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GS〜Next Generation Story〜

決闘への道


投稿者名:ja
投稿日時:05/10/13

「あの子が、私と対をなす存在?」
 ノアは遠くから小さな子供を見ていた。
「人間は、ゆっくり成長していく。生まれてまもなく成人する私達とは違う」
 小さな子供はゆっくりと遠ざかっていく。
「今なら、一瞬で消せるけど」
 ノアはそのまま姿を消した。
 それから、暇があればノアは人間界に来ていた。
「結構、大人になったわね?」
 彼は学生服を着ていた。
「隣にいる子。いつも仲良しね」
 彼の隣にはいつも女の子がいた。冷たい目をしている。どこか、ノアに似ている気もしてきた。そして、時々彼の前では少女のような笑みを浮かべる。しかし、彼はまったく気にした様子はない。
「あの子は、もしかしたら」
 その時から、ノアは彼よりも傍らの少女が気になった。
「………。どうやらあの子は彼のことを」
 そうしたおくびは見せようもとしないが、ノアには解った。
「もし、私が運命に逆らう事があれば」
 彼の横の少女、伊達美希を見る。
「彼女は、私のライバル。かしらね」
 その時、ノアは生まれて初めて微笑んだ。

「ノア!?」
 その場にいた全員が驚く。いや、朱雀を除いて。
「ふーん。君があの噂のノアか。驚いたよ。どうやって僕の術を破ったかは知らないけど、どうせ」
 しかし、またも白虎は壁に激突する。
「あなたの特殊能力は『時間停止』のようね」
 ノアがゆっくりと剣を抜く。
「そうだ。なのに何故お前の時間は止まらない」
「さあ?なんででしょう?」
 英夫がノアの横に立つ。
「おい!何のつもりだ?」
「さあね。一つ言えることは手伝ってあげるということ」
「何だと?」
「もう、運命に振り回されるのはやめたわ」
 哀しい目で見る。いや、以前のような冷たい目ではない。
「私は、私のやりたいように生きる事にしたの。そのための第一段よ。まずは敵に塩を送る」
「俺にか」
「違うわ」
 そう言って瑞穂を見る。
「あなたは下がっている事ね」
「私も、まだやれる」
「白虎の『時間停止』の前ではあなたはただの的よ」
「俺は?」
「私には何故あいつの能力が効かないと思う?」
「さあ、わからん」
 英夫は首を横に振る。
「まったく、相変わらずとぼけた性格ね。ヒントをあげるわ」
と、首の所を指差す。
「まさか、それは?」
 英夫も同じ物を着けている。
「時の首飾り?!」
「そういうこと。でも………」
 英夫の首飾りをまじまじと見る。
「あなたも、まだ着けていたのね」
 小声で呟く。
「さあ、行きましょうか」
「なめるなよ!!」
 その時、白虎が起きあがる。と、同時に不思議な感覚に襲われる。横を見ると瑞穂が固まっている。
「どうなってるんだ?」
「時間が止まったのよ。あいつの能力で」
 見るとノアの首飾りが光っている。英夫の物も光っていた。
「へ、能力が効かないとなると、あいつはただの」
 英夫が白虎につっこむ。
「な、何故お前も動けるんだ!!」
「さあな」
 英夫が剣を繰り出す。白虎が何とかかわす。
「甘いわね」
 続いてノアの攻撃が白虎を捕らえる。
「おのれ!!」
 続けざま、英夫の霊気の弾丸が白虎に命中する。
「残念ね。お別れよ」
 ノアの剣が白虎を真っ二つに裂いた。

 瑞穂は一瞬で白虎が絶命したように見えた。
「何をしたの?」
「簡単なことですよ」
 横で朱雀が答える。
「見事なコンビネーションでした」
 拍手を送る。
「あなた、見えていたの。時間が止まっているのに」
「さあ、どうでしょうかね」
 そう言って、端の水晶に近付く。
「そうだ。お前ら動くな」
 白虎の声が響く。半分だけになった体で水晶にしがみついている。
「このまま、こいつの魂を壊してやろうか?」
「く!?」
 英夫達は動けないでいる。しかし、
「白虎」
 朱雀が近寄る。
「朱雀か。見ていろ。今すぐこいつらを!」
「邪魔です」
 左手を翳す。それだけで音もなく白虎は消滅した。そして、
「約束です。美希さんの魂をお返しします」
 水晶が割れ美希の体に生気が戻る。
「ああ、今のなら気にしないで下さい。我ら魔王親衛隊はカイン様のもと正々堂々がモットーですから。卑怯者は、たとえ味方でもね」
 その時、ゆっくりと美希が目を覚ます。
「ここは、どこです?」
 辺りを見渡す。
「ヒデ。瑞穂。ノア!?」
 飛び上がる。
「何故、あなたがここに?」
「敵に塩を送りに。と言えばわかるかしら?」
「………。ヒデにですか?それとも」
「さあ、どうでしょうかね」
 先頭を歩き出す。
「さあ、行きましょう」
 朱雀と並んで歩き出す。
「ヒデ、状況を説明していただけますか?」
「ああ。歩きながらでよければね。一人で歩けるか?」
「当たり前です」
 立ち上り歩き出す。
「それはよかった。ここまでお前を運ぶのは結構苦労したんだぜ」
「???」
「魂抜けているのに、以外と重くて」
 その時、英夫は冷たい物を感じた。
「へー、そうですか?」
「いや、軽くて軽くて。羽毛かと思った」
 美希は先を歩き出した。
「悪霊相手の時より冷たい目だったわね」
 横にいる瑞穂が言う。
「ああ。昔からああだぜ」
 そんな声はよそに。
『はあ。筋トレやめてダイエットでもしよう』
 一人の少女は肩を落として歩いていく。

「状況は解りました」
 美希が英夫を見る。
「と、なると次の相手は?」
「ええ。青龍です」
 朱雀が答える。
「さて、先ほどの続きを教えましょうか」
 先ほどの話。おそらくは、『タナトス』のことだろう。
「タナトス。もちろんそれは偽名です。むしろ、悪霊でもない。でも、完全な肉体を持たない精神体ではあります。
 タナトスはある『石』に封印されていたのです。いつから?誰が?何故?それは解りません。しかし、その『石』は存在していたのです。その『石』の封印を、私は解いた。そう。この世界に一石を投じるために。いや、そういうう風に仕向けたのもタナトスの意思なのかもしれません」
「じゃあ、貴方がタナトスを?」
「いいえ、私がしたのはそこまで。『石』からタナトスを蘇らせたのは、カイン様です。自らの意思なのか、どうかはわかりませんがね。私と同様にタナトスの意思に操られたのか」
 そして、
「さて、第三Rの始まりですね」
 周りには誰もいない。そして、美希が英夫に近付く。
「そうですか。ヒデいいですか。相手には気を付けて下さい。何しろ」
 その時、煙が辺りを覆う。
「へー、そういうことですか」
 朱雀の声が響く。ゆっくりと霧が晴れる。そこには一人の女性、青龍が立っていた。
「どうやら、ここまで辿り着けたようですね」
 ゆっくりと近づき、一定の距離で止まる。
「さて、ここで問題です。あなた方の中に一人偽物がいます」
「何だと」
 英夫が全員の顔を見る。
「馬鹿なことを」
「いいえ、先ほどの霧に催眠効果のあるガスを混入しておきました。一人だけをピンポイントで狙えるタイプの物を」
「何のためにこんな事を?」
 ノアが尋ねる。
「そうですね。一つは私の力を知ってもらうため。私の特技はこの霧。この霧には幻を見せる効果があります。ただの幻とは違い、実物さながらの触感もあります。そして、その偽物は本物の人格、記憶などさまざまなデータが一緒です。さあ、お解りかしら?では英夫さん、誰が偽物か当てて下さい」
「俺が?」
 英夫が一歩前に出て瑞穂達を見る。
「そうそう。ヒントを一つ。そこにいる朱雀は本物です」
「どこがヒントだ?」
 英夫が尋ねる。
「さあ。それはあなた次第です。まあ、質問でもしてみて下さい。レアな質問なら引っかかるかも知れませんよ」
 英夫が瑞穂を見る。
「お前の母親の名前は?」
「星井おキヌよ」
「多分、当たりだ」
「知らないのに質問したの」
 続いてノアを見る。
「えーっと。中世でもらったこの首飾りは?」
「時の首飾り。ドクターカオス作」
 続いて美希を見る。
「よーし。レアな質問行くぞ。偽物なら解らないような」
「ええ、どうぞ」
「中学校の修学旅行はどこに行った?」
「京都です」
「当たりだ」
と、青龍を見る。
「おい、本当に偽物がいるのか?」
「いますよ。偽物を見破る方法はただ一つ。思いっきり殴り飛ばすことです。さあ、やってもらいましょう」
と、英夫を見る。
「ついでに言うと、一人が偽物だと言うことは本物が人質になっているということよ」
 英夫が三人を見る。
「よーし。恨みっこ無しだぜ」
 英夫が剣を持ち飛び上がる。そのままノアに斬りかかる。
「お前が偽物だ!!」
 しかし、その剣をノアが受け止める。
「残念、はずれよ」
 そして、美希が英夫に近づく。そして、手を英夫の体に当てる。
「まさか、美希お前が?」
「いいえ。偽物は、あなたです」
 そのまま霊気を出し、英夫を吹き飛ばす。
「いいことを教えて上げます。ヒデが中学校の修学旅行の場所を覚えてなんかいませんよ」
 英夫の姿は消えた。そして、また霧が辺りを覆う。霧が晴れたとき、また四人になっていた。
「お見事です。なるほど。人間は記憶があっても覚えていないということがありましたね」
と、四人を見渡す。
「第二問。先ほどと同じ。偽物がいます」
「え、何。偽物って」
 英夫が戸惑う。
「ヒデ」
 美希がゆっくりと英夫に近づく。
「一ついいことを教えて上げます。別に私はそんな事で偽物を見破ったのではなく、最初から解っていたんです」
「え?」
「姿、性格、記憶。全てをまねてもあなたはヒデではありません!!」
 一瞬で英夫の姿は消滅した。
「第二問もクリアですか?」
と、青龍を見る。
「なるほど。さすがに私の幻が完璧でも、あなたの目には一目瞭然だったというわけね」
 やがて部屋の片隅に倒れている英夫がいた。
「さあ、第三ステージの景品は彼よ。彼は私を倒さない限り目覚めない。どう?いい景品でしょう?」
「そうね」
 ノアが一歩前に出る。
「面白いわ。私が相手よ」
「いいえ、彼女には借りがあります。私が行きます」
 しかし、
「いえいえ。三人がかりでどうぞ。それでも、私の勝ちは揺らぎません」
 
「彼女はいったい?」
 それはノアが人間亜紀に化けて英夫達に近づいていた頃、一人の少女が現れた。
 星井瑞穂。
 それは彼女の名前であり、ノアのライバルの一人になりえる少女だった。彼女は英夫のパートナーとしてGSをし始めた。
 最初は何も気にならない存在だった。彼の仕事上の相棒ということ以外は。しかし、調べていくうちに奇妙なことが解った。彼女の母親と彼の父親の関係だ。表上は仕事上のパートナーであった。そして、結婚寸前までいった恋人同士でもあった。最終的には、結ばれることはなかったが、相性的には小竜姫以上であった事は間違いない。
「今日の昼飯は瑞穂が届けてくれて助かったよ」
「そう」
「いやー。料理上手いな。しかも、なんだか懐かしい味がした気がする」
「そう」
 素っ気ない返事だが、何となく心情は読めた。彼女も、彼のことを段々と………。
 だが、彼女は霊力において一人だけ置いてけぼりをくらっていた。普通の人間なら仕方が無いことだ。それが今回の件で莫大な霊力を神族小竜姫、いや彼の母親から受け継いだ。彼の父親と相性の良かった女性の娘。そして彼女は彼の母親の神通力を受け継いだ。そう、まるで英夫と見えない縁があるかのように彼女は成長していった。
 
「私が行きます。少し、借りがありますし」
と、倒れている英夫に目をやる。
「このままでは、後でヒデに何を言われるか解りませんからね」
 一瞬で、魔装術に見を包む。そして、精霊石による共鳴作用により蒼い鎧に身を包み。
「な?!」
 その変化にノアが驚く。
『何なの?!この霊力』
「へー、面白い技ね。これほどの霊力を持っているなんて」
 青龍が両手を広げる。
「でも、この霧がある限り、私の勝ちよ」
 霧が広がっていく。
「さあ、私が見破れるかしら」
 青龍の姿が霞んでいく。
「以前は、これの幻覚にやられましたね。でも」
 美希の周りの精霊石がそのスピードを増していく。
「そこです」
 槍を突くと悲鳴が聞こえた。
「な、何で?!」
 槍は青龍の右腕に刺さっていた。
「く!!まぐれは続かないわよ」
「いいえ」
 美希は後ろを振り向いた。
「私はGSです。一度見た技をもう一度くらうほど………」
 槍を突き出す。
「愚かではありません」
 今度は、青龍の腹に刺さっていた。
「ぐ!!」
「お気づきになりませんか?」
と、周りの精霊石を指す。
「あなたの霧は一種の幻覚を見せるガスでしょう。この霧を吸ってしまった者に幻覚を見せる。ですから、私は自分の周りに精霊石で気流を起こして、霧を吸い込まないようにしたんです」
 一歩ずつ青龍に近付く。
「さあ、霧が効かない今、あなたに何ができるのですか?」
「なめるんじゃ、ないわよ!!」
 その手に剣を握る。
「ああ!!」
 斬りかかるが、美希はあっさりとそれをかわす。
「残念ですね」
 余裕の表情だ。
「何を!!」
「どうやらあなたは、普通に戦ってもお強いようですが」
 槍を一閃させる。
「私の方が上のようです」
 剣が飛んでいく。
「あ、ああ!!」
「さあ、次は?」
「く!!」
 突然、青龍は英夫の下に飛んだ。
「残念だったね。こっちには人質がいるんだよ」
 いつの間にか手にした剣を英夫に向ける。
「さあ、形成逆転だねぇ?!」
「青龍」
 朱雀が一歩前に出る。
「心配するな。もうすぐ終わるさ」
と、周りを見渡す。
「どうするの?」
 小声で瑞穂がノアに尋ねる。
「まあ、様子を見ましょう。すでに、勝負はあったようだけど」
「え?」
 ゆっくりと、美希は青龍の方を向く。
「それで?」
「お前は、これが目に入らないのか?」
「もちろん、見えていますよ」
「なら、どうしたらいいかは解るだろう」
「そうですね」
 その時、一つの精霊石が青龍の死角からレーザーを放つ。
「な?!」
 その一瞬を突いて美希が目前に迫る。そして、精霊石が青龍を囲む。
「ま、待て!!」
 青龍は完全に気圧されていた。
「残念ですね」
と、英夫の方を見る。
「人質に取る相手を間違えましたね」
 その声はどこまでも冷たい。
「悪いですけど、私はヒデのように優しくないの」
 精霊石が輝きを増していく。
「見逃しても良かったのですか、あなたはやってはいけないことをしましたね」
 さらに精霊石の輝きが増す。
「さよなら」

「な、何だ?」
 英夫がゆっくりと目を覚ます。
「あれ、俺は何をしてるんだ?」
 辺りを見渡す。
「ヒデ」
 美希が横に立っていた。
「おお。美希か?」
「一つ、質問です。中学生の時に修学旅行はどこに行ったでしょうか?」
「はあ?何を突然」
と、考え込む。
「広島?」
「それは小学生の修学旅行です」
「ああ、スキーだ」
「それは自然学校」
「………」
 英夫は考え込む。
「言った通りでしょう」
と、瑞穂達に言った。


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