椎名作品二次創作小説投稿広場


速き者達

戦闘一時中断


投稿者名:鷹巳
投稿日時:05/12/11

六麻呂と雪之丞は今一人の女に腕をつかまれ、動く事も出来ない。
彼女の名前は三世(ミヨ)・・・韋駄天特九隊のbR。


(・・・動けねぇ・・・・・)


三世によって腕をつかまれている雪之丞の第一の感想はこれだった。
ガッチリとつかまれている雪之丞の腕はさっきからミリ単位ほども動いてはいない。別に三世の力が強い訳ではない、それならば雪之丞の方が断然上だ。ではその理由は・・・


「ん?どうかしました?」


ゾクッ!!


三世が雪之丞に不審を抱き話しかける。途端に雪之丞は体中を包み込むような強烈な寒気に襲われる。
これは殺気。
これは恐怖。
いつでも殺せると、相手が無意識の内に発している狂気のない殺気。だが、逆にこの狂気のなさが怖い。いつ本気になるか分からないのが怖い。
雪之丞は知らず知らずの内に恐怖し、己の力を弱めてしまったのだ。


「ふふっ、可愛い♪」


雪之丞の恐怖する姿を見つめ、率直な自分の感想を述べる三世。だが今の雪之丞にはそんな三世に対して“怒り”という感情を感じることは出来なかった。今あるのはただ“恐怖”のみ。


「うふふふふふふふふふっ♪」


また笑う三世。
彼女の性格は、この清楚な和服に似合わず“目立ちたがり”。
右には自分に対して恐怖する雪之丞。
左には質問に答えない自分に対して激怒する六麻呂。
どんな理由だろうとも自分に視線が集まる事は何よりも嬉しい。その思いがこの女を笑わせたのだ。
笑いの途絶えた空間に漂うのはしばしの沈黙。しかしその沈黙は唐突に破られることになる。


バシッ、バシッ・・・ガシッ!!


「え?」
「な・・・?」
「はぁ?」


順番に三世、雪之丞、六麻呂の順に疑問の声を上げる。
沈黙を破った者は・・・・・・・・

















「どうでしょうお嬢さん僕と一緒にお茶でもでしょう?とても美しいですよ。こんにちは。初めまして横島忠夫と申します。」


横島だった。


「アホかーーーーーーー!!!!」
「ぶっ!!」


文法のメチャクチャになった訳の分からない日本語で口説きに入った横島の顔面に、いつもの調子を取り戻した雪之丞の右パンチが炸裂する。


「だってあの姉ちゃんメチャクチャええ女やってんもん!!男としての性が俺の理性を・・・・・(涙)」
「ハァー・・・まあいい。それはそうと、狂ってた俺の調子を戻してくれたことは感謝してるぜ。さすが俺のライバルだ!」
「・・・え?」
「『・・・え?』って、お前狙ってやったんじゃないのか?」
「バ、バカだなー。当たり前じゃないか。俺を誰だと思ってるんだよ。ハ、ハハハハハ・・・・・(滝汗)」


雪之丞の勘違いは続く。

















(まさか三世と俺の間合いに気づかれる事なくすんなり入ってくるとは・・・文殊使い横島忠夫・・・やっぱ只者じゃねーな)


横島が滝のように汗を流している頃、六麻呂は改めて横島の実力を見定めようとしていた。
横島の力の大まかな源は“煩悩”。先ほどは三世の出現によりほんの少しだけエネルギーが開放されたのだ。(もっと開放すれば即行でルパンダイブしていただろう)
つまり、横島は相手に少しでも欲情すれば気配を消して高速で近づく事など造作もないということだ。しかもそれを無意識の内にやれているのがすごい。
そんな事は知るはずもなく、横島を高く評価する六麻呂。ちょっと悲しい。


「おい三世。俺はまだまだ戦える。ひとまずお前の作ったこのイヤリングをなんとか・・・」
「それじゃあ帰りましょう♪」
「は?」


六麻呂は一瞬何を言われたのか理解できなかったが、後を振り返って見てみると、黒い空間が口を開けて待っていた。
この空間は韋駄天特九隊七人の神力で創りあげたもので、いわばそこが彼らの隠れ家と言う訳だ。


「お、おい・・・まさか・・・」


言い終わる前に、六麻呂は問答無用で穴の中に落とされた。
落とされる途中に「ざけんなー、このクソ女あああああぁぁぁぁぁぁ・・・・・・・(ドップラー効果)」、と言う声が聞こえてきたのは言うまでもない。


「それじゃあ、私もおいとまさせて頂きます」
「待てよ!」


続けて入ろうとした三世を雪之丞が止める。


「なんで今撤退する」
「もともと私はピンチだった六麻呂を一旦連れ戻しに来ただけですもの♪それとも・・・・・・・私と戦いたいですか?」


ゾクッ!!
ゾクッ!!


横島と雪之丞に強烈なプレッシャーが圧し掛かる。
それを見た三世は満足したのか、満面の笑みで穴の中へと消えた。


「・・・おい横島・・・あの女は止めとけ。見た目と違って腹ん中は真っ黒そうだ・・・」
「・・・ああ。忠告サンキューな・・・」


そう言うと二人はその場に腰を下ろした。


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