍は右手で受け止めた。
「消えなさい」
そう呟くだけで、GSは塵と化した。
「無駄よ」
ゆっくりと他のGSに近付く。その姿に英夫は見覚えがあった。そう、まるで、
『暴走時の俺だ』
次の瞬間には全員が倒れていた。
「今度は、あっち?」
上空を見上げる。何人かの神族が空中から舞い降りてきた。
「邪魔よ」
そう言って、右手を軽く振る。その瞬間、全員が消滅していた。
「………。全て、消えてなくなればいいのに」
蛍を中心とした衝撃波が辺りを襲う。周りの瓦礫が全て消し飛んだ。
「待て!」
その時、後方で声がした。蛍がゆっくりとそちらを見る。一人の少年が立っていた。
「望」
蛍の口がその名を呼ぶ。途端に、普通の少女の表情に戻る。
「もう、止めてくれ。蛍」
少年の声は震えていた。
「無理よ。望。私は、もう、貴方の知っている横島 蛍ではないわ」
先ほどまでの雰囲気とは変わり、人間らしさが戻る。
「望。私は貴方だけは殺したくないの。このまま私の前から姿を消して」
哀しい顔で話しかける。
「蛍」
望も同様の顔をしている。
「何で、こんな事になったんだろうね」
しかし、望はそこを離れようとしない。
「蛍。僕が、君を止めるよ」
その手に、精霊石を握る。
「無理よ。神、魔族が束になっても私の足元にも及ばない。ただの人間である貴方では」
「そうだね。普通に戦ったらね」
手の精霊石が青から白、
「精霊王?そう。その力を使いこなせるようになったの。
昔からの夢だったわね。『最強のGSになる』。でも、この世界じゃあ、何の意味も無いわ」
しかし、それだけではなかった。精霊石は、白から黒に変わる。
「まさか、黒霊石?望、止めなさい!その力は」
「いいんだ。君がいなくなった世界では、僕は生きていくことができない」
そして、霊力が一気に上昇する。
「蛍、楽しかったよ。君と暮らした日々は」
「ええ、私も」
そして、二人は激突した。
英夫は再び目を覚ます。今度こそ、自分のアパートだ。
「どうだった?私の世界」
蛍が横に座っていた。
「貴方も、一度その力の使い方を間違えば、ああなるわ」
英夫は立ち上がり、尋ねる。
「前に話していた、蛍さんを封印した人って?」
「ええ、そうよ。あの人。『伊達 望』。私の世界の、『伊達 美希』さん。私を封印したのが望であるように、貴方の封印を託されたのが美希さん。面白い偶然ね」
そして、
「明日、迎えに来るわ」
姿が消えていった。
「しかし、今の事情はよく解りませんが」
座って休憩している美希に望が声をかける。
「貴方もがんばりますね。黒霊石の技術を一週間で身に付けるとは」
美希の手には黒い石がある。
「何が、貴方をここまでさせるんですか?」
「それは、貴方と同じです。
最愛の人 蛍。外の石碑に彫ってありましたね」
「そうですか」
徐々に姿が薄れていく。
「彼女に会ったら伝えてください。
永遠に貴方を想い続ける、と」
「ごめん、蛍」
「いいのよ。望」
蛍がゆっくりと崩れ落ちる。
その結果は、望むが蛍の力を超えたことを示していた。そう、望が自らの命と引き換えにした力が。
「私は、最後の死に場所をずっと探していた。
それを、望が作ってくれたんだから」
その笑顔は、哀しくも美しい。
「ありがとう、好きだったわ、望」
その瞳が閉じられた。
「く!」
望の目から、涙が溢れ出した。同時に自分の死期が近い事も悟る。
「よし、よくやった!!」
「さあ、その死体をこっちに」
いつの間にか、周りに人だかりができていた。種族もバラバラだが、目的は蛍だろう。
「大丈夫だよ」
その亡骸を抱える。最後の力を振り絞る。
「もう、何も気にしなくていいから」
二人の周りを精霊石が回りだす。
「もう誰も君を苦しめたりしないから。
行こう。誰も知らない世界へ」
二人の姿は消えた。
『あれ、ここは?』
確か、眠りに就いたはずだが、何処か知らない場所に立っていた。だが、周りの建物は全て崩れ去っていた。まるで、蛍がいた世界のようだ。
「おい、止まれ!!」
後方で、声がした。振り向くと数人の男が立っていた。
「え?貴方達は?」
「ここをお前の墓標にしてやるよ」
突然襲い掛かってきた。
「わあ!」
英夫が反射的に手を出すと、そこから巨大な霊波が飛び出し、男を消滅させた。
「え?」
「くそ!やはり、レベルが違いすぎるか?」
残った周りの男たちは全員が怯えた目つきをしている。やがて、蜘蛛の子を散らすように去っていった。
「何だ?何が、どうなって?」
すると、突然、何者かが後方からか襲ってきた。
「え?誰?」
答えずに槍の攻撃を繰り返してくる。不思議と顔は見えない。
「何だよ、いきなり?」
戸惑っていると。
『どうした?』
冷たい声が頭の中で響く。
『何をためらっている?』
『そうだ』
地響きのような低い声も聞こえた。
『お前は、力を手に入れたのだぞ。それを使わないでどうする?』
『そのために使いこなしたかったのだろう?我々を?』
目の前に【魂の欠片】、黒衣の男と獣人が現れる。
『どうした、何を恐れる?』
『我らの力、使いこなして見せよ』
『ダメ!』
頭の中に女性の姿が一瞬浮かぶ。だが、すぐに消えうせる。
「よし、使って見せる」
体の底から力が湧き出てくる。
目の前の敵を見つめる。
『止めなさい』
また、女性の声が響くが、無視して敵に斬りかかる。一撃で勝負は決まった。
「ははは、凄い。これが、俺の力」
改めて自分の両手を見る。自分自身でも信じられない力だ。
『使ってしまったのね?』
先ほどまでの声が、また響く。
「え?」
声がした方向を見ると、魔族・ルシオラが立っていた。
「ルシオラさん?」
「お久しぶりね」
ルシオラは哀しい顔をしている。
「蛍。あの子の影響かしらね。こうして、また貴方と会えた。
でもね、あまり喜ばしい事でもないのね」
と、辺りを見渡す。
「ここが、何処か解る?」
「え?蛍さんがいた世界じゃあ?」
「ここはね、貴方の世界の未来。力に飲み込まれた貴方が破壊した世界」
辺りからは生物の気配が消え失せている。
「暴走した貴方の霊力は、蛍とは比べ物にならない。世界が消し飛ぶのも頷けるわよね?でもね、貴方の力、一歩間違えると、こうよ?」
「でも、俺は力を使いこなせるように」
「【魂の欠片】に言われるがままに解放したのに?」
「あ!」
先ほどのことが思い出される。
「貴方は100 %の力を使いこなせるだけの器を身につけたに過ぎない。むしろ、以前より危険な状況よ」
そして、
「貴方が倒した敵、よくその顔を見ておくのね。それが現実にならない事を願っておくわ」
そう言い消えていった。
「敵って?」
近付きその顔を見る。そこには
「み、美希?」
冷たくなった美希の顔があった。
英夫は飛び起きた。全身に冷たい汗が噴きだしている。
「何だ?今の?」
夢のようには思えない。
「まさか、俺が力を使いこなすと?」
望は蛍の亡骸を黒霊石の結晶に封印した。
「もしかしたら、遠い未来で、君は目覚めるかもしれない。でも、大丈夫だよ。蛍なら、あの、誰よりも優しい蛍なら、きっと生きていけるさ」
石碑に文字を刻む。
「僕も疲れたよ。残念だけど、蛍と同じ未来には行けないかな」
黒霊石を使った反動で、体中がもう、手遅れだ。
「僕も、ずっと蛍のことが………」
最後に一つの精霊石を石碑に埋め込む。
「もし、遠い未来。僕と同じ存在が誕生したら、僕のメッセージを蛍に伝えて欲しいな」
自分自身の残留思念を石に込める。
「さよなら、蛍」
「おはよう、英夫クン」
蛍の第一声で目が覚める。
そして、一時間後。
「英夫クン。手を貸して」
「はい」
手を出すと、それを蛍が握る。そして、周りの風景が一変した。砂地で、辺りにはいくつかの小さな山が見える。
「ここは海のど真ん中に位置する無人島よ。ここなら、誰にも迷惑がかからないわ。思う存分力を出せるわ」
剣を出す。
「仕方がないのか?」
「ええ。いい事を教えてあげるわ。貴方が負ければ、この世界は私の世界と同じ、つまり、死の世界と化すわ。理由、そうね。私の力の鍵が【絶望】だからよ」
「え?」
「つまり、貴方が負ければ、私は絶望してしまい、この世界を滅ぼすまで暴走してしまうのよ。どう?そんな事、させられないでしょう?」
剣を構える。
「それとも、貴方のこれからの人生で、貴方自身の暴走が起きないと思う?封印はもう意味をなさないのよ?
できる事はただ一つ。私を倒して、私に力を封印してもらう。OK?」
「なら」
英夫も剣を持つ。
「仕方がないか」
その一瞬後、二人の剣が激突する。その勢いで、辺りの岩が消し飛ぶ。
「いいわね、その調子よ。その調子で」
『私を、倒して』
次回も頑張ってください。 (鷹巳)