椎名作品二次創作小説投稿広場


速き者達

二度目の憑依


投稿者名:鷹巳
投稿日時:05/10/ 9

GS(ゴーストスイーパー)それは霊能を持つ者たちが依頼に応じて、悪霊や妖怪の類、さらに珍しいケースだと魔族さえも相手に戦う事になる命がけの仕事である。しかし、彼らは時として誰であろうとも戦わなくてはならない時がある。
たとえ相手が・・・














神族であろうとも・・・














時刻は午前0時、まだ薄暗く気温も低いこの一日の始まりに、都内の街中を青白い球体がさまよっていた。


『ハァ・・・ハァ・・・や、やはり私では・・・あの七人には・・・かなわぬか・・・』


街中をさまよいながらしゃべる球体。
何の知識も経験も能力もない普通の人々が見ればこれがいったい何なのかなどわからないだろうが、その道の人間が見れば一発でわかるだろう。
これが霊魂だという事に。


『や、やはり彼らの力を・・・借りるか・・・』


そう言った霊魂の目の前にはいまどき珍しいとさえ思える一軒のボロアパートがあった。
霊魂は弱々しく光を発しながらボロアパートの二階へと進み、とある部屋の中へと壁をすり抜け入っていった。
部屋の中は恐ろしいほどに汚れており、所々に脱ぎ散らかした服や食い終わり、そのままにしてあるカップラーメン、さらに押入れからはみ出ているエロ本などなど、まさに散らかり放題といった部屋だった。


『う・・・こ、この部屋は・・・私が以前来たときよりも酷くなっている気が・・・』


あまりの部屋の現状に霊魂も一瞬、自らが味わっていた苦しみを忘れ、ギャグマンガなどでありがちな汗がにじみ出てきた。が、すぐにそんな事を言っている場合でない事にきずき、光を頼りにあたりを見てみると、布団に横たわる一人の少年を見つけた。
少年は下がトランクス、上がシャツ一枚、頭には赤いバンダナと言った格好で寝ていた。
少年の口からは時々寝言で何人かの女の名前が出てくることもあった。


『変わっておらんな・・・この男は・・・』


今思えば目の前にいる少年は、一年前に自分が憑依した時と何も変わっていない。
それがかえって自分の罪悪感をより強いものにしていった。だが今はどうしてもこの少年と、その上司である女の協力が必要だった。


『すまない・・・もう一度君の体に入る・・・許してくれ・・・』


危険な事に巻き込んでしまうと言う事は十分わかっている。しかし、それでもしなければならないと言う事もわかっていた。
霊魂はゆっくりと少年の体に近づいていった。が、次の瞬間・・・


バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチッ


『ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ』


少年の体に触れるほんの少し手前で体が霊魂の侵入を拒んだのだ。
考えてみれば当たり前。自分の中にいきなり違うエネルギー体である霊魂が入ってこようとすれば、拒否するのが当然の反応。
憑依を試みた霊魂にも拒絶されることは想定の範囲内だった。だが、ただ一つ範囲外だったことそれは・・・


『彼は・・・霊能に目覚めているのか?』


霊能力の開花。それが誤算。しかしある意味では、この発見はとても喜ばしい事であるということにきずくのにさほどの時間はかからなかった。そして霊魂はもう一度憑依を試みる。
今の自分の状態ではあと一回が限度、ならば、少年の霊力による拒絶反応をくぐりぬけ、憑依する方法はただ一つ。


『全力で行く!!』


バチバチバチバチバチバチバチバチバチバチッ


部屋全体を包み込む騒音とともに、霊魂は少しずつ少しずつ少年の体へと入っていった。
完全に乗り移ることに成功したが、少し無理をしすぎたために、一瞬だけは目を開けるもすぐに閉じ、そのまま眠りについた。














時刻は午前3時、ボロアパートの一室に住む少年は目覚めた。いや、正確には少年の中に入っている、もう一つの魂が目覚めた。
少年の中にいる霊魂は起きるとすぐに一番近くにおいてあった服(学生服)に着替え、急いでアパートを出て行った。
もしこの場に少年の知り合いがいたのならば、真っ先に以上にきずく、それは足の速さ。
その足の速さは100メートルを9秒台で走る事も可能であろう。
走っている少年の名前は横島忠夫。そして横島に憑いているのは・・・














韋駄天・八兵衛と言った。


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